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48.バスの中で再び

 翌日の朝、玄関に向かうと先に準備を済ませたしーちゃんが笑顔で待っている。今日は普段通りの時間なのでいつものバスに間に合うはずだ。


「あおくん、なんだか眠そうだね。でもいつもこの時間に登校しているのよね?」

「……うん、これがいつも通りだよ。しーちゃん以外は……」

「ふふっ、これから毎日だよ!」


 元気いっぱい嬉しそうに笑うしーちゃんと対照的に俺は昨日の事で頭がいっぱいでなかなか寝付かれずに寝不足気味だ。

 結局何も解決策は出てこないままで朝を迎えていた。しーちゃんにこの後バスで結奈と一緒に行く約束をしていることは伝えていない。結奈にもしーちゃんと一緒に登校しているのは伝えていないし知らないはずだ。


「ん……どうしたの? 相槌ばかりで難しい顔をしているけど」

「あっ、ご、ごめんな。一緒に歩いていて気分を悪くさせて……」


 自宅を出てからしばらく歩いているとしーちゃんが退屈そうな表情に変わっていた。俺は慌てて気持ちを切り替えようとした。


「あおくん、なにか悩みでもあるの? 昨日の夜もちょっと変だったし……」


 しーちゃんは覗き込むように俺の顔色を窺っている。昔から勘のいいしーちゃんだったけど、長い間会っていなくても幼馴染だけあってすぐに分かってしまうのかもしれない。これ以上隠してもダメだとあきらめてしーちゃんに話すことにした。


「き、昨日、結奈と一緒に行く約束をしたんだよ。だから後で合流する事になるから……」

「あっ、なんだ、やっぱり東條さんと一緒に行くんだね。全然、そんな気にならないよ。元々、一緒に登校していたんでしょう?」


 俺がしーちゃんの顔色を窺いながら話していたが、しーちゃんは全く気にする様子もなく笑顔で答えた。しーちゃんの顔を見て胸に支えていたものがスッと消えたような感じになった。


「う、うん。毎日ではないけど頻度は多いかな……」

「ふふっ、じゃあ、今度から三人で一緒に行けばいいよね。でも念の為に東條さんにもちゃんと話をしておかないと」


 しーちゃんが嬉しそうな顔で笑っている。俺もしーちゃんの笑顔を見て楽しく登校出来そうな気がしてきた。

 バス停に着き、定刻通りにバスが来て乗り込む。三人で座るので一番後ろの席に座る事にした。まだこの時間なので座席に余裕がある。窓側にしーちゃんが座って隣に俺が座る。


(あれ? これだと俺は二人に挟まれるよな……)


 今更、しーちゃんに席を代わってくれるように頼むのはおかしい気がする。今日のところは仕方がないと思い、結奈が乗ってくるバス停まで待つ事にした。

 俺達がバスに乗って、三つ目の停留所に到着した。約束通り結奈が乗ってきたが、いつも俺が座っている付近をキョロキョロして探しているみたいだ。


「結奈、こっちだよ!」


 バスの中なので少し控えめ声で呼ぶとすぐに結奈は気が付いてこっち向かってきた。こちらを見た時は座っているしーちゃんの存在に気付いていなかったみたいで、手前の席に来たタイミングで存在に気付いていた。やはり一緒にいる事を予想していなかったみたいだ。


「おはようーー!」

「お、おはようございます」


 しーちゃんが元気良く結奈に挨拶をするのに対して結奈はちょっとびっくりした表情で珍らし光景だった。バスが発車して動き出し、慌てて結奈が隣に座る。予想通りにしーちゃんと結奈に挟まれて座る事になった。

 今は少ないが学校に近づくにつれて男子達の羨望の的になりそうな気がした。しばらくして俺の不安をよそにしーちゃんと結奈が俺を挟んで会話を始めている。


(これなら最初から二人が並んで座ればいいのに……)


 俺はちょっと不貞腐れてムッとしているとしーちゃんが気が付き、今度は俺に声をかける。


「ねぇ、あおくん。なんで東條さんを下の名前で呼んでるの? 他は誰も呼んでないよね」


 しーちゃんからの突然の質問に思わず固まってしまう。隣の結奈は気まずくそうな表情に変わっている。そのうち聞かれると思っていたがこのタイミングでくるとは思っていなかった。できれば結奈がいない時に聞いて欲しかった。


「ん……なんて言うかな、中学の時にお世話になったお返しと言うか、そのお願いというか……」

「う〜ん、よく分からないけどあおくんがいろいろとお世話になっていたからお願いを聞いてあげたんだね」

「あ、あぁ……そういう感じかな」

「ふふっ、あおくんは昔から変わらないね。そうだ、私もゆいちゃんて呼んでいいかな?」


 笑顔のしーちゃんは懐かしむような表情をして俺を見ているが、俺に結奈の呼び方を聞かれても困ってしまう。結奈に視線を送るとちょっとほっとしたような表情を浮かべている。俺の視線に気が付いた結奈はしーちゃんに向かって頷き始めた。


「うん、いいよ。私もしーちゃんって呼んでもいい?」

「もちろんいいよ、えへへ……」


 結奈の問いかけにしーちゃんはすぐ頷くと嬉しそうに笑っていた。俺も二人の様子を見てちょっと心が落ち着いた。

 昨日のお昼休みと今朝の様子からなんとか二人仲良くやっていけそうな気がしてきた。結奈は元委員長だけあって上手いこと人に合わせていけるだろうが、しーちゃんはこう見えて好き嫌いが激しく気が合う合わないがあるのだ。

 とりあえずは一つ目の難問がクリア出来たみたいだ。あとは俺がしーちゃんと一つ屋根の下で生活している事をどのタイミングで結奈に伝えるのかだ。何かいいきっかけがあればいいのだけれど……二人が俺を挟んで再び会話を始めていて、俺は窓の外を眺めて悩んでいた。

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