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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第二章 帝国の剣
83/218

82 皇族の企み

珍しくシリアスが続きます

注意してくださいませ

「早かったのぅ婿殿、手は打ったか?」



ポンコツシスターに説教してもらった俺は今、辺境伯領に居た

どうしても確認しないといけない事が有るからな


「私が来るのは予想の範囲内ですか……一応手はこれです」


辺境伯に見せたのはシスターの説教の一部を書き起こし司祭の祝福……魔法の印鑑みたいな物だな

それが入った羊皮紙だ


「ほぅ、説教か……ふぉふぉ、これならどちらにでも使えるのぅ……」

「ええ、それで皇帝陛下の腹は?」

「うむ、エルフの王子はボンクラじゃな……だから結婚させたかろうな」


やっぱりか……

羊皮紙を置いて辺境伯は続ける


「婿殿、ツバキ皇女が裏切った……と、怒るかのぅ?」


探るような目だな……


「いいえ、元から政略結婚です。あの皇女……いえ皇族は元からそうでなければ駄目なんでしょうね。利益が有るから私にも頭を下げて懐柔しようとした」

「……それが解っているなら良い。良いか?決して感情で皇族が動くと思うな、国の頂点とは綺麗事だけでは立てぬ。家族以外の貴族も信頼するなよ?信用はしてやるが良い、だが完全に心は開くな」


真っ直ぐ俺の目を見ながら辺境伯は続ける


「婿殿にはベアトを預けた、守るために貴族で居るなら清濁併せ呑め。貴族ならばな……異世界人には厳しいかも知れんがのぅ」

「……覚悟は決めました」


「ならば良い。陛下はエルフの国を中から取り込むつもりじゃな、あんなボンクラでも王太子じゃからな。正室に皇女を入れて子供が次の次の王になる……そんなところじゃ」


「ならば、私がすべき事は……」


「うむ、上手く婚約を解消する事じゃな……その上で……」

「ツバキ皇女を養子にして王子と結婚させる……ですか?」


ニタァ


ひっ!?だから怖いってば……


「そうじゃ、皇女のまま嫁いでは困る。エルフの血を引いた皇族なぞいつ陛下に逆らうか解らんからのぅ」

「あくまでも臣籍で……ですね」


ゆっくりと紅茶を飲んだ辺境伯

俺も飲もう……喉がカラカラだ……



「そうじゃな、臣籍で嫁げば我が帝国の継承権が無いから一方的に干渉出来る。精霊化を成した帝国の剣の娘としてなら文句無しよ、両国の架け橋に精霊のご加護を願って……とな」

「後は私の……婚約を解消する理由と貴族達への理由ですかね」


「うむ、公爵家として他の相手に求婚されたから解消しましたとは言えぬ、まあ神のご意思なら仕方ないのぅ……精霊様も認めるんじゃろ?」


肩に居るトトに笑いかける

はは、辺境伯にはバレバレだな……


「はい、これならば大丈夫でしょうか?」


「ふぉふぉ、婿殿よ…………今なら陛下も少しは信用しとるからな、満点じゃよ」


そう言って笑う辺境伯は本当に怖かった……

トト、大丈夫だからポイッしようとしないの!






帝都の謁見の間

陛下と貴族達の前で羊皮紙を読み上げる


『ゼスト公爵閣下とツバキ皇女殿下のご婚約について説教いたします。川の水が海に流れ込み、命を育むように願う事でしょう。林の木々には光が必要なのです、決して岩を穿つようではいけません。何故ならばそれが神のご意志なのです!』


うん、意味が解らないよ……でも……



「この説教はまさに神のご意志。我が帝国は辺境伯領の山々から水の恵みを受けており、帝都は水。そして海の向こうの林……つまりエルフの国に嫁いで光の如く民を照らせとのご意志」


うんうんと頷くトト


「岩とは辺境伯家で私は辺境伯家に縁が有り、そこを穿つ……つまりツバキ皇女殿下が私に嫁ぐのは、駄目だとの意味です」


満面の笑みのトトがコクコクする


「神のご意志を精霊も認めております。ならば私は婚約を解消しツバキ皇女殿下がエルフの国に嫁ぐのを神のご意志として受け入れましょう」


「確かに司祭が認めた物だな……神と精霊の思し召しならば是非も無い。だが公爵には世話をかけたな」

「滅相もありません」


「そうだ、ツバキを公爵の養子にしてから嫁がせる事でどうかな?」

「御意、精霊のご加護で両国の架け橋になり、我が公爵家にも名誉な事。皇帝陛下のご配慮にお礼を申し上げます」




はい、打ち合わせ有りの茶番劇です

説教の意訳なんて適当だけどトトが認めるならそうなんだよ

精霊が認めるなら仕方ないね


ツバキ皇女は……うん、皇族だったよ……腹黒いわアレは

陛下は俺と縁が出来れば良いのだ

とりあえずツバキ皇女が養子になれば縁が出来る


ついでにエルフの国に俺との繋がりが出来るが、ツバキ皇女は俺の言葉じゃ動かない

エルフと共に帝国に反乱を……なんて無理だわ


陛下もこの辺で落としどころだと納得したんだ

帝国の利益の為に協力する姿勢を見せているから、これ以上は刺激したくないってところだな


…………いや、試されたのかな?それも有るだろうな

帝国の利益の為に働くかどうか

動くなら良し、動かないならツバキ皇女が側室にか……

まったく何処まで考えてるんだよ皇族は


まあ、ベアトにちょっかいを出さなければ帝国の為に働くと判断されたんだろう

実際にその通りだし


下手に俺に嫁がせてベアトと揉めるより、ある程度の繋がりで大丈夫だと考えたのかな?


政治ってやつは……まったく面倒な事で…………


俺には皇族は無理だわ…………

しばらくこんなやり取りはしたくないよ…………




こうしてツバキ皇女は俺の養子としてエルフの国に嫁いで行く事になった

俺は早く帰りたいわ……

次回よりシリアスが逃げ出します

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