92 教皇の告白
「さて、何処から話すべきですかね……」
紅茶を飲みカップを置いたガーベラ教皇
老婆の神官……そうとしか見えないこの女性が精霊?
「まずはガーベラの……いや、私のことから話しましょうか」
真面目な顔してるところ、申し訳ない
ブラジャーはしまってください……話に集中出来ませんよ
「私が生まれたのは300年前でしょうか……疫病から民を助けた英雄の話を聞いたことがありますか?あの方が私の父、それからずっとここに居ます」
あの俺の前に精霊化させたっていう人か
確かに言ってたな……だが300年も同じ人が教皇だなんて周りが解りそうだがなぁ
「ふふふ、この姿は仮の姿……父の一族と私が交互に教皇をしておりますのじゃ。バレはしませんわい」
カッと老婆の身体が光る
変身していたのか!本来は美少女的なフラグきたか!?
光が消えてそれが目の前に現れる
「これがガーベラの本来の姿です……どうじゃ?驚きましたかのう?」
「これは……」
「…………」
(ほあぁぁぁぁ…………)
目の前に冷蔵庫が現れた
身長?180cmくらいで色白だ……
ドアが2つのシンプルな作りの冷蔵庫だ……
それがドアをパタパタさせながら喋る様はまさに狂気を感じる
「スリーサイズは200cm200cm200cmのナイスバディですじゃ」
やかましいわ!誰だよそんなネタ仕込んだのは!
…………え?
「スリーサイズ?まさか…………父とは…………」
「気が付きましたか?父は異世界人……日本人です」
まさかここで日本人が出てくるのか……
冷蔵庫はパタパタさせながら続ける
ベアト、しっかりしろ!目の焦点が合ってないぞ
「ふぅ、素の口調で話しますね。疲れちゃった…………それでね、父様が私を作ってくれて精霊になったの。楽しかったなぁ、父様が私を担いで旅をしていろんなところに行ったりして!」
口をパクパクさせるベアトに治療魔法をかける
冷蔵庫はドアを一層パタパタさせながら喋る
トトは動じないね……上に乗るのはやめなさい
「でね?薬や飲み物を入れて私が冷やすと『美味しいね、凄いね』って父様が喜んでくれたの!そのうち母様が出来て、子供が出来て遊んであげたりして!本当に楽しかったの!……でも、父様は死んじゃった…………」
若干元気がなくなる冷蔵庫
いや、冷蔵庫が元気かそうでないかは知らないけどさ……
「父様が死んじゃう前に言ったの。『子供達が幸せに生きていけるように助けてあげて』って。だからガーベラはずっとここで父様の子供達を守るの!」
…………なるほどな
日本人の最後の願いだったのか…………
「そしたら日本人が居るって聞いて、精霊が生まれたって聞いて嬉しかったの!父様と同じ日本人なら助けてあげるって決めたの!」
フシューっと冷気を吹き出しながら冷蔵庫が熱く語る
「だから仲良くしたいの!だからあの子をゼスト公爵のところに行かせたの。あの子は強い子だから、一人で大丈夫なの!」
「あの子?あのシスターですか?」
完全に白目をむいたベアトをソファーに寝かせて尋ねた
「そうなの。あの子は……ちょっと父様に似すぎてアレだけど強いの!仲良くしてあげて欲しいの。私達とも仲良くして欲しいの」
「!?あのシスターは……あなたの父の子孫なんですか?」
「そうなの、次の教皇なの。仲良くしてあげてね?」
…………大丈夫なんだろうかライラック聖教国
「ええ、お世話になってますし疎遠にはしませんよ」
冷蔵庫はバタバタドアを動かし笑って?いた
「別に結婚とかじゃないの、友達みたいに仲良くって意味なの。心配しなくて大丈夫なの!」
「な、なるほど」
(お父さん、ガーベラは嘘つかないですよ。私達とお友達になりたいんですよ)
冷蔵庫の上に乗るトトがニッコリしながら教えてくれる
トトが大丈夫って言うなら大丈夫なのかな……
冷蔵庫と友達って、俺は何なんだろうか……
「で、では……よろしくお願いいたします」
バタバタバタバタと激しく動かす冷蔵庫
「やったの!嬉しいの、仲良くしようね。ジュース飲む?」
「…………いただきます」
(トトもトトも!)
冷蔵庫から出したジュースは美味かった……何故か負けた気がしたが
その後、復活したベアトも会話に加わり楽しい?お茶会は続いている
「まあ、初めて食べましたが美味しいですわ……ぷりん?ですか」
「プリンは父様が好きで、いっつも入ってたの」
(トトはおかわりしたいです!)
冷蔵庫と盛り上がる女性組を見ながら深く考えないようにした
ここは異世界……交換日記が精霊になるんだ、冷蔵庫も精霊になっても不思議じゃない
そう暗示をかける
二人が4つのプリンを平らげた頃、冷蔵庫が言い出した
「あ、守護者の説明するの忘れてたの」
そうだ、守護者だよ
すっかり忘れてたわ……冷蔵庫のインパクトが強すぎた
姿勢をただした俺達にゴウンゴウン唸る冷蔵庫が語る
トト、閉めなさいね?その音はドア開けすぎなんだよ
「守護者の説明は、後にするの。もう少ししたら皆が会いに来るからその時に聞くといいの!」
…………皆が会いに来る?それはいったいどういう事だ?
俺がそう聞こうとしたとき、部屋のドアがノックされる
再び光り、老婆になった冷蔵庫が許可を出すと神官服の女性が入って来た
「お話し中申し訳ありません、そろそろお時間でございます」
「もうか……仕方ない、また後で時間を作ろう。済まぬが今日はここまでじゃな」
教皇だから忙しいのだろうな、大人しく俺達は部屋を出た
神官に案内された部屋で暫く滞在する事になった
俺達もまだ話したいし、大聖堂に宿泊なんてなかなか出来ないからラッキーだな
部下達も側に滞在出来るように手配されているし問題ない
まずは大聖堂内をゆっくり観光するとしよう
「しかし、まさかの出来事だったね」
「ええ、うっかり喋らないように注意しませんとね」
(トトはナイショに出来ますよ!)
対外的には極秘扱いだからな、注意しないと
そんな話をしながらくつろいでいると神官が青い顔でやって来た
「申し訳ありません、メイド部隊の方々が聖騎士団と模擬戦を行うと……」
「…………は?」
脳筋対脳筋の戦いが始まったらしい
…………新婚旅行ってなんだっけ…………