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1:ルール説明

 ――どこだここ?

 真っ暗で何も見えない……

 そういえば俺は寝てたはずだから、これは夢か。随分と意識がハッキリしているが


 「めでたいめでたい」


 なんだ今の声? まぁ夢だからな。俺は驚かねーよ

 それにしても何がめでたいんだろう俺の夢


 「ゲーム参加ぁ〜」


 なんだよゲームって……

 あれ、声に出したつもりなんだけどな、どうも話すことはできないらしい


 「参加者は、お前を知ってる誰かと、それを知ってる誰かと、それを知ってる誰かを知ってる誰か、そしてお前が知ってる誰か。もっといるかもなぁ」


 意味わからねぇし、だからなんのゲームなんだよ


 「手段は問わない、他の参加者を殺せ、多くのマークを集めた奴が勝ち。負けた奴は……」


 ――殺せ!?

ちょっと待てって、殺しのゲームって事かよふざけんな


 「消える。勝ち残った奴は、この先も生きていられる」


 景品無しかよ

 誰がこんなゲームやるか! 景品あってもやらねーよ


 「もちろん勝者には得点だってある」


 そんなもんいらねーから、ふざけやがって


 「参加者には、力を与える。1つだけ、そして他の参加者を殺せばその力は受け継ぐことになる。期間は130日、だが途中で生き残りが1人になればそこで終了。その力は勝者のものだ」


 力ってなんだよ……

 つーか、俺も何を真剣に、どうせ夢じゃねーか。夢だからこそか、目が覚めればこんな事もどうでも良くなる


 「参加者の体の一部に、参加者のマークが浮かぶ、このマークは参加者にしか見えない、このキルマークを目印に多くの力を集めろ」


 随分と設定の細かい夢だ、どうでもいいっての


 「健闘を祈るよ」


 ざけんな






 「――ほれ見ろ、やっぱ夢だ。何も無い」


 俺は普通の高校に通う、普通の男子高校生である

 瀧上幻弥たきがみげんやこれが俺の名前だ。ここらじゃ珍しい名字らしいがそんなことはどうでも良い

 今日は4月11日、昨日が始業式で、今日から本格的に俺の高校生活2年目が始まるのだ


 「おはよう、幻弥……」


 朝から無気力に俺の名を呼ぶのは親父だ

 親父は少し前までは、鬱陶しいくらいに元気で真面目に働いて、1人息子である俺の事をかなり昔から男手1つで育ててきてくれた、というのも俺は物心ついた頃には母親がいない環境にいたのだ

 しかし親父が無気力なのはそれとは関係がない、4月に入ってすぐ、突然会社をリストラされ、それから今日までの数日やたらと不幸が続いているらしい、だから家からでないで、ずっと家の中にいる。貯金があるためしばらくは大丈夫そうだが、金に困った状況ではある


 「おはよう、今日は……家からでないか?」


 「あぁ、そうする」


 俺には何もできない

 とりあえずは親父の不幸の連鎖が止まるように祈るくらいしかない。やはり世の中金、そしてよく分からないが不況なのだな


 俺は朝飯は食わない、親父に作る元気がないためだ。俺は残念なことに料理が全くできない。トーストくらいならできるし炊飯器も使えるが、生憎買い物とやらにいっていないので、料理ができてもできない状態だ


 朝飯を食わないのだから、着替えて歯を磨き、学校に行くだけだ


 「ふぅーどうしたもんか……」


 洗面所で鏡の前に立つ

 やはり映るのは俺の顔、だがどういうわけか俺の額には落書きのようなものがされている。何か十字架のようなクロスのマークに見える


 というか誰がやった? 親父がそんなことするわけないし、昨日か? だが俺はちゃんと風呂入ったぞ?

 

 「こんな顔で学校行けねぇよ」


 真水で額をこするが、落ちる気配がない

 こすりすぎて額は赤くなるが、落書きは全く薄くならない


 とりあえず石けん、それでも落ちないので、なんかの試供品の洗顔クレンジング剤とかいうのを使ってみるが変化はない


 「変だ、どう考えてもおかしい」


 よく見ると結構細かく書かれた落書きで、人間の額にそんな簡単に書けると思えない。というよりも実物は見たこと無いけど、これは刺青っぽい。こすって落ちるはずがない


 ……まさか、ゲームの参加者につけられるマークとか?


 だがそれだったら親父がいくら無気力だと言え……

 そうか、参加者以外には見えないか。仮にあのゲームが実際に起こっているのなら、親父は参加者では無いということか

 そうなると、俺は何かしらの力を持っているということになるな、そして俺と同じように参加者が外には何人かいて、少なくとも俺の知り合いが1人、俺を知ってる奴が1人はいることになる

 もし、だ。万が一そいつらが俺を狙っているとしたら……


 学生の俺の知り合いなんていえばほとんど学校関係だ

 そんな奴らがうじゃうじゃいる学校に、標的になるマークをさらけ出していくのは危険だよな。だが額って……隠しづらい。とりあえず怪我を装って包帯でも巻いていくか


 「親父、包帯ある?」


 「……」


 返答は無し、まぁいいさ

 親父が元気をなくすのも仕方がないし、ゆっくりと元気になってくれればいい


 「お、あった」


 随分と古いな……

 黄ばんでいるほどでもないが、新品の包帯と比べると明らかに古いだろうな。だが、この際言ってられないな


 「よしっこれでオッケーだ」


 どうも怪我もしていないのに包帯を巻くというのは変な感じだ。なんというか我ながらアホみたいだ。だがこれも仕方がないことだ。命を守るためだからな


 「じゃあ、行ってくるわ」


 「……」


 やはり返答はない






 学校までの道、何人もの人とすれ違う。俺の知る人間は多分いなかったが、俺を知っている人間は何人いるのだろう。そしてゲームの参加者は、俺と同じようにマークを持って、俺の命を狙う人間は……


 まだ、ゲームが本当にあるだなんて断定はできないか


 「ちぃーっす瀧上。ってオイ! お前頭どうした!?」


 「ちっす秋山。気にすんな、ちょっとした怪我だ」


 「そうか、気をつけろよ」


 「あぁ、そうする」


 秋山拓巳、高校からのつき合いだが、妙に気が合い、一緒にいることが多い

 俺はともかくとして、秋山はやんちゃな面があるから、結構やっかいごとにも巻き込まれたりしたが、それでも俺は秋山を嫌いにならなかったし、俺も色々あって腐ったりしたときも、すぐに立ち直らせてくれたりもした

 もしだ、そんな親友との殺し合いなんてことになれば……


 「おい、瀧上。俺を殺す気か? 眼が恐い」


 「あ? ……そうなるかもな」


 「いっ!? マジ?」


 「嘘だ」


 嘘ですむと祈るよ。こんなふざけたゲームは俺の夢だけの話であると祈っているさ


 「マジ焦ったぜ」


 「はいはい、ふざけるのはいいから教室行こうぜ」


 「ふざけたのお前じゃないの?」


 無視

 ちなみにこの話題を作ったのは秋山、お前の「俺を殺す気か?」という発言だぞ






 2−Bが俺と秋山の教室だ

 早いとは言えない時間帯なので、既に生徒は多い。だが、変な空気だ。なにか良くない空気だ


 「何かあったか?」


 「さぁ、喧嘩とかそんなんかな?」


 秋山の言う喧嘩、それぐらいだったらいいな、と思う。なぜだか嫌な感じだ

 騒ぎ方がおかしい。まるで、恐怖しているような


 「お、おい瀧上! その頭どうしたんだよ?」


 クラスの男子が1人、凄い顔で聞いてくる

 どうも良くないことがあって、俺も被害者なんじゃないか、という予測からだろうな。意味はない、ことはない包帯だが、巻いてるだけと言うのも変だし、事情を説明するのも無い


 「転んだ」


 「な、なんだ。そ、そうだ。秋山も知ってるか?」


 「「何を?」」


 俺と秋山は同時に聞いた


 「通り魔だよ! 今日の朝で無差別に4人殺られてる」


 「通り魔ぁ!? なんだよそれ? 瀧上知ってた?」


 「いや、知らん」


 まさか、な……

 そもそもゲームがいつ始まったかなんて分からない。この事件とゲームが関係あるなんて事があるわけが……


 ――期間は130日

 あれが俺だけのタイムリミットである確率は低い。もしゲームが実際にあるのなら、スタートは今日か……

 夢の中でのルール説明だと体のどこか一部にマークだったな、つまり自分で確認できない位置であることもあり得る。そうだった場合、気付かないで外に出てしまう。俺はマークを見るまでゲームのことをどうでも良いと思っていたしな……

 最悪のパターンは自分で気付かないで、他人からすぐに見える、首とかにマークが付いていた奴だな。そんな奴らが4人殺されていたとしたら……


 そいつはマークを4個持っていることになる、少なくとも俺が0だから、このまま行けば……




 タイムリミットの130日が終わるときに、俺は消えるわけか

 みんながみんな誰も殺さないなんて甘いか、誰だって生きたいもんな……

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