表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/69

23.いつもと違う登校

 放課後の部活では、結奈の様子はいつもと変わりなく笑顔だった。目が合えばいつもどおり頑張ってと合図を送ってくれたり、練習が終わった後の会話も他の人がいる所では普段と変わりなかった。でも部活の後に一緒に帰ろうとは言ってこなくて、久しぶりに一人で帰宅することになった。

 帰宅した頃に、結奈からメッセージが届いた。


「本当は一緒に帰りたかったけど、二人きりになるのが今日はさすがに恥ずかしかったの……ごめんね。明日は一緒に帰ろう!」


 結奈からのメッセージを読んで、改めて昼休みの事を思い出すと顔が熱くなってくる。結奈も恥ずかしかったと分かってちょっとだけ安心した。でも今の正直な気持ちを伝えられたから良かったと思う。これ以上悶えていても仕方がないので、明日からどうするのか考える事にした。


「……分からない、どうすればいいのか」


 思わず呟いてしまう。少し冷静になって考える。


「……何か変えないといけないのか?」


 声に出してみたがこれまでと何か変わるのか分からない。同じクラスで同じ部活……学校ではほぼ一緒にいる。


「いや、変える必要はないんじゃないか……」


 ベストな答えではないかもしれないがこの答えがベターな気がする。結奈とどう接すればいいのか悩んでもこれ以上解答が出ないだろう。明日からもこれまでと同じ様に付き合っていくことに決めた。ちょっとだけ肩の力が抜けたような感覚になった。

 翌日の朝、本当は朝練がないのでゆっくりと出来るはずだった。


「うわー、寝過ごした!」


 昨日の精神的な疲労のせいなのか、起きようとしていた時間を遥かに過ぎていた。遅刻するレベルではないが余裕はない。

 急いで着替えて朝食はパンを齧る程度で自宅を出た。いつも乗るバスより数本遅いバスに乗る。これに乗ればまず遅刻することはないので一安心だ。

 起きてからずっと慌てていたので、やっと気を抜く事が出来た。いつもと違うルーティンで朝から疲れたのでちょっとだけ目を瞑って一息入れようとした。


「あっ、また寝てしまった……」

「ふふふ、昨日と同じだねぇ、おはようーー目が覚めた?」


 気が付くと隣の席に結奈が座っていて、また寄りかかるようにして寝ていた。でも昨日とは違って今日はそのまま寝たふりをする事にした。


「すぅ……」

「あれ? また寝てしまったの?」


 気が付いたみたいだったが、結奈は体を動かすことなくそのまま支えてくれた。バスの中はほとんどが同じ学校の生徒だ。周りの視線は恥ずかしかったが、慌てる姿を見せる方が悔しかったので結奈の肩で寝る事を選ぶことにした。

 暫くの間、結奈は大人しくしていたが、学校が近づくにつれて周囲の視線が恥ずかしくなってきたのか起こそうとしてきた。


「うぅ……そろそろ起きてよ〜、さすがに恥ずかしいよ!」


 結奈の恥ずかしそうな顔が浮かんでくる。あまりやり過ぎると怒りそうなのでそろそろ起きる事にした。目を開けると想像通り困った顔で赤くなった結奈が見える。


「やっと起きた……もう、わざとでしょう!」

「う〜ん、寝ていたから分からないなぁ、ははは……」


 頬をぷくっと膨らませる結奈を笑って誤魔化した。まもなくして学校に最寄りのバス停に着くと、登校時間で一番多い時間なのでぞろぞろと降りていく。

 普段はこの時間に登校しないので、ちょっと驚いてしまう。


「うわー、こんなに生徒がいるんだな……」

「うん、私もいつもはもう一つ早いバスに乗るからね、さすがに多いねぇ……」


 結奈と一緒に押し流されるように歩き始める。意外と男女で一緒に登校している姿を見かけた。これならあまり目立たないに違いない。

 部活帰りの時間は閑散としているので周りの目が気にならなかった。でもこの状況なら人混みでそこまで恥ずかしくない感じだ。結奈と楽しく話をしながら歩いているとあっという間に一年生の昇降口に着いた。


「ねぇ、蒼生くん。また朝練がない日、一緒に登校してもいいかな?」


 笑顔だった結奈の顔が少し不安そうな表情に変わっていた。断る理由もなく、元々一緒に帰っているのだからすぐに返事をする。


「うん、いいよ」

「よかった……蒼生くん、バスから降りて周りを気にしていたから嫌なのかって……」


 ほっとした顔をする結奈を見て無意識に周りを気にしていたのかと反省をする。昨日自分の言った事が嘘になる。大事な人なのだから一緒にいても気にしなくていいのだ。


「ううん、そんなことないよ。今日は朝から楽しかったし……ちょっと得したから」

「ん……どんなこと?」


 笑顔で答えた俺の顔を不思議そうに結奈が窺っている。不意に見せる首を傾げる結奈の表情はすごく可愛くてきゅんとなる。


「結奈さんにもたれ掛かって寝ていたこと!」

「ふふふ、それぐらい……じゃあ今度は膝枕をしてあげるよ」

「えっ、ほ、ほんとに?」


 からかうつもりだったが結奈の方が一枚上手だった。思わず顔がにやけてしまいそうになると結奈が余裕そうな笑顔をして歩き始める。

 まだまだ結奈をリードする事は出来そうにない気がする。あまり気張らずに今まで通りに結奈と付き合っていけばいいみたいだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ