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空想姉弟マナ&ウラ(前編)

「双子」

カッコよく言うとジェミニ。


双子とは非常に扱いやすい設定である。

神話なら、ローマ建国神話のロムルスとレムスのように育ちの違う二人が協力しあい、しかし後に殺し合う相克(そうこく)の関係にしたり。


ギリシャ神話のラノベ主人公並に万能野郎なアポロンとアルテミスみたいに、相反する能力でありながらそこそこ良好な異性姉弟(ローマ神話ではアルテミスを妹とする説もある)にしたり。


余談だが、アルテミスの恋路を邪魔すべくアポロンは奸計(かんけい)をつくして彼女を騙し、アルテミスは気付かずに自ら想い人を殺してしまう話がある。

シスコンこじらせたアポロンまじ外道。


最近の物語でも、血の繋がりの濃さゆえにお互いの行動が手に取るようにわかったり、又は胎内で片方が死に、人格のみがもう片方に移って二重人格になったり。


と上げればキリが無いほど様々な設定が存在する双子。神話や昔話では重要なファクターを務める事があるので中々侮れない。


今回の話しは今まで名前だけしつこく出てたのに大した出番のなかった双子の姉弟マナとウラが主人公です。

時系列的には七話の直後。


――――――――――――――――――――


坂嶺市、既成都市区域の京都市から山二つ超えた先にある人口約九万人の街だ。


その坂嶺市にある市立天戸高校、畳の香りが心を落ち着かせ、更に二人しかいない静かな将棋部の部室にて、篠本マナは図書室で見つけた古い詰将棋の本に興じていた。


「村の名前より街の名前を先に明かすのってどうなのかしら」


「何言ってるのよウラ」


マナは詰将棋の問題通りに、目前にある盤上の駒を動かす手を止める。

視線の先には、座布団の山を崩してリクライニングチェアのように利用している男子生徒がいた。


彼の名は篠本ウラ、身長が高く手足がスラリと細くて長い。スッキリした小顔で肌がキメ細かい中性的な外見をしている。


生徒会に所属しており役職は書記、同時に演劇部にも入っている。

最近のトレンドはネイルサロンらしい。


「ていうか何でウラがここにいるの? ウラは部外者でしょ」


「せっかくのデートがポシャって凹んでる姉さんを慰めるために決まってるじゃないの〜」


「余計なお世話だよ! そ、それにデデデートじゃないから、ウラとアヴィーさんがいるんだから」


「あらやだ、ツンデレ気質の姉さん可愛いわぁ昔の素直な姉さんも好きだけどね」


「ウラは昔の物静かな方が百倍いいわ」


「もう姉さんのいけずぅ」


マナとウラは双子である。二人は坂嶺市の隣の村に住んでいる。

最近家の隣にある森に幼馴染みが帰ってきた。


幼馴染みの名前は桧山椋一、マナの初恋相手で現在再燃しかけてる相手だ。


「授業は午前で終わったし、部活も自由なんだからお兄さんの御見舞に行ったらどうなのかしら?」


デートもとい椋一との遊びの約束は椋一自身が風邪をひいた事で中止になった。

マナも授業が終わればすぐ御見舞に行こうと考えていた。

だが授業が終わると同時にふと冷静になってしまった。


「いや、でもさ、男の人の家だよ。部屋に入るんだよ! あたしそういうの初めてだから緊張しちゃうよ!」


考えただけで顔が熱くなる。いや別に何か変な事しようとかされる事を期待してるわけではないのだが。


「やだ姉さんったら初心すぎぃ! そもそも静香さんの家なんだから今更じゃないの」


「でも今はお兄さんの家だもん!」


「もう姉さんったら、でも本格的に御見舞に行った方がいいわよ。さっきお兄さんからラインの通知がきたのだけど」


「ちょっと確認してみる」


残念ながらスマホは授業中に充電がきれていた。ゆえに部室のコンセントを使って充電していた。

電源を入れて起動させる。充電は四十パーセントまで回復している。


アプリを起動して履歴を確認、椋一のトーク欄を見てみるとそこには――


『アヴィーにゴキブリ食わされた。助けて』


「…………どういう状況!?」


急いで部室を出た。


――――――――――――――――――――


マナが椋一と再会したのは今から一週間程前、その日は学校が休みで朝からリビングのソファでダラダラと漫画雑誌を読んでいた。


「もう、パジャマくらい着替えなさいよ姉さん。それにズボンとはいえ女の子がそんなに股を開くもんじゃありません」


「いいじゃんこのままで、どうせ誰も来ないんだから。来ても馴染みのおじさんおばさんくらいよ」


マナは片足で足元に落ちているブランケットを器用に掴むと、それをまた器用にお腹に掛けた。

少し冷えてきた。


ウラはそんなだらしの無い姉に辟易としつつ洗濯物を外に干すべく庭に出た。


「あら? まあいらっしゃい」


庭に出た直後、ウラが何かに気付いて玄関に向かった。

誰か来たのだろう、郵便か宅配か、そういえばいつもヤクルトを届けてくれる吉村のおばちゃんが来ていないな。


「姉さーん! ちょっとこっちにいらっしゃいな」


ウラが呼んでいる。めんどくさい。


「もう姉さん! しょうがないわねぇ、こっちに来て頂戴お兄さん」


ん? おにいさん? 聞き慣れ無い名前だ。尾日伊(おにい)さんて書くのかな。


とそんな事を考えている間に、ウラが縁側に姿を現せた。遅れて見慣れない青年が現れる。


「どちら様?」


「あら姉さんわからないの? お兄さんよ」


「へ? お兄さん?」


自分に兄はいない筈、オネェになった弟はいるが。お兄さんと言える人なんて……まさか、桧山椋一?


「えっと、桧山椋一だけど覚えてるかな? 昔一緒に遊んだ事あるんだけど」


もちろん覚えている。別れ際に結婚してと連呼した事は今や黒歴史と化して忘れられない思い出となっている。


「お、おおおおおお兄さん!? 何で! 何でここに!」


瞬間自分がパジャマである事を思い出して羞恥に悶える。慌ててブランケットで体を隠すが時既に遅し、バッチリ見られた。


「大丈夫大丈夫、俺寝巻き姿でも気にしないから」


「あたしが気にするの!」


「まあ姉さんの自業自得だからお兄さんはあまり気にしなくていいわよ」


確かにその通りだけど、何か悔しい。

それにしてもお兄さんは随分変わった。背も高くなったし、大人っぽくなった。うん、格好いい!


「あぁそう、ところでさ神社までどう行くか教えてくれるか? すっかり忘れちまってさ」


「神社なら村役場をぐるっと回って裏手からいけるわよ」


「おお、ありがとう助かったよ。じゃあな」


「あらもう行くの? 上がっていきなさいよ」


「いや、河童が待ってるから行くよ」


そう言うと椋一は、やや駆け足でその場を走り去った。


「河童って妖怪の河童かしら?」


「さあ? あのさウラ、後で一緒に服買いに行かない?」


「いいわよ」


置換のやり方がわからない……

サブタイの元ネタは二十代ホイホイの玩具アニメ

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