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1日目 エビフライを作る

エビフライ美味いよね

「タツヤ様、今異世界と言いましたか?」

「言いましたが、皆さんは異世界というものを知っているのですか?」

「はい。有名な吟遊詩人の歌に異世界から来た者の歌がありますので」

「ん? では異世界人というのはたくさんいるものなんですか?」

もし先輩方がいるのなら情報が欲しいからな。

「いえ、実際に見たことはありません。この歌も数百年前にできたものですし。正直にわかには信じがたいです」

エミリー殿下がそう告げる。

「それではこれなんかは如何ですか?」

俺はそう言いながらスマホを取り出し、電源をつけた。

「タツヤさんこれは何ですかな?」

ギャリーさんがスマホを覗き込みながら聞いてきた。

「これはスマホという道具です。主な機能として遠くの人と会話をする機能や瞬時に絵を描く機能があります」

そう言いながらギャリーさんの写真を撮って見せた。

「なっ……」

「タツヤ様、このスマホというものを作ることは可能でしょうか?」

エミリー殿下が目を輝かせながら言った。

「流石に無理です。スマホには私の世界の最新の技術が多数使われていますので」

「そうですか……」

エミリー殿下が項垂れながら言った。

「では他になにか作れる物はないか?」

「まだここに来たばかりですので、具体的に何が作れるかはわかりません

俺は陛下の質問にそう答えた。

「では、こういうのはどうだ。一ヶ月間、王城に部屋を用意する。その間になんでもいいから国民の生活を豊かになるようなものを開発してくれ。」

「なんでもいいんですか?」

「あぁ、それで良さそうなものが出来たら我の直属としてタツヤを雇おう。無論、部屋や食事も用意する」

「わかりました」

俺は陛下の提案を受け入れた。

「それでは私はそろそろ夕食を作りに行って参ります」

「エミリー殿下が夕食を作るのですか」

「いえ、普段は作りません。今回はギャリー様が持ってきてくださった食材を使った料理を開発しようと思いまして」

「なるほど。では私もその食材で料理をしてみてもいいですか?」

「はい、構いませんよ。では行きましょう」

「タツヤ様、荷物は部屋に運んでおきます」

「ありがとうございます」

俺はリュックをマレットさんに渡してエミリー殿下の後を追った。


「失礼します」

「エミリー殿下、お待ちしておりました。例の食材はあちらに置いてあります。そちらの方は?」

「こちらはタツヤ様。私と一緒に料理をしていただきます」

「初めまして。タツヤ・ヒムロと言います」

「俺はクラーク・ノウル。料理長をやってる。よろしく」

「こちらこそよろしくお願いします」

俺は当たり障りのない挨拶を済ませるとエミリー殿下と共に食材の方へと歩いて行く。

「これが新しい食材ね」

そう呟くエミリー殿下の前にはエビがいた。

「エビだ……」

「エビ? タツヤ様はこの食材について知っているんですか!」

エミリー殿下は若干興奮気味に聞いてきた。

「はい。地元ではよく食べられていました」

「ではこの食材を使った料理を作れますか」

「出来ますよ」

「ご教授願います!」

エミリー殿下は声量を上げてそう言った。

「エイミー殿下、タツヤ殿。俺もそのエビとやらを使った料理を見せてもらってもいいか」

「手伝っていただけるならば問題ないですよ」

「勿論だ。それで何という料理を作るんだ?」

「今回はエビフライというものを作ってみます」

俺は口角を上げながらそう答えた。


「タツヤ殿、これで大丈夫ですか」

「ええ、問題ありません」

俺は料理長にお願いして材料を持ってきてもらっていた。

エビ、卵、パン、油、小麦粉、白ワインビネガー、玉ねぎ、パセリ、ピクルス、塩、油、水、キャベツの13種類だ。

「まずはエビの下処理からやっていきましょう。まずは殻をむきます」

俺がテキパキと頭や殻をむく様子を、二人はまじまじと見ていた。

「次にエビのしっぽとこの背ワタの処理をします」

そう言いながらエビのしっぽを切り、背ワタを抜く。

「それは何のためにやっているんですか?」

エミリー殿下が質問を投げかけてきた。

「エビのしっぽはとがっているので少々危険です。また、油跳ねの原因にもなります。背ワタは食感をよくするために取りました」

俺はそう答えながら次々に処理をしていく。

「最後にエビの筋を断ち切り、指でほぐすようにつぶします。これをすることにより、見栄えが良くなります。これでエビの下処理は完成です。それでは作ってみましょう」

そう言うと、二人は同時にエビの下処理を始めた。

俺はその間にゆで卵を作っておくことにした。


「タツヤ様、出来ました」

俺がゆで卵などを切り終えるのとほぼ同時にエビの下処理も終わったようだ。

「完璧ですね。それでは次にソースを作っていきましょう」

「どんなソースを作るんだ?」

「今回はタルタルソースというものを作っていきます」

「タルタルソース? それはどのようなソースですか?」

エミリー殿下が期待の眼差しで見てくる。その横で料理長は材料を見ながら考え込んでいる。

「それは食べてみてからのお楽しみです。ではまずマヨネーズというソースを作っていきます」

「マヨネーズ? タルタルソースじゃないのか?」

「はい。タルタルソースはマヨネーズをアレンジしたソースですので」

「なるほどな。それでそのマヨネーズとやらはどうやって作るんだ?」

「油に卵、白ワインビネガー、そして塩を入れて混ぜれば完成です」

そう言いながら俺は材料を混ぜる。

「……簡単だな」

「簡単ですよ、ほらちゃっちゃと作っちゃいましょう」

その言葉を皮切りに二人も材料を混ぜだした。


「おぉ、これはいいソースだな」

「そうですね。いろいろな料理に使えそうです。」

料理長はまた考え込むように、エミリー殿下は恍惚とした表情を浮かべながらマヨネーズを舐めている。

「タツヤ、このマヨネーズを王城の料理に使ってもいいか?」

「問題ありませんよ。別に料理で儲けようとは思ってませんし」

「そうか、ありがとう」

「タツヤ様! タルタルソースというのはこれ以上に美味しいのですか?」

「あくまでアレンジですのでそんなに変わりませんよ。ただエビフライにはそちらの方が合うというだけです」

「それでそのタルタルソースはどうやって作るのですか?」

「このマヨネーズにみじん切りのゆで卵、玉ねぎ、パセリ、ピクルスを入れて混ぜます」

「これでタルタルソースの完成です」

「マヨネーズより少し酸っぱくなっていますね」

エミリー殿下がタルタルソースを舐めながら呟いた。

「タツヤ、このタルタルソーs」

「私が作る料理は自由に作ってもらって構いませんよ」

「本当にいいのか?」

「はい。毎回自分で作るのは面倒くさいじゃないですか」

「そうか、では遠慮なく使わせてもらおう。」

「わかりました。それでは最後にエビフライを作っていきましょう」

「料理長、揚げ物の準備をしてください」

「すまんタツヤ、揚げ物ってなんだ」

料理長が聞いてくる。どうやら揚げ物は作られていないらしい。

「高温の油で食材をゆでる料理です」

「くどくならないか」

「そこまでくどくはなりませんよ。それにレモンやこのタルタルソースの酸味が中和してくれます」

「なるほど。やってみるか」

料理長はそう言い、コンロらしき場所手をかざしてファイアと唱える。

すると突然、手のひらから炎の球が現れた。

「なっ!」

「? タツヤ様、どうかなさいましたか?」

「……なんでもありません」

今のは魔法か? この世界なら存在するかもしれないと思ってはいたが、実在しているとは。

魔法についての知識もつけておくべきか?

「タツヤ、油の量はこのくらいでいいか?」

そんなことを考えていると、料理長が話しかけてきた。

「あ、はい。問題ありません」

「そうか、それで次は何をすればいい?」

「エビに衣をつけます」

「衣?」

「はい。エビに小麦粉と卵、そしてこのパン粉というパンをみじん切りにしたものをつけてください」

俺が実際にやって見せると、二人も瞬時に衣をつけだした。

「油に少し衣を入れてみて、すぐに浮かんで来たら適温です。エビを入れてあげましょう」

シュワシュワっと水が蒸発する音が調理場に鳴り響く。

二人は油がはねないように少しだけ距離を置いたところから眺めていた。

「衣がこのような茶色っぽい色になったら完成です。」

俺はそう言いながら油からエビフライを取り出した。

「タツヤ様! 食べてみていいですか」

「今食べたら火傷しますよ」

「我慢できません!」

そう言うとエミリー殿下はエビフライをタルタルソースにつけて食べる。

「あふっ」

「そりゃそうなりますよ。大丈夫ですか? 火傷はしていませんか?」

俺がそう言うと、エミリー殿下はゴクンッとエビフライを飲み込んだ。

「大丈夫です。それよりもこのエビフライはとても美味しいですね」

「ええ。私の好きな料理の一つですから」

「おお、これは良いな。タツヤ、この揚げ物というのはエビ以外でもできるのか?」

後ろで残りのエビを揚げていた料理長がエビフライを食べながら聞いてきた。

「魚や野菜、鶏肉などいろんなもので来ますよ」

「そうか、それは研究しないといけないな」

そう言った後、料理長は何やらブツブツ呟きながら考え込んでしまった。

「それではタツヤ様、私たちは戻りましょうか料理長、私たちの分とお客様二名分をお願いします」

「承知いたしました」

そう言うと、料理長はエビフライの調理に戻った。

ありがとうございました。

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