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パン屋やってるんですが、ウチの元ギャル(姐さんタイプ)の嫁が可愛いです

作者: MOZUKU

パン屋の朝は早い。朝5時には仕込みを始めないと。

私は貯金&借金を使用し「ニコニコベーカリー」という、ありきたりな名前のパン屋を始めました。まだ初めて3ヶ月ですが、近所の方がパンをよく買ってくれるので、なんとかやっていけてます。

「ふぅ、あとは焼くか。」

とりあえず、パンの第一陣の生地達が完成したので、釜で焼くことにした。

と、ここに来て、ウチの眠り姫的存在がドタドタとこちらに向かって来た。

「ちょっと!!起こせし!!」

ご機嫌斜めな姫様登場。これこそが私の嫁であり、夫として色眼鏡で見ているとはいえ、金髪ツインテールのツリ目の美人かつ可愛げもある人である。

「おいっ、どこ見てんだよ。こっち見ろ。殴っぞコラ。なんで起こさなかったか説明しぃよ。」

イライラしてる。床をダンダンと足で踏みながら、コッチを睨んでいる。可愛いが怖い。いや怖いが可愛いが正解だろうか?

「いや、だって、ガーガーとイビキかきながら寝てたらか、起こさない方が良いかなって?」

「起こせし!!確かにアーシは朝弱いけど、こっちとら覚悟してパン屋の嫁になってんのよ。その覚悟踏みにじる行為だからね。それ。」

「だ、だってさ、前にガーガー寝てる君を起こしたら、目を血走らせながら『殺すぞ!!』って恫喝してきたじゃないか。」

「あん?記憶にねぇよ。そんなのよ。」

記憶に無いだって?つまり寝ぼけ眼で『殺す』なんてワードを言ったわけか・・・本当に怖可愛いなぁ。

「とにかく、やめろよな。パン作りハブるのは。今度から何が何でも起こせ。」

「りょ。」

あっ、僕もギャル語出ちゃった。

「よし、今からアーシも頑張るかんね。何すれば良い?」

「じゃあ君が考えた『うさちゃん苺ジャムパン』を10個作って。」

「・・・あー、アレかぁ。ってか、私は兎苺ジャムパンって言ったのに"うさちゃん"って何よ?可愛いかよ。」

うさちゃん苺ジャ厶パンとは、ウチの嫁さんが立案したウサギを模した白いモチモチとしたパンの中に、苺ジャムをたっぷり入れたパンなのです。味も良く、見た目の愛らしさも相まって、うちの大人気商品の一つである。

「うさちゃんの方が可愛いからさ。せっかくだから可愛い方がウケが良いよ。」

「アンタ意外と打算的な男だよね。」

このご時世でパン屋をやっていくには、他者の考えを読み取ることが必要不可欠。必殺必中の商品制作が生き残るための経営戦略なのです。

「まぁ、作ったるわい。ほら手を動かすよ。」

「りょ。」

あっ、また言っちゃった。



ラインナップのパンが焼き上がり、それを配置して、七時から店を開店。サラリーマン、高校生、その他エトセトラの人々が店にやって来てはパンを買ってくれている。大変喜ばしい限りである。

「それじゃあ、姐さん。今日も学校頑張ってきます♪」

「おう、気をつけてな。」

ウチの嫁さんは何故か訪れる女子高生に慕われており、どの子も姐さんと呼んで、パンを買うついでに、悩みや恋愛相談

をしていく。その際、私は何となく気まずいのだけど、ウチの嫁さんが頼られることは嬉しいことなので、プライバシー保護の観点から遠くからやり取りを見守っている。

"カランコローン"

「いらっしゃーい」

出入り口のベルが鳴り、またお客が店に入ってくる。と、黒いランドセルを背負った可愛らしい低学年の少年が入ってきた。

「おはようございます!!」

うん、元気の良い挨拶。大変よろしい♪

「おー、また可愛いのが来たな。好きなの選んでみ。」

「はい!!」

ウチの嫁さん基本的にお客様の誰に対しても偉そう、だが不思議と嫌な感じがしないのでクレームが来たことはない。

「ボク、ここのパン大好きです。今日は学校がお弁当の日なので、お母さんに無理言ってパンを買うことをお願いしたんです。」

「おー、そうかそうか。じゃあ、しっかり選べー。腹に貯まるの選べよー。焼きそばパンとか、たこ焼きパンとかなー。」

「はい!!じゃあそれをいただきます♪」

「おう、じゃあ、ちょっと待っとき。お姉さんが取ってやるから。」

粗野に見えて優しいウチの嫁さん。こういうギャップが彼女の魅力の一つである。

「ほらよ。お金足りるかい?」

「はい♪それはそうとお姉さん可愛いですね♪」

「おぉっ・・・どうした藪から棒に?突然の世辞とかウチ苦手なんだけど。」

ウチの嫁さん顔赤い、結構チョロいんだよなぁ。

「お世辞じゃありません!!僕が大きくなったら結婚してください!!」

「うへっ!?・・・おい、なんかプロポーズされたんだけど、現旦那としてどう思う?」

どう思うとか言われても困る。ノーコメントで。

「ま、まぁ、考えといてやるよ。お前は見どころあるから、うさちゃん苺もサービスしといてやる。」

「うわぁーーー♪ありがとうございます♪」

満面の笑みの少年。思わぬ所で小さなライバルが出来てしまったが、嫁さんは誰にも渡さないよ。

「いってきまーす♪」

「はい、いってらー。」

"カランコローン"

少年が立ち去り、店内に私と嫁さんの二人っきりになった。

すると嫁さんはこちらを振り向き、珍しく満面の笑みでこう語った。

「ガキって良いな。欲しくなっちゃった♪」

・・・よし、頑張ろう♪









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