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シロのセカイ  作者: 七坂 洋
第1部 白き者
5/30

第1話 白の力 (3)

「さーて、第2ラウンドといくかよ!!!」

 雷剛は俺に向かって突進してきた。

 サーザスはまだ動けていない。俺が自分でなんとかするしかない。

 やつに攻撃できないまでもサーザスが回復するまで時間を作る。


 10年前に死んだ親父、鏡 十三が創始した《鏡聖天流》実はそんなに技がなかったりする。存在するのはたった5つだ。

 流・堅・瞬・破・無


 俺はその中の4つしか使えない。

りゅう

 これはそのうちの一つ。そして兄貴から一番叩き込まれた技でもある。全身を脱力し、水の流れの如くあらゆる攻撃を受け流す。


 そしてもし一瞬でも隙があれば俺の左手が奴の顔を掴めばいい。そうすれば勝機がある。《鏡聖天流》ではない、LPとしての俺の特殊能力。それを発動すれば勝てるのだが、発動するためには「左手」で奴の顔に触れる必要がある。


 奴の初手は先ほどと同じ崩拳だった。

 早い!しかし奴の攻撃の拍子は理解出来ている。これならかわせる!全身を脱力し、俺は奴の拳を受け流す。

瞬間、奴の攻撃が変化する。

(肘!?)

 俺の目の前に奴の肘があった。頭を捻りギリギリでかわす。その瞬間、次は足だ。俺の足を踏みつけにくる。

咄嗟に足を引く。

 奴の一撃により床が粉々に砕ける。

 次は肩!!?奴の体当たりのような突進を、奴の背後に回るような形で避ける。しかし、そこに...。

(後ろ回し蹴り!!???)

 俺がこう動くことを見透かしたように、そこに蹴りが来ている。

 ヤバイ!!

 もうこうなったらしゃがむしかない!!俺の頭の上の空気が刈り取られる。しかし奴の動きは止まらない。回し蹴りの回転からそのまま次の攻撃が来た。

 足払い。

 多分これが奴の攻撃の本命。今までの攻撃は全部その布石だったのだ。


 床を粉砕しながら奴の攻撃が迫る。バランスを崩した俺は避けきれない!俺は全神経を両足に集中した。



「痛ってぇ...。」

 背中に激痛が走る。

 受け身をとったとしても、全力で壁にぶつかったのだ。無傷では済まない。

しゅん

 全身のバネを連動し、爆発的な瞬発力を発生させる技。俺はそれを回避に使い、後ろに飛んだのだ。あれを避けるにはこれしか方法がなかった。

 ただ、普通に《瞬》を使って壁にぶつかっていたら、自爆という形でこの勝負は終わっていた。それぐらい《瞬》の瞬発力は凄い。なので、俺は壁にぶつかる直前にもう一つの技を使った。

けん

 内臓を含む全身を硬化させ、防御力を極限まで高める技。

 この2つの技(正確には《流》も含めて3つだが)の組み合わせで俺はやっと奴の攻撃を凌ぎ切ったのだ。しかし...。


(全く攻撃ができない...。)

 展開的にはご丁寧に壁にぶつかるところまで最初の一撃の時と全く同じだ。防ぐ一方で、距離を置くしか手がない状態。凌ぐだけで精一杯で攻撃に移ることができないのだ。このままだと押し切られて、いつかはやられる。正直ジリ貧だ。


 俺の焦りを知ってか知らずか、雷剛の奴は楽しそうだった。

「やるじゃねぇか...。この攻撃を完全に躱せたやつはそうはいないぜぇ。」

 奴は再度身構えた。

 次の攻撃が来る!どうする!?その時声が聞こえた。

「シロッ!!!!!」

 サーザスだ。奴と目が合った。一人でダメなら、二人で。二人で左右からの同時攻撃。これしかない!


 俺たちが組んだのは今日が初めてだ。しかし、もう何年も一緒に戦っていきたバディかのように俺たちは同じタイミングで仕掛けた。


「面白い!!」

 雷剛は歓喜の声を上げた。

「ボーナスタイムだぜぇぇ!!!10秒攻撃しないでやる!」

 奴にとっては、これもスリリングなゲームでしかないのかもしれない。しかし、これは俺らにとって貴重なチャンスだ。この戦いで初めて攻勢に移れる。


 しかし、その希望は数秒後には絶望に変わった。

 俺の繰り出した拳と、サーザスの剣撃は全て空を切った。奴はその全てをほとんど移動せず、上体の動きだけで躱しているのだ。絶望に近い感情が生まれてくる。

(レベルが違いすぎる...。)

「...3...2...1...。」

 俺は、いやきっとサーザスも同じことを考えていたのだろう。俺たちは悲劇的な結末を想像し始めていた。

「ゼロだぁ...!!!」

 雷剛が両手を左右に突き出す。俺たち二人はそれぞれの方向に吹き飛ばされた。


 《堅》を使って俺はなんとか一撃に耐えきれた。が、肋骨の何本かヒビが入っているかもしれない。

 サーザスのやつは俺以上にダメージを食っているのじゃないだろうか。刀を杖代わりに何とか立っている。

どうする?どう戦う?

 正直俺にとっての初めての真剣勝負。こういう時にどうすればいいのか経験値があまりにも無さすぎる。

こういう時、兄貴ならどうするのだろうか...?


「お前ら、いい顔になってきたじゃねぇか...。」

 雷剛は笑いながらそう言った。

「絶望...ってのが見えてきた時の顔だよな。俺は何人も見てきたぜぇ。」

 雷剛は勝利を確信しているのだろう。余裕の表情を浮かべている。

「しかし...お前らはよくやった方だ。正直期待以上だったぜ...。

だからご褒美をくれてやる。」

「...なんだよ、兄貴の話でもしてくれるのか?」

 「はっ!そんな都合がいい話あるわけねーだろ。俺がくれてやるのは...『更なる絶望』だ。」



 瞬間、雷剛は雄叫びを上げ始める。

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォ!!!」


 俺たちは奴が言った通り『絶望』を見た。


ーー


 俺たちの目の前にあるものは、先ほどまで雷剛と呼んでいたソレではなかった。

 荒々しい髪は異様なまでに伸び、そこからは大小4本のツノが生えている。指の先からは鋭い爪が生え、背中からは巨大な羽が現れた。何よりもただでさえ巨体だった奴の体はゆうに5mを超える巨人となっていた。

「...悪魔...。」

 俺はそう呟いた。

 全身真っ黒な異形の巨人。「悪魔」という以外形容することはは出来なかった。


「変異...。」

 サーザスの呟きが俺にも聞こえた。

 リンクが進んだLPに発現する現象の一つ、「変異」。Luaの住人が自らの肉体を取り戻す現象。この姿が自らを雷剛 王牙と名乗っていた人間の真の姿なのだ。


「俺はもう十分、満足した...。フィナーレといこうか...。」


 異形の怪物は、そう言いながら大きく息を吸って口から周囲に炎を吐いた。部屋中が炎につつまれる。炎の中に立つ、まさに地獄の悪魔だ。


 アシュリー!俺は思わず彼女を心配した。

 彼女は柱の影に隠れている。まだ炎は彼女のところまで来ていないようだ。しかし、時間の問題だ。せめて彼女だけでも...と思った瞬間だった。



「...デモン...魔族...。」

 ...?...サーザスの様子がおかしい。

「...デモン...魔族...魔族はっ!殲滅するっっっ!!!!」

 サーザスは雄叫びをあげながら、悪魔に飛びかかる!!

 あの冷静な男が??あまりにも唐突な奴の行動に俺は反応できなかった。

 防御も何も考えていない。まさに特攻である。しかし、疾い!恐らく全てを捨てた最後の一撃だったのだろう。しかし、その振り下ろされた刀は、悪魔の顔面に届く直前に止まった。


 真剣白刃取り。

 そう表現して良いのかわからない。


 サーザスの刀は巨大な2本の指に挟まれていた。怒りと悔しさの満ちたサーザスの表情が一瞬見えた。・


「お前の剣が普通じゃ無いことはわかる...。流石に怖い...。でもまあ、その剣がなければおしまいだ。」


 悪魔は剣を掴んだままサーザスを振り回す。サーザスは耐え切れず手を離してしまい、空中に放り出される。その瞬間、悪魔の巨大な拳がサーザスの全身を捉えた。


 「人間」の身体だったときでも耐えられない一撃だったのだ。「悪魔」となって繰り出した拳の威力は想像することもできない。


 サーザスの身体は天井に打ち付けられる。そこからゆっくりと落ち、まだ辛うじて残っていた巨大なシャンデリアの上に引っかかった。大量の血がシャンデリアから滴る。


「...ふん、えらく興奮していたな...。俺ら一族に恨みでもあったのか?」

 主人を失った刀が落ちてきて床に突き刺さる。

「しかしまあ、もう終わった。」


 ...死んだ?...死んだのか??あいつが??こんな簡単に?


 サーザスの生死はわからない。しかし、あの攻撃を受けて無事では済まないだろう。

 一瞬見えたサーザスの悔しげな表情を思い出す。あの冷静なやつが、あんな表情見せるなんて、よっぽど悔しかったんだろう。


「雷剛っ!!」

 俺は悪魔を睨みつけ、かつてそうだったものの名を叫んだ。


 瞬間、俺の左腕に衝撃が襲った。俺の身体が衝撃で吹き飛ばされる。左腕が折れた音がした。


 何だ?何がおこった?

 奴は正面、距離も離れている。一体何に攻撃されたのか俺は思い及ばなかった。


 だが、その正体はすぐにわかった。

「尻尾...。」

 奴の巨体から生えている長い尻尾。それが、強烈な勢いでなぎ払われたのだ。

 畜生...、人というイメージを持ちすぎていた。奴の両手両足しか注意を払っていなかったため、「尻尾」という予想外のものの攻撃に対して無防備だった。《堅》をする余裕もなく、俺は切り札である左腕に重大なダメージを負ってしまった。

(ここまでなのか...?)

 俺の心の中にそういう思いが浮かび上がってきた。


ーーーー


「自分の限界を自分で決めるな。」


 ふと、兄貴の声が聞こえたような気がした。俺の頭の中に、昔、兄貴が稽古をつけてくれていた頃の風景が浮かび上がる。


「無理だよ!兄ちゃん!俺が兄ちゃんみたいにできるわけないよ!」

 当時俺は10歳か11歳頃だっただろうか?その前にいるのは、そういつも優しい笑顔を俺に向けてくれていた兄貴、かがみ せい。これは、走馬灯というやつなのだろうか?


 親父は俺がまだ幼い時に死んじまったので、俺はこうやって兄貴から鏡聖天流の稽古をつけてもらっていたっけ。

「ああ、そうだな。出来なくてもいい。」

 兄貴はそう言ったんだった。

「お前は賢いからな。自分自身のことをよくわかっている。でも...それが自分自身を縛る鎖になっている時があるんだ。」

 兄貴は歩み寄ってきて俺の前にしゃがんだ。

「きっと将来、お前はその鎖を断ち切らなければならない時が来る。その時のためのアドバイスだ。」

 そっと、人差し指を俺の前に立てる。

「一瞬...。一瞬だけ全てを忘れて全力を出してみろ...。」

 兄貴は優しく俺にそう言った。

「一瞬だけでも自分の限界の枠を超えて全力を出してみて、うまくいきゃあ丸儲け、うまくいかなくても...まあ、全力出し切れていればどんな結果になっても後悔はしないだろう?な?」

 そうだ、あの時、そう言って兄貴はウインクしたんだった。


ーー


 ...ああ、そうだ。そうかもしれない。

 俺はまだ本気を出していないかもしれない。

 だって、怖いんだ。俺はLPになってしまった。通常の人間ではない何かになってしまったんだ。この力で俺の全ての力を使って人を殴ったらどうなってしまうんだろう?


 俺はゆっくり立ち上がった。全身から血が滴る。


「ははぁ、そんな身体で立ち上がるたぁ、根性だけは褒めてやるぜ!!!」

 悪魔はそう喋った。

(うるせえよ、クソ悪魔......ん......悪魔...?)

 そうか、悪魔か・・・俺が今戦っているのは悪魔なんだっけ?

「じゃあ、全力でぶん殴っても問題ないよなぁ?」


「その前にお前が死ね。」

 悪魔が巨大な右拳を俺に向けて振り下ろした。


ーー


 武術の基本は、敵を倒すことではなく「守ること」にある。敵を倒すというのはあくまで「守る」ための一つの手段、いや最後の手段と言っていいだろう。『鏡聖天流』の基本も「守る」ことにある。そのため、攻撃のための技は一つしかない。

 身体中の全ての力を連動させ、右拳の一撃に驚異的な破壊力を生み出すシンプルかつ最強の技。相手を倒すことでしか身を守ることができない時のみに使う必倒の一撃。

 黒く巨大な拳が目の前に襲いかかる。

「うまくいったら、丸儲けだぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 俺は叫びながら全てをかけた一撃をその拳目掛けて繰り出した。


「肉体強化」

 LPの特徴の一つなんだが、俺はそれを簡単に考えていたのかもしれない。以前より重いものが持てるようになる、頑丈になる、高いところに跳べるようになる、その程度だ。あとは、動体視力が上がったりとか、肺など内臓が強くなる...とか?しかし、その意味はそれら全てが一つに繋がった時にあったのだ。


 それらの力が全て「技」によって連動した時の力は俺の想像を遥かに超えていた。


 轟音と共に両者の拳がぶつかり合う。衝撃破で壁や柱にヒビが入った。俺の右手に激痛が走る。右拳が砕けたのだ。


「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 しかし、叫び声をあげたのは俺ではなかった。俺の一撃は奴の拳も砕き、そしてその衝撃破は奴の右腕を四散させていた。


 今だ、今しかない。

 この戦いで初めて、そして唯一のチャンス。俺は残された力を全て振り絞り、《瞬》でやつの頭上まで飛んだ。


 左腕が動かない。折れているのだ。しかし、ここで決めるしかないのだ。

「動けぇぇぇぇぇ!!!!」

 俺は絶叫しながら、折れた左腕を前に突き出した。


 悪魔は残されたもう一本の腕を俺に振り下ろそうとしている。タイミングはほぼ同時、相討ちか。

 視界の片隅にアシュリーが見えた。踊っている??

 瞬間、奴の動きが止まった。


「ぐ...動けん...。」

 奴の身体に霧のようなものが絡み付いている。

 俺の左手は奴の額に触れた。

「決まれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

 俺は『力』を発動させた。

 対象者のLink状態を強制的に解除する力『Link Break』おかしくなったこの世界の理を正しい形に修復する力だ。

 俺の掌が輝く。

「オオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」

 悪魔が叫ぶ。同時に悪魔の力は白い光に包まれた。そしてその中から雷剛 王牙という人間体だけが弾き出される。


 終わったのか?...いや、まだだ。白い光に包まれた悪魔は苦しみながら暴れている。

「オノレ・・オノレ!オノレ!オノレオノレオノレオノレおのれぇ!!!!」

 存在の核となるものがなくなり、奴のエネルギーが放出されている。だが、まだ倒し切れていない。


 あと一手。あと一手なんだ。


 力を使い果たした俺は、受け身も取れずに床に叩きつけられた。

「ぐっ!!!」激しい激痛を感じる。

 まだだ!まだ倒れるな!考えるんだ、もう一手を!


 気力を振り絞り顔を上げる。そして、ソレは俺の目の前にあった。

 床に刺さったサーザスの刀。

 俺に残された力はもうない。俺は最後の賭けに出た。


 俺は刀を掴み、それを引き抜くと全力で天高く放り投げた。もはや立っていることもできず、その勢いで床に倒れ込む。


「サーァザァァァァスッ!!!!!!!!!!!!!」

 俺は残された力で奴の、相棒の名を力の限り叫んだ。


 長い髪のシルエットが見えた。

 その影は刀を宙で掴み。

 そして、悪魔に振り下ろした。


ーー


 もうほとんどエネルギーを失ったのだろう。悪魔と言われたものは、通常の人間と同じくらいの大きさまで萎んでしまった。恐らくもう消滅寸前だろう。

「ケッ、ざまぁないぜ。ボロボロじゃねーか。お前ら。」

 弱々しく、しかし強がるようなそぶりでやつは言った。

「俺がこの様で言っても、格好つかねぇが...お前らまだまだヒヨッコだ。弱すぎだぜ。...もっと強くなりな...。」

 ああ、俺らは弱い。言われなくてもわかる。


「特に白いの、俺は以前、『本気』を出してお前の兄貴にボコられたんだ。意味わかるな...?」

 恐らく、悪魔の姿になったこいつを兄貴は圧倒したのだろう。ということは、兄貴もLPになっている??


「...約束だ...。兄貴の噂、聞かせてくれ。」

 奴は少し考えて...そしてこう言った。

「...ZEMSを信じるな。」

 ...え?予想外の答えだった。


 奴の身体が消え始める。

「まて!まだ大事なことを聞けていない!雷剛!!」

「...ふふ、そりゃぁ、俺の名前ではない。俺の本当の名前は『バサラ』だ。」

 奴の手を掴もうとするが、掴めない。

「...あばよ、ガキども。...いい喧嘩だったぜ...。」

 バサラは消えた。その顔は笑みを浮かべているようにも見えた。


ーー


「あー、もう動けねぇ。」


 俺は床に大の字になった倒れた。サーザスは俺の近くで刀を支えにしながら座っている。二人とも全身ボロボロだ。

「...しかしシロ、最後のあれは何だ。俺に丸投げじゃないか。俺が本当に動けなかったらどうしたんだ。全く無計画、思いつき行動、フォローする身にもなれ。」

「しょーがねーだろ。俺、カ・ン・ゼ・ンに力使い果たしていたから。...っていうか、この戦いでお前『何もいいところ無かった』だろ?だから、最後に花を持たせてやったんだよ...って、シロって何だぁ!!まだ言ってやがるのか!?喧嘩売ってのかよっ!!!」

 くすくすと笑う声がすぐ側で聞こえた。アシュリーがしゃがみ込んで俺たち二人を笑いながら見ている。

「お二人とも仲がよいのですね?」

 その問いに俺たちは間髪入れず同時に答えた。

「よくない!」



「無様ね...。」

 突然、俺たちは現れた一人の人物に声をかけられた。綺麗な髪をしたショートカットの女。俺がかつてLPになった際の事件で出会った女、蓮川はすかわ 美優流みゆるだ。

「何でお前がいるんだよ...?」

「事後処理。」

 部屋にわらわらと人が入ってくる。警察だろうか?倒れている雷剛 王牙を拘束している。


「今回のミッションは、デモン討伐と武器密輸容疑で指定暴力団幹部、雷剛 王牙及び関係者の拘束というのを兼ねていたからね。その後始末よ。」

 気付いたら巨大になっていた建物は、普段のサイズに戻っている。空間を拡張していたのは、雷剛・・いやバサラの力だったのだろうか?


「しかし、二人とも死んじゃうんじゃないかと思って、ちょっと冷や冷やしたわ。」

 ふと、俺は最後に悪魔の身体を包んだ霧のようなもののことを思い出した。

「...あ、もしかして、最後、奴が動けなくなったのはお前の『魔法』だったのか?」

「何よ?知らないわ。」

 こいつはなぜか俺にいつも冷たい。


「まあ、でも頑張ったみたいだしね...。」

 そう言って、やつは手を広げると空間から長い杖が現れた。

「...レ・リカルア..。」

 呪文なのか?彼女が言葉に連動して緑色に輝く光が俺とサーザスを包む。


「...わわ、何だよこれ?」

 と思わずびっくりして身体を触ってみる。あれ?...痛みがひいている。完全ではないが、傷がいくらか治っている。


「ちょっとしたご褒美よ。感謝しなさい。」

 彼女は踵を返して、去っていた。


「あーあ、なんだよ、あいつ。可愛くない。可愛いのに可愛くない!」

「...ふん、まあZEMSも俺たち二人だけで任務を遂行できないという場合も想定していたということだな。ちゃんと、『保険』も用意していたということだ。」

「そーか、そーか、信頼されてなかったのね。俺たち。悔しいなぁ。」

「そうだな...悔しいな。」

「...強く、なりたいな。」

「...そうだな。」

 俺は少し躊躇ったが、そっと右拳をサーザスの方に伸ばした。

「...強くなろうぜ...相棒。」

 サーザスも少し躊躇ったが、フッと笑って言った。

「...ああ。」

 奴も手を伸ばし、俺の拳に応えた。

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