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1日目 王城到着

眠いです。

改めて情報を整理してみよう。

俺の名前は氷室竜也、21歳。

バイトの帰りに道を歩いていると、いつの間にか異世界らしきところに転移していた。

持ち物は今着ている服、リュックサック、スマホ、財布、プリント、筆箱、水筒。

この世界の人にも日本語が通じると思われる。

今いる場所はリシェール王国という国で、ギャリーさんと共に馬車で王都に向かっている最中。

外はだんだんと暗くなり始めていた。

さて、俺はこれから何をすべきだろうか。

やはり、最重要事項は衣食住だろう。

俺のような異世界転生者がたくさんいて俺らを支援する組織か何かがあったら楽そうだなぁ。

「タツヤさん、王都が見えてみましたぞ」

ギャリーさんがこちらを振り向きながら言った。

彼の後ろから覗くように前を見てみると、5mほどの壁がそびえ立っていた。


「はい、問題ありません。お通り下さい」

「ありがとうございます」

門番の人からの簡単な質問を終えると、馬車は王都の中へと再び動き出す。

門をくぐると、石造りの建物が連なっていた。

「すげぇ……」

日本から出たことがなかった俺は、まるでヨーロッパ観光をしているかのような気分になっていた。

「王都へ来るのは初めてですかな?」

「そうですね。かなり広そうな街ですけど何人くらい住んでるんですか?」

「確か70万人弱でしたかな」

大きめの中核市くらいの規模か……

「それでこの馬車はどこへ向かっているんですか」

「王城だ。この荷物を届けに行く」

ギャリーさんはそう答えた。


そこから50分ほど進むと王城らしきところの門に着いた。

「失礼します。本日はどういったご用件でしょうか?」

門番の人がギャリーさんに問いかけた。

「エミリー殿下の依頼の品をお届けに参りました」

これは王族の方への荷物を運んでいたから焦っていたのか。

俺はそんなことを考えながら2人の会話を聞いていた。

「ふむ。ギャリー・ロダン様ですかな?」

「はい。左様でございます」

「陛下が心配しておられたぞ。何かあったのですかな?」

「実は道中で怪我をしてしまいまして、それで遅れてしまいました」

ギャリーさんはそう言いながら、足を指で刺した。

「そうか、大事にいたらずによかった。介護のものをつけよう」

「ありがとうございます

「とりあえずこの紙に名前を書いてくれ。後ろの者も名前を記入してくれ」

「はい。わかりました」

俺はそう言いながら前へと移動した。

「タツヤさん」

「あ、ありがとうございm」

俺は一瞬固まった。

ギャリーさんから受け取った紙には見たことがない文字が書かれていた。

当たり前だ。寧ろ音声言語が一致している方がおかしい。

「あ、あのー、ギャリーさん。実は私、文字が書けなくてですね。出来れば代筆をお願いしたいんですが……」

「そうでしたか。それでは私が書きましょう」

ギャリーさんは一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに俺から紙を受けとった。

「タツヤさんのフルネームは何ですかな?」

ギャリーさんが紙を見ながら言った。

フルネーム。俺の本名は氷室竜也だ。しかし、いかにも中世のこの国ではおそらく。性名は逆で伝えるべきだろう。

俺はそう判断してギャリーさんに名乗った。

「タツヤ・ヒムロ。これが私の名前です」

「タツヤ・ヒムロ」

ギャリーさんは復唱しながら名前を書き、紙を再び門番の人に渡した。

「ありがとうございます。それでは馬車と荷物は我々が運んでおきます。」

ギャリーさんはそう言うと、いつの間にか来ていた若いお兄さんの肩を借りながら馬車から降りた。

「ほら、タツヤさんも行きますぞ」

「行くってどこにですか?」

「そんなの決まっておろう。陛下のもとへだ」

ギャリーさんはニヤッと笑いながらそう答えた。


「ギャリー様お待ちしてました」

城内に入ると初老の男性が話しかけてきた。

「マレット殿、お待たせしてしまい申し訳ございません」

「いえいえ、お気になさらず。ところで、そちらの方は?」

男性が怪訝な目を向けながら言った。

「こちらはタツヤ・ヒムロさん。私の恩人です」

「そうでしたか。私は執事長のバッカス・マレットと申します」

「タツヤ・ヒムロです」

「さてギャリー様、陛下方がお待ちです。参りましょう」

そう言うとマレットさんとギャリーさんは歩き出した。

「ギャリーさん。私は王族や貴族の方に謁見する際のマナーについて全く知らないんですが……」

俺はそう言いながら二人の後を追った。

「陛下は堅苦しいのを嫌いますのでこういった非公式の場では特に気にしなくて大丈夫ですよ」

マレットさんがそう答えた。

「それはそうとギャリー様、今回のモノはどうでしたか」

「食感や味はそこそこでしたが、なにやら砂のようなものが混ざっていたようでして……」

「殿下のお眼鏡には叶わなそうですか」

「厳しいでしょうな」

二人は何やら食べ物の話をしているようだ。

「何の話を知れるんですか?」

俺は二人に質問してみた。

「つい先日、エミリー殿下が今までに無いような食材が欲しいと言い出しまして、ギャリー様に一風変わった食材を持ってきて欲しいという依頼を出されたのですよ」

「それはまぁ、何と言うか……」

「殿下が突拍子もないことを言い出すのは今に始まったことではありません。それに殿下は何より国の民のこと思っておられます。」

「そうなのですか」

「はい。今回も国民のための新しい料理を開発するためとのことです」

「以前開発していた水洗トイレはまさに目から鱗の発明でしたな。今では我が商会の主力商品の一つです」

「そんなものまで発明したのですか!」

俺は驚嘆した。

「ええ。それ以降我が商会ではエミリー殿下の発明は積極的にサポートするようにしています」

ギャリーさんは笑いながら答えた。

そんな会話をしながら俺たちは城内を進んでいった。


「陛下、ギャリー様をお連れしました。」

マレットさんは扉に向かって言った。

「うむ、入れ」

「失礼いたします。」

俺とギャリーさんはマレットさんの後についていきながら入室する。

室内には三人の人物がいた。

爽やかなイケメンの青年、優しそうでふくよかな男性、浮かない表情をした小柄な女の子。

すると突然、女の子が駆け寄ってきた。

「ギャリー様、この度は私のせいでお怪我を負わせてしまい申し訳ございません」

女の子は金色に輝く髪をなびかせながら、勢いよく頭を下げた。

「頭をお上げください。この怪我は私が馬の操縦を失敗してしまったせいで負ったものです。それにこちらのタツヤさんのおかげで最悪の事態は避けられました」

ギャリーさんがこちらを見ながら言った。

「そうでしたか。タツヤ様、この度はギャリー様を救っていただきありがとうございました」

女の子が詰め寄ってきながら言った。

「いえ。人として当たり前のことをしたまでです」

俺はあっけにとられながら当たり障りのない返事をした。

「エミリー、タツヤさんが困っているだろう」

青年が呆れながら言った。

「あ、突然すみませんでした。私はエイミー・オーウェン・リシェールと言います」

女の子は膝を曲げながら名乗った。

「僕はハリー・オーウェン・リシェールです」

「我はオーウェン・ジョゼフ・リシェールだ。この国の国王をやっている」

エイミー殿下に続いて二人も名乗った。

「私はタツヤ・ヒムロと言います」

「ではタツヤ、ギャリーを助けたこと礼を言おう」

オーウェン陛下がそう言った。

「大したことはしてませんよ」

「そんなことはない。それで何か礼をしたいのだが何か欲しいものはあるか? 遠慮せず言ってくれ」

「なら住む場所が欲しいです」

「なんだ? 家がないのか?」

「はい。俺は異世界から来たので」

「は?」

全員が目を丸くしながら俺の方を見てきた。

読んでいただきありがとうございました。

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