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自分を美人と思ってない学校一のクール美少女に「可愛い」と言ったら結婚を申し込まれた


 三条(さんじょう)(みやび)

 それがこの学校を代表する麗人の名前だ。


 頭脳明晰、容姿端麗。

 成績は常に学年主席で生徒会長を務め、剣道部・弓道部・茶道部の主将をも兼任する大和撫子。


 文武共に完璧で、厳かでクールな雰囲気をまとっていることから全生徒に頼りにされている。

 俺にとっても憧れの先輩だ。


「雅先輩、この前の講演カッコよかったです!」


「ああ、ありがとう」


「雅先輩、剣道県大会優勝おめでとうございます!」


「うむ、あれくらい当然だ」


「雅先輩、今日も弓の引き方を教えて下さい!」


「ははは、私でよければ力になろう」


 廊下を歩けばこんな感じ。

 瞬く間に生徒に囲まれ、羨望の眼差しを向けられる。


 そんな彼女に対して、俺こと内藤(ないとう)利樹(としき)はごく平凡な一般生徒。

 頭脳にせよ運動にせよ、雅先輩には手も足も出ない。

 それでもなにか雅先輩の役に立ちたいと思って、生徒会に所属している。


 そして生徒会の雑務を黙々とこなしていたある日――


「内藤、少しいいか?」


「は、はい!」


 雅先輩に話しかけられる。

 俺のテンションは大いに上がった。


「日本茶道学会から宣伝写真のモデルを頼まれてしまってな。この件は断りを入れようと思っているのだが、代わりに紹介できる生徒は誰かいないだろうか?」


「? どうして断ろうと思っているんです?」


「写真のモデルなど私は相応しくない。もっと可憐な女子にすべきだろう」


「なにを仰るんですか、雅先輩以上に可憐な人なんてこの学校にはいませんよ」


「なっ……!? バ、バカを言うな! 私のような器量の悪い女が可憐なはずあるか!」


 前から思っていたのだが、雅先輩は自己肯定感が低い。

 自らをもっと高みへ――そんな向上心があるからなのだろうが、どうにも自分があまり女性らしくないとも思っている節がある。


 少なくとも自分が美人だという自覚はないようなのだ。

 あまりに完璧すぎるために全男子生徒が気後れし、浮いた話がまるでないのが原因かもしれない。


 ならばここは一つ、雅先輩にはしっかりと自覚を持ってもらおう。


「いいえ、雅先輩は可憐でとっても可愛い(・・・)人です。先輩以上に素敵な女性なんて俺は知りません」


「かッ、可愛……ッ!? 私が可愛いだと!?」


「すごく可愛いですよ。そうやって自分に自信がないところも、他の生徒に見せ場を譲ろうとする奥ゆかしさも、俺は先輩の可愛いところだと思います」


「だ、だが……私は堅物だし勉学しか能がないし……」


「それは主観であって、少なくとも俺は先輩が女性としての魅力に溢れていると思ってます。仮に先輩が勉強できなくても魅力的なのは変わりません」


「か、身体もゴツゴツしていて女らしくないし……」


「先輩のスタイルは抜群です。むしろ無自覚すぎて不安になる時がありますよ」


 俺からすれば、雅先輩は隙が多すぎる。

 彼女は誰がどう見たって美少女なのだから。


 これくらいハッキリ言っておかないと、いつか悪い男にでも誑かされてしまいそうだ。


「わかって頂けましたか? この依頼は雅先輩が適任です」


「………………わ、わかった。考慮させてもらう……」


 それだけ言い残すと、雅先輩は小走りで生徒会室から出て行った。



     ※



 後日、再び生徒会室にて――


「ふぅ……」


 疲れた表情で雅先輩が椅子に座っていた。


「どうされたんですか、雅先輩?」


「いやね……剣道部の活動で、後輩の女子を泣かせてしまったんだよ。当人を想って指導したのだが、きつく当たりすぎてしまって……」


 悩んだ様子で言う。


 雅先輩は文武両道の完璧主義。

 こと自らが模範となる剣道となれば、自然と厳しい態度になってしまうのだろう。

 

「その子を泣かせてしまったことを後悔しているんですか?」


「う……む……後悔もそうだが、次に顔を合わせた時になんと声を掛けたものかと思ってな……」


「先輩はやっぱり可愛いですね」


「っ!? ま、またそんな世迷い事を……!」


「泣かせた子をちゃんと心配してるのも可愛いですし、その子とどう向き合えばいいのか悩んじゃう不器用さも可愛いです」


「こ、これは可愛いなどとは言わん! ただ己が未熟なだけで……!」


「そういうすぐ自分の否定に入っちゃうところも可愛いポイントですよね。相手じゃなく自分に非があると抱え込んでしまうのも優しくて素敵です」


 そう、雅先輩は実は優しい。


 外観や雰囲気こそクールで厳しそうな印象だが、その実は他者への思いやりで溢れている。

 気が付けない生徒が多いけど、彼女は母性が強いタイプなのだ。


「お、お、お前はなにが望みだ!? 私を辱めてどうするつもりなのだ!?」


「俺は事実を言ってるだけです。雅先輩は可愛いって」


「ではなんだ! お前は私を異性として見れるというのか!」


「勿論です。俺はずっと前から先輩を愛らしい人だと思っていましたよ」


 むしろこの学校の男子で、雅先輩を女性として意識していない奴なんているだろうか?

 学校一の美少女は誰かと聞けば、間違いなく三条雅という答えが返ってくるのに?


 先輩は本当に自覚がないよな。


「ず、ずずずずっと前からだと……!? お前はそんなに、私のことを……!」


「はい、先輩より素敵な女性はいないと思っています」


「っ…………そ、そうか、わかった……お前にそこまでの覚悟があるなら、私も誠意を見せねばなるまい」


「誠意……と言いますと?」




「内藤利樹よ――私、三条雅はお前に結婚を申し込む!!!」




     ※



「け――結婚……!? どうして俺が雅先輩と結婚を!?」


「あ、あんなに私を可愛い可愛いと……これはもう告白されたも同義だ!」


「可愛いと褒めるのが告白になるなら、先輩は既に一万回くらいは結婚していそうですが……」


「たわけ! 私に可愛いなどと言ってきたのは、後にも先にもお前だけだ!」


「俺だけなんですか!?」


「こ、これまで同性からだって言われたことないのに……」


 顔が赤くなる雅先輩。

 ああそうか、彼女はクールな完璧主義者ってイメージを持たれてるから、「綺麗」「美しい」「カッコいい」などと言われたことはあっても「可愛い」はないのか。


 しかし可愛いと言われて赤くなるところがもう可愛いのだが。


「だ、だからお前には責任を取ってもらうぞ! 大人しく私の伴侶になってもらう!」


「そんな、雅先輩と結婚なんて……」


「なんだ!? や、やはり私みたいな醜貌な女は妻にできないというのか!?」


「とんでもない。まるで夢を見ているみたいです。俺でよければ一生かけて幸せにします」


「ふぇ!?」


 俺は先輩に近付き、彼女の手をしっかりと握る。


 まさか俺みたいな凡人が雅先輩と結婚できるなんて……。

 彼女は俺にとって憧れの存在で、雲の上の人だった。


 そんな女性から結婚を申し込まれるなんて、男明利に尽きるというもの。

 ここで結婚を断ったりすれば男が廃る。

 

「でも俺はまだ未成年ですから、すぐには結婚できません。まずは学生としてのお付き合いから始めるのはどうでしょう?」


「は……ははははいいいい……!」


「先輩、顔が赤いですよ……?」


「ししし仕方ないだろう……! わたわた私は男にめめ免疫がなくて……!」


「照れてるんですか? やっぱり先輩は可愛いですね」


 俺はコホンと咳をして、息を整えると、


「それでは、先輩の誠意に答えさせて下さい。三条雅さん、俺と付き合ってくれませんか?」


「ひゃ、ひゃい……」


 可愛い雅先輩は、こくりと頷いてくれた。


短い作品ですが、最後まで読んで頂きありがとうございました。


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