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41.課題は計画的に

 お盆休みが終わり部活も再開した。

 再開初日は結奈と顔を合わせるのが久しぶりで変に緊張してしまった。あの花火大会以来顔を合わせる機会がなく、メールやメッセージで連絡はしていたが電話で声も聞くことがなかったからだ。

 でも不思議なもので部活が終わった頃にはこれまで通り普通に会話が出来ていた。それからは特に変わったことなく普段通りの日常を送った。

 夏休みの後半も部活は練習と試合でなかなかハードな日が続いて、夏休みも残り一週間となった時、ある事に気が付いた。


(ヤバい……このままだと、夏休みの課題が終わらない、どうしよう……)


 さすがに進学校だけあって課題の量が各教科ハンパないのだ。とてもじゃないが一人で乗り切れる量ではなかった。


(……仕方がない)


 夏休みの始めの頃は怪我で部活を休んでいたが、まだまだ時間はあると余裕をかましていた。今になって後悔をする。もう怒られるのを覚悟で結奈に協力してもらえるように頼むしか解決策がない。

 時間がないので、練習終わりの帰りに話すことにした。そして案の定、結奈に怒られた。


「もう……あれ程言っていたでしょう! 早くやらないとダメだよって……」

「うん、分かっていたけど……部活が終わった後はどうにもやる気が起きなくて、それに休みの日は……気が乗らなくてね」

「はぁ……小学生じゃないのだから……」


 呆れ顔で結奈がじっと見ている。結奈の視線がとても痛いので黙って俯いた。言われる通りで何も反論は出来ない。そのまま黙っていると小さなため息が聞こえてきた。


「次から私が毎日厳しく確認をしよう……今回はもう時間がないから早速、明日から練習の前に学校で残った課題をやるわよ!」

「……ありがとう、助かります……」

「まぁ、なんとなくそんな気がしていたからね、ふふふ……」


 ゆっくりと顔を上げると笑顔を見せた結奈だったが、瞳は笑っていなかった。きっと本気で怒っていたのだろう。こんな風に怒ってくれる人は俺の周りには居ない。


「あっ、そ、そうだ、お詫びという訳でないけど、結奈のお願いをなんでもいいから聞くよ」

「えっ、ほ、本当?」


 ちょっとでも機嫌を治してもらおうと思っていたのだが、結奈の反応が予想外に良かったので驚いてしまった。


「で、でも、む、無茶なお願いは……」


 あまりの反応の良さに少し弱腰になってしまう。俺の様子を見てニコッと笑顔を見せて結奈は首を振る。


「ふふふ、そんな無茶な事は言わないわよ。そうね、どうしようかな……うん、そうだね……」

「な、何かな?」


 気分が爆上がり気味の結奈を見て、『なんでも』と言ったことを後悔する。でも今更取り消せないので諦めた。不安な俺とは正反対に結奈は楽しそうな顔で考え込んでいた。ついさっきまでの怒っていた様子は微塵もない。


「う〜ん、じゃあ、夏休みの最終日に、一緒に水族館に行こうよ!」

「う、うん……えっ!? えぇぇーー」

 キラキラした目で結奈が俺の様子を窺っている。結奈に圧倒されて一瞬、理解が出来なかった。

 まさか夏休み最後の日に出かけようと言ってくるとは思っていなかった。確かに、この夏休みは花火大会以外は一緒に遊びに行ったりしていない。部活の帰りに何度かファーストフード店に寄ったぐらいだった。


「うん、これで決定ね! じゃあ、早速、明日からみっちりやるよ! 三十日には終わらせないといけないからね、ふふっ」


 有無も言わせない感じで、笑顔いっぱいの表情で結奈にしては珍しくかなりの勢いだ。これは間違いなく本気モードだ。本来の目的だった課題は違う意味で不安な気がしてきた。


 最後の週は部活が昼からになるので、午前中は結奈と一緒に勉強する事になった。試験前などに一緒に勉強しているが、今回はそれまでとは一味も二味も違っていた。

 残っている課題に対して期間が短いのもあるが、かなり厳しく結奈が教えてきた。絶対に三十日に終わらせるという意志がはっきりとしている。


「あ、あの……今日はここまでいいかな?」

「ううん、だめだよ! 最初の予定通りのところまでやってね!」

「えぇ……あっ、は、はい、わ、分かりました」

「ふふふ、分かればよろしい」


 予想以上に甘くなく普段なら大丈夫なのだが、一切の妥協はなかった。結奈はいつも通りの優しい笑顔なのだが、目が全然笑っていないので従うしかないのだ。教えてもらっている立場なので文句も言えない、

 今回はこれまでになくスパルタだった。そのおかげで部活の練習は調子が上がらず散々だった。

 でもその甲斐あってなんとか予定通りの三十日に全ての課題を終わらせることが出来た。終了した時は結奈が俺以上に喜んでいた。


「ありがとう、助かったよ」

「ちょっと終わらせるって言ったでしょう、ふふふ」


 あまり見せることがないドヤ顔で結奈は鼻で笑っている。あれだけあった課題がちゃんと終わったのだから、結奈には頭が上がらない。


「明日は駅に十時集合でいいんだな」

「うん、そうだよ。明日は楽しみだね、えへへーー」


 結奈は嬉しさいっぱいで微笑んでいる。今のところ天気は問題なく、部活は休みなので丸一日遊ぶ事が出来るだろう。水族館以外の予定は結奈が『任せて』と言って張り切っていたので、ちゃんと計画を立ててくれるはずだ。


「じゃあ、そろそろ時間になるから練習に行くか」


 時計を見ると部活の時間が迫っていた。この数日は午前中に勉強で昼から部活のハードな一日だった。ちょっと疲れが溜まっているが、結奈の笑顔を見ているとそんな事は言っていられない。


(俺の為に一生懸命手伝ってくれたのだからお礼の意味も込めて明日は結奈を満足させてあげないといけないな)


 部室に向かいながら超ご機嫌な結奈の横顔を見て心の中で決意した。

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