交差点のお姉さん
季節はすっかり冬。学ランだけでは寒さが堪えるようになった。
俺は、白い息を吐きながら友人と二人でのんびり帰宅している。
「おい、なぁ、あれ……」
「あ!」
俺たちの視線の先には、交差点の手前にあるバス停に立つひとりの女性。たぶん二十代だろう。白いコートを着た、髪の長いきれいなお姉さんだ。
俺たちは誰にも聞かれないよう、ぼそぼそと相談を始めた。
「それじゃ、ジャンケンで勝った方が声をかけるってことで」
「ああ。いくぞ、最初はグー!」
普段はクラスの女子にさえ満足に話しかけられない俺たちだが、それでも男のはしくれだ。あのきれいなお姉さんに声をかけずに帰るわけにはいかなかった。
そのバス停は二週間ほど前に廃止になったのだから。