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25.予定外の出場

 先ずは県大会の予選が始まった。この大会は顧問の先生が言っていたとおりにニ、三年生が中心になって試合をやっていく。

 最初の試合は先輩達の動きが緊張のせいなのか動きが悪く途中までリードされていた。相手は決して強い訳ではなく、普通にやれば勝てるレベルだった。途中から俺達一年生が交代しながら試合の流れを変えてなんとか逆転勝ちを収めた。次の試合からも同じように途中から交代で出場しながら順調に勝ち続け県大会進出を決めた。

 翌週には、県大会が始まった。初戦は予選の時と同じように勝利することが出来た。県大会での勝利は久しぶりで先輩達は大喜びだった。

 そして続く二回戦はシード校との対戦になる。


「さすがだな……」


 ベンチで試合の戦況を見つめている。これまでみたいに一人づつの交代ではほとんど状況が変わらずどんどんと点差が開いていく。ベンチも暗いままで声も出せないぐらいの雰囲気になっている。気が付けば三倍近い点差になってハーフタイムを迎えた。


「……ここまで差が付くとはな」


 途中から試合に出ていた永尾が意気消沈した表情で戻ってきた。顔には疲労の色が濃く出ている。あれだけ攻め込まれて防戦一方だからかなり疲れたのだろう。


「やっぱり力の差は大きいか?」

「う〜ん、そうだなぁ……思った程ではないけど、こっちのメンバーがどうしても見劣りするからな」


 俺の質問に厳しい言葉で永尾は答えたが確かに事実だ。先輩達はもう既に息があがって限界に近いみたいで後半が心配になる。

 多分、相手チームは後半からは控えメンバーが中心になるだろう、日頃なかなか試合に出られないメンバーも出てくるに違いない。多少は試合が落ち着くだろう。


「蒼生くん! 先生が呼んでるよ」


 突然、慌てた表情で結奈が呼びに来た。まだハーフタイムは半分以上時間がある。本来なら俺が出場するタイミングは第四クォーターあたりのはずだ。呼びに来た結奈と一緒に先生の所へ向かう。

 先生が三年のキャプテンと話し込んでいたが、俺の姿をみると驚きの発言をする。


「この試合は予定変更だ。宅見、後半の頭から出るぞ、もちろん一年チームでいく!」

「はぁ?」


 宮瀬先生の前に着くといきなりの事で理解出来なくて呆気にとられてしまう。気の抜けた返事をした俺にイラッとしたのか、先生は少し怒ったような剣幕になる。


「これだけ点差をつけられたんだ、さすがにこのまま負けるのは悔しいからな、一泡吹かせようと思ってな」

「……マジですか、もしかしてここから逆転しろとか言うんじゃないでしょうね……」

「ははは、そこまでは言わんよ。でも、それに近いぐらい事は出来るだろう」


 信頼してくれているのは嬉しいがなかなか無理難題を言ってきた。でも試合に出られるのはやはり嬉しいものだ。先生と話している間に結奈が山西と村野と山寺を呼んできていた。先生が同じように三人にも説明をする。結奈もワクワクした顔をしている。


「悪いな……俺達が不甲斐ないばかりでフライングで宅見達を出場させないといけなくなって……」

「そ、そんな事ないですよ。これは先輩達の最後の大会じゃないですか、俺達一年はこれからまだいくらでも大会があるし……」


 先生と話していたキャプテンが俺の所にやってきた。キャプテンが辛そうな顔で頭を下げるので思わず驚いてしまう。先輩達の気持ちを考えると素直に試合へ出られることを喜べない。


「それに、もうニ、三年は体力が限界でほとんど走る事が出来ないからな……これからはお前達のチームになるんだ、頼んだぞ」

「……分かりました。やれるだけやってみましょう……あまり期待し過ぎなでくださいよ」


 疲れ切った顔をしていたが、キャプテンの目は俺達に期待していた。ここまで先輩達や先生に言われたら、中途半端な試合は出来ない。

 時間がなくなってきたので、とりあえずウォーミングアップを始める事にした。山西達も急いで体を動かし始める。

 試合の再開前に宮瀬先生から作戦が伝えられる。「点差が点差なので好きなようにやれ」と言われて俺達一年チーム初めての公式戦がが始まった。


「練習の時と同じようにやれば問題ない!」


 先に試合に出ていた永尾が皆んなに声をかけて鼓舞する。普段の練習は山西からのパスで攻撃が始まる。俺と村野は目で合図を送りいつものオフェンスのポジションに移動する。山西がボールを持って山寺と合図を交わす。

 永尾がフリースローラインあたりにどかっと位置取りをする。山寺からのパスで山西にボールが戻った瞬間に俺と村野が動く。瞬時に狙いを定めて再び山西からパスが出る。

 ゴール下に移動していた俺の手元に吸い込まれるようにボールが来るとあっという間にシュートを決めた。予想通り相手チームが控えメンバーに交代していたのでマークも緩かった。


「言ったとおりだろう!」


 ドヤ顔した永尾が言いながらすぐに相手をマークする。予想外のプレッシャーに相手チームは慌ているみたいだ。


「ナイスカット! こっちだ!」


 村野の声が響いた。山寺が相手のパスをカットすると今度は村野が走り込んでいる。慌てる相手デフェンスをスルッとかわしてシュートを決める。


「おぉ、やるなぁ」


 思わず声が出てしまい、負けじと俺もすぐにデフェンスに入り相手にプレッシャーをかける。試合再開から僅かな時間で連続して得点をあげて、ベンチにいる先輩達から大きな声援が聞こえてきた。

 ここから怒涛の攻撃が始まりオフェンスの時間ばかりになる。ますます先輩達の声が大きくなってきて対照的に相手チームは静まりかえっていた。

 もちろん俺達は負けていて点差はまだまだあるのだが、完全にチームの雰囲気は逆転していた。第四クォーターが始まる頃には、相手チームのメンバーはスタメンだったレギュラーに代わっていた。ここからが本番といった雰囲気になってきた。久しぶりに熱くなってきた感覚になって更に気合いが入ってきた。

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