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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第二章 帝国の剣
68/218

67 戦功第一の褒美に…

「諸君、良く集まってくれた」



静まり返る砦の一角、普段は訓練場所として使われているそこに公爵軍の幹部達が集まっていた


戦後処理は辺境伯軍がしてくれている

俺達は強行軍と連戦が有った為に免除されているから、本来であればゆっくり出来たのだが…



「先の戦いでの戦功第一が決まった……メディア隊長だ」


ザワッ!


皆がざわめきたつ



「望むのは…………婿養子だ」



誰も口を開かない……いや、開けないのだ


メディアはメイド部隊の隊長だけあってメイドとしても一流だ

掃除、洗濯、料理、縫い物と軽々こなす

更に顔だって可愛らしい

妹系の愛くるしい薄茶色の柔らかそうな癖毛の美少女と言って良い


見かけは良いのだ……見かけは……


いや、性格も良いのだ

面倒見が良く部下達にも慕われている……隊長として


貴族だがミスしたり失礼が有っても怒らない

やんわりたしなめるタイプでファンも多い……隊長として



そう、隊長として慕われているのだ



「閣下、誰を生け贄…婿養子にするのですか?」


アルバートは余裕の笑みだ

お前、結婚してるからな……関係無いからって嬉しそうに…


「それを今から決めるのだ……お前達、貴族になれるぞ?子爵だ、誰か居ないのか?」




うつむいて誰も目を合わせない……




「貴様ら、何が気に入らないんだ?美少女の外見で気立ても良い。しかも子爵家だぞ?良いじゃないか、誰か婿養子に行け」



アルバートがプルプル肩を震わせる


「閣下、やはりアレが原因かと…」



だよな、みんな知ってるのかよ

知らない奴に任せようとしたのに……



メディアの欠点……アレさえ無ければ完璧なんだがな……



「閣下……私が立候補したい」



ザワザワザワザワ!?



「だ、誰だ?前に、前に出てこい!」



騒然とする一同


「誰だあの勇者は」

「神だ……神は居たぞ」

「あ、ありがたや……ありがたや……」

「良かった……俺じゃなくて良かった」



泣くな馬鹿者達め



そして彼が前に出てきた


中肉中背のいかにも男くさい野性的な男、髪は短く揃えたいかにも武人といった外見

歳は20代半ばくらいか…うん、悪くないな



「元冒険者でターセルと申します、閣下」


低い声が渋い

これはメディアが気に入りそうな男だな……でもこんな奴、居たかな?



「ふむ、ターセルか……メディアの婿養子に行けるんだな?」



この際、誰でも構わない

メディアの婿養子になりたい奴など居る訳が無いからな


皆も同じ気持ちなんだろう、誰も異論は挟まないし咎め立てもしない


「はい、ただ……問題が有るのです。そこを閣下にお願いいたしたく……」



馬鹿な話だ


メディアの婿養子になってくれるなら、だいたいの事は許す

余程の事…………でも、許してしまうかもな



「なんだ、言ってみろ。大事な部下の願いだ、私の出来うる限り力になってやるぞ?」


アルバートが明後日の方を見ながら震えている

ああ、大事な部下に押し付けようとしてますよ…………笑い過ぎだ駄犬が


そして、厳しい顔のターセルが願いをまさに絞り出すように告げた





「実は…………私は女なんです……………」






再び静まり返る砦の一角


遠くで門を開けるギギギという音がやけに大きく聞こえてくる



「…………ターセル」


泣きそうな顔しやがって……


「…………はい、閣下」



ゆっくりと彼……ターセルの肩に手を置く


「嘘は言うなよ?鑑定魔法を使う……もう一度言ってみろ」


「私は女なんです!でもっ、でもっメディア嬢が好きなんです」



うん、間違いなく女だ……ターセルは

悲壮な顔で泣き出すターセル



「ターセル……だからなんだ?」

「ターセル、問題無い」


俺とアルバートの声が重なる














「「メディアは男だ。おめでとう!絶対結婚させてやる!」」











喜びに泣き出すターセル……助かった安堵に泣き出す野郎達

メイド部隊も隊長の結婚を祝い泣き出す

俺とアルバートも何故か泣き出す



涙を払いなから空を見上げる

青い空が彼等を……俺達を祝福しているようだった


だが、心の底ではある言葉が浮かんできていた


『俺の軍は何処に向かっているのだろうか……』

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