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18.5 本来の力と私の決意 【結奈の視点】

 いよいよ始まる、蒼生くんの試合を見ることが出来る。もちろん毎日、間近で練習を見ていて時々試合形式の練習もある。でも今日は練習試合といえどちゃんとした試合になる。

 昨日は不安な事もあったけど今日の蒼生くんの表情を見たら大丈夫そうなので楽しみにしていた。ずっと蒼生くんを目で追っていたらもうワクワクが止まらない状態が続いている。


「あの……マネージャー?」

「ふぇ!? あっ、い、猪口君? ど、どうしたの?」

「えっと、もう試合が始まるよ」

「あっ、ご、ごめんさい! うん、大丈夫だよ」


 気が付くともうセンタサークルに永尾君が立っている。隣に座っている猪口君に言われなかったら見逃していた。

 もちろんマネージャーの私がこの試合のスコアをつけないといけない。前の試合でも猪口君がいろいろとスコアをつけるのにアドバイスをしてくれた。


「あまり宅見に気を取られないように気をつけてよ、はははーー」


 猪口君は笑顔で当たり前のように蒼生くんの名前を出してくる。初めのうちは恥ずかしかったけど、だんだんと慣れてきてしまった。

 この事に何も気が付かない蒼生くんはかなり鈍いのか、この前原田さんが言っていた事は本当のことだと感心していた。最近はチームのみんなが慰めてくれたりするのでちょっとこそばゆい感じがしている。

 試合が始まると蒼生くんがすぐにシュートを決める。あっという間の出来事だったのでよく見ていなかった。それからは次々と蒼生くん以外にもシュートを決めていく、ちょっと想像以上の試合展開になってきた。


「おぉ、凄いなぁーーこんな一方的になるとはね」


 隣に座っていた猪口君も同じように予想外だったみたいで呟いている。こんな試合展開だとはしゃいで喜びたいとこだけど、立場上そんなことは出来ないのでとても残念で仕方がない……

 怒涛の第一クォーターも終わり蒼生くん達が戻ってきた。蒼生くんの表情は全然余裕があるみたいで他のみんなも同様で余裕の表情をしている。


(あれ!? 私達のチームはこんなに強かったの?)


 蒼生くんは永尾君達と何か会話をしているので、私は近寄らずに遠目から見ている。今ここで変な質問をしてはいけないと思って黙ってみんなの様子を見守っていた。

 インターバルも終わり第二クォーターが始まる。相手チームはさっきまで試合に出ていた中谷君が交代して出場してきた。


(少し流れが変わるのかな?)


 素人ながら何となくそう思ったが、無用な心配だった。第二クォーターも同じような攻めが続いていく。やはり蒼生くんは凄くて次々とシュートを決めている。


「全く手加減をしないなぁ……」


 苦笑い気味に猪口君が呟いたが、まだまだと物足りないという顔をしている。


「蒼生くん、調子はまだまだなの?」

「あぁ、そうだなぁ……少なくとも俺が対戦した時の宅見と比べたらまだまだだな」


 少し予想外の返事に驚いてしまうが、猪口君は当然だという表情をしている。


「そ、そうなの? あれだけシュート決めているのに?」

「あれ? マネージャーは見た事ないの? 中学時代の宅見の試合?」

「う、うん。ちゃんと見た事はないの……仲良くなったのは部活を辞めてからだから」

「そうなのか……じゃあ、分からないよな当時の宅見の凄さは……」


 猪口君の表情を見ていると蒼生くんがどれだけ凄い選手だったのか想像が出来た。それだけ凄い選手だった蒼生くんが一度辞めていたのを戻るのにきっといろいろと葛藤があったのじゃないかと不安になる。


「よかったのかな……私のわがままで蒼生くんをバスケ部に戻してしまって」

「うん、大丈夫だよ。宅見自身が最終的に戻る事を決めたのだから」


 猪口君は冷静な顔で話してくれて私の中で少しモヤッとしていた気持ちが晴れてきたような感じになった。


「……そうね、それなら私がもう一度蒼生くんを元の姿に戻す為にいっぱい協力していけばいいのよね」

「そうだな、あの当時はどちらかと言えばとっつき難い雰囲気だったから、マネージャーがいてくれれば今の和やかなまま宅見の実力が上がって、もっと強いチームが作れるかもしれないな」

「じゃあ尚更、私が頑張らないといけないわね。えへへーー」

「ははは、頼んだよ。宅見が一番信頼しているマネージャーなら大丈夫だ!」


 私の笑顔に釣られるように猪口君も楽しそうに笑っている。私だけが思っているのではなくて、周囲から蒼生くんと私の繋がりが深く見えているみたいで嬉しかった。

 試合はほぼ一方的な展開で私達にチームが勝利をした。猪口君がまだまだと言ってた蒼生くんだけど、後半に複数のポジションをやっていた。でもどれもレギュラーと言っても遜色ないプレーで素人の私が見てもやはり凄い選手だと分かる。


(とんでもない人を好きになったのかな……)


 一緒に勉強を始めた頃、こんな雰囲気全然なかったのに、これからいろいろな大会に出場して公式戦で活躍すると蒼生くんはきっと有名になって人気になるに違いない。ちょっと気持ちがへこみそうになる。するとちょうど中谷君と会話をしている蒼生くんを見つけた。

 近寄っていくとさっき猪口君が話していた内容と同じみたいで、蒼生くんは元の姿まで戻れるか不安みたいな言い方をしている。


(うん、ここで私がしっかりと伝えれば蒼生くんの自信に繋がる、それに私しか出来ない事だ!)


 私は自信たっぷりの声で二人の間に割って入る。


「ううん、大丈夫だよ! 私がなんとかするから!!」


 二人が驚いた顔をしたが、中谷君はすぐに勘付いたみたいで笑顔に変わる。


「……そうだな、委員長頼んだよ。きっと委員長なら宅見を完全復活させることが出来はずだ!」


 中学時代を知っている元クラスメイトに信用されていて嬉しくなる。それと同時にもっと気持ちが強くなって絶対に達成しようと決意した。


(そう、この気持ちは誰にも負けない!!)


 でもそんな気持ちになりながら、蒼生くんの表情がイマイチな反応でやっぱり鈍いみたい……ちょっと悔しいな、いつ気が付いてくれるのかな?

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