表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第二章 帝国の剣
84/218

83 骨休めに

「そうだ、海に行こう」



帝都から帰り、クタクタの頭で出てきたアイデアがこれである


「閣下、今なら仕事も無いし大丈夫ですニャ」

「閣下、護衛の黒騎士達も大丈夫です」

「婿殿、私は時間有るよ?」


「師匠は駄目です……」


ベアトとトトだけのつもりだったよ……行くのかよお前らも

師匠、睨んでも駄目です



ガタゴトと馬車に揺られながら漁村に向かう

ハーマンの仕事ぶりも見たいしな

たまには休養が無いと身体が持たないよ


帝都では散々黒い皇族を見せられたからな……

いや、やめよう……思い出すと頭が痛くなる……

ツバキ皇女も早く忘れたいしな


あれは……うん、凄いわ……

嫁にしたら胃に穴が開くよ……



「どうしました?大丈夫ですかゼスト様?」

(お父さん、疲れてるなら寝ますか?)


心配そうに覗き込まれていた


「ありがとう。大丈夫だよ」


本当にこの二人は優しいよな、荒んだ心が癒されるよ

ほっこりしながら頭を撫でる


「!盗賊だーー!!」

「囲め囲め!」

「やれい!ブチ殺せ!」


……メイド部隊は今日も元気だな……

あれでほとんど結婚が決まったんだよな…………黒騎士と


脳筋同士の子供とか、脳筋しか産まれそうも無い

我が領地は大丈夫なんだろうか?

カタリナだけじゃなくて文官も増やさないと、モヒカンがぞろぞろ歩く領地になりかねない



漁村に着くと以前とはまるで違っていた


しっかりと村の回りには柵が有り、住居も立派なものだ

海岸には桟橋が有り、港と言って良いだろう

これはハーマン苦労しただろうなぁ


「ゼスト公爵閣下、ご無沙汰しております」

「おおハーマン、良くやってくれた。素晴らしいじゃないか」


照れるハーマンだが、誇らしげでもある

少しの時間で良くやってくれた……これならかなりの収入が有るだろうな

そのうちハーマンも貴族になってもらうか……



「ささ、歓迎の宴の準備が整っております」


村の広場に用意された宴会場

豪華では無いが様々な魚料理が並ぶ心のこもったものだ


「皆の気持ち嬉しく思う、今日は存分に楽しもう!」



俺が挨拶をして宴が始まる


「カタリナ?久しぶり!」

「ニャ?みんな!?久しぶりニャ!」

「では、わたしの一発芸を……」

「はっはっは、わたしもやるぞ!」


そんな兵士達のドンチャン騒ぎを聞きながらゆっくり飲む

さすがに公爵が騒いでたら不味いからな


(お父さん、あのですねぇ……ふふっ)

「ん?どうしたんだいトト」


肩に座ったトトがにこやかに言う


(陛下のおじさんとかに、お父さん怒ってたでしょ?)

「……そうだね、面白くはなかったね」


トトには隠せないよな……


(だからね、ポイッてしておきました!)



……………………え?


「トトトトトト、トト?何をしたって?」

(おじさんの髪の毛ポイッてしておいた!!)



髪の毛を……ポイッ?


(おじさんは髪の毛を乗せてるんだよ?だからポイッしたの!)



陛下……ズラだったのかよ……若いのに……


「トト、それはナイショだからね?わかったかい?」

(はい!お父さんとお約束です!)


そう言って頭にグリグリすりついて来る

そうかそうか、ズラでしたか……


……証拠は残らないな、なら問題点無いな

でもこの世界ではズラは貴重品だから大変だろうに

…………良くやってくれたトト


「あら、トトと話していたんですねゼスト様」

「やあベアト、楽しんでるかい?」


メイド部隊に付き添われてやって来た

なかなかフランクな宴には出ないベアトには珍しいのだろう

あちこち見て回っていたようだ


「カタリナが喜んでいました、久しぶりに友人に会えたと」

「なら良かったよ……無理させてたからね。会わせてやりたかったんだよ」


「ゼスト様もです……無理してます!」


プクーと膨れっ面のベアト

トトは何かを察して離れていく


「顔を見れば解ります……聞きました、今回の事」

「そうか……」


「わたしの為に……ですか?」

「それも有るけど、私の為にだよ。ベアト以外必要無いし……貴族だからね」


「……お祖父様がよく言っていましたわ『貴族だからね』って」

「…………」


「でも心配くらいはさせてください……ゼスト様のつ、妻ですから……」

「そうだね、ありがとうベアト」


頭を撫でながらベアトに教えておく



「辺境伯から伝言が有るんだよベアト」

「お祖父様から?」



「ツバキ皇女殿下が養子として公爵領に来る、辺境伯が見届け役になるから公爵家の養子として恥ずかしく……」

「ゼスト様」


「……はい」


「花嫁修業ですから、指導は必要ですわね……うふふ……ウフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ」

(ツバキ!?来るんですね!良かった【お話】が有ったんです!)





真っ黒なオーラを纏う二人には逆らえない

俺には『はい』か『解りました』としか言えないのだ


この日、漁村の港には数百匹の魚が打ち上げられていた…………

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ