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気がつけば僕は青い空を見上げていた・・・と思いきや青空は下にもあった。
どうやら僕は宙に浮いているみたいだ。いやそれとも見えない床があるのだろうか?けど足元に何の感触も感じないから違うみたいだ。
ちょっと考えてから、これが覚醒夢ってものなのかぁ。夢ってものはこんなにリアルなものだったんだなぁ、と感心してみる。わざとらしく首を縦に振ったりなんかして。
すると前のほうからヒュウウと小さな風を感じた。気持ち良いし何故だかとても清清しい気分。このまま風に乗ってどこまでもいけそうな気がする。
思いつつ周りを見渡す。上も右も左も下もとても青い。手を鳥のように羽ばたかせてみるが、鳥のように飛んだりはしなかった。少し残念だ。僕はそれからひとしきり体を動かしてこの気分のよさを表現しようとしたが、そこは夢の理不尽なところ、足だけはは妙に硬く全く動かなかった。
しかしそんな浮ついた気分に浸っていられるのも長くは続かなかった。この何も無い広大な空間に一人ぽつんと居ることに不安を覚え始めたのだ。ああ、寂しい。こんな夢早く終わってくれ、今まで清清しく感じていた風がとても寒々しく思えてきた。心を冷やされている思いだ。
早くここからいなくなりたい。暖かい場所へ行きたい。そんな衝動に突き動かされ体を強く前へと傾ける。そうすれば前へ進める気がしたから。
しかしそんな思いも叶わず、僕の体は動かなかった。駄目だ、パニックが起きそうだどうすりゃ良いよし落ち着こうそうだ
畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生!!ふっざけんなこんにゃろう!ああああっ!!!ああっ!!
気が狂ったふりをして気分を落ち着かせてみる。だめだ。ただ疲れただけだ。本気で涙出そうだううううう・・・。
と、そんな人に見られでもしたら一瞬で正気に戻りそうな(まぁそれを望んでいたのだけど)奇行を演じていると、目の前が徐々に白くなっていくことに気づいた。
何だろう、さっきまで憎たらしいほどの青だった空間に白いインクが染みていくかのように白が広がっていく。
それは何故か心が奪われるかのような美しさを感じさせる光景で、今の今まで心を蝕んでいた不安や寂しさをあっという間に忘れさせてくれた。
そしてその白は徐々に輪郭を持ち始めた。僕がその輪郭が何の形であるかに気づくのにさほどの時間は要らなかった。
門だ。それも驚くほど巨大だ、3階建てのアパートほどは・・・・・いや違う、よく見るとそこまでの大きさはなかった。おそらくは所詮夢だし遠近感がはっきりとしなかったんだ。大きさは普通の百貨手の出入り口ほどかな。
そんな考えを巡らせていると、目の前で起きていたある種神々しいといえる変化は終わり、僕の前には門だけが立っている。いや建っている。
「・・・・・これ何?」
当然の疑問をなんとなく口に出して言ってみる。
「門ですよ」
!!
なんと返事が返ってきた!声はすぐ後ろから聞こえてきた。咄嗟に僕は後ろを振り向いた。あれ足動く。
後ろには白い服を着た青年が立っていた。髪を短く切り揃えていて清潔感があふれている。
「あ・・・」
話しかけようとした瞬間、彼は僕を凍らせる一言を放った・・・・・。
「ようこそ、天国へ」