64 砦の会議・辺境伯家の秘密
「ふぉふぉふぉ、万の敵陣突破を1000騎で突破するとはのぅ。いやいや頼もしいのぅ」
完全にラスボスな笑顔の辺境伯
会議室に移動して作戦会議だ
「しかし、なかなかの演説だったね。兵士達が喜んでいたよ」
……パクりましたよ、すいませんでした
「ガハハハハハ、先頭きって突撃突破とはな!公爵閣下の仕事では無かろうに」
ミシミシ肩がきしむ
はは、養父上お元気過ぎです
一通りからかわれてから本題だ
「戦況はどうなっているんです?」
今や一番爵位が上になった俺が上座だ
やりにくい……
「ソニアとガレフ両団長が暴れたからな、そこに婿殿じゃ。負けはなくなったな」
「ハッキリ言って婿殿が籠る砦や城は落ちないよ、自分の力を軽く見すぎだね」
……師匠も婿殿呼びになるし、やりにくいったら無いな
でもそうかもな
まだまだ魔力は余裕だし、雨あられと固定砲台するか
「ワシとソニアと婿殿が揃えば10万の敵でも落ちぬよ、明日は家族仲良く花火大会じゃな」
「良いですね、ガレフとアルバートに近寄る敵は任せて撃ちまくりますか」
「ガハハハハハ、アルバート!明日は暴れるぞ」
「はっ!片っ端から討ち取ります!」
ガハハハハハ
ハッハッハッハ
ふぉふぉふぉ
……えらいところに援軍に来てしまいました
俺、要らなかったんじゃないの?
笑いあっていた皆がピタリと止まる
ひいっ!
久しぶりに怖いわ!
「ゼスト卿、救援心より感謝する。我が辺境伯家は命の恩は命で返す。もし帝国を敵にしようとも裏切らぬ」
辺境伯が頭を下げ、皆がそれに従う
「やめてください、家族を助けるのは当然です。そこに恩は要りません」
あれ?外したかな…
反応が無いよ、恥ずかしい……
「ふぉふぉふぉ、欲が無いのぅ。まあ今日は疲れたじゃろ、ゆっくり休め」
そう言われたら休むけどさ……やっぱり失敗したのか
皆に挨拶して、トボトボと俺は部屋に向かった
今日は早く寝よう……
俺が眠りに落ちている頃、会議室ではまだまだ話し合いが続いていたのだ
「……しかし、助かりましたな閣下。あのままでは危なかったですからな」
「そうじゃなガレフ、婿殿が来てくれて助かったわい。ベアトを救ってもらい更にこの有り様じゃ……人生とは解らんな……ソニアよ、ワシの遺言に追加じゃ…良く聞け」
「……承ります、養父上」
「ゼスト卿は短期間の圧縮強化訓練に耐え、何を成したか代々伝えよ。辺境伯家は総領娘を救ってもらい、更に窮地には命をかけて一番に駆けつけてくれた……我が領地はあの方に救われた、この恩は忘れるな。それが帝国に弓引く事になり辺境伯家が終ろうともだ。ゼスト卿は魔力が強い、長生きするじゃろうから彼が生きておる限りこの遺言を守らせよ」
「必ずその誓い、末代まで伝えます」
「ふぉふぉふぉ、さすがに書類には出来ぬからな。当主の口伝とせよ、ガレフも聞いたな?ガイウス家が見届け人じゃ……拒否した当主は殺せ。恩知らずが当主では辺境伯領は終わりじゃ」
「はっ!」
「承ります閣下」
「ふぅ……初代陛下に恩を受け今まで遺言を守って来たがのぅ、まさかワシの代で変わるとはな…」
「そうですね、最初の遺言は……帝国の良心を監視せよ、善良な市民や異世界人を虐げるようになったら滅ぼせ。だがそうでなければ忠誠を…でしたね」
「そうじゃ……だから召喚された異世界人を保護したんじゃ…」
「やはり召喚したのは……」
「ふぉふぉ、ターミナル王国の宮廷魔導士じゃろうな。もっとも召喚には成功しても死は確実じゃからな、慌てて攻めて来たんじゃろうな」
「なるほど……しかし義父上、もし……もし、婿殿が善良な市民や異世界人を虐げた場合はいかがしますか?」
「ガハハハハハ、心配無いわ。あの圧縮強化訓練に耐える根性が有るんだ、生き残らせる為に無茶させたが良く耐えた。まあ万が一その時は私が人知れず始末するわ、辺境伯家は知らぬ事としてな。それが断罪を任されたガイウス家だ」
「しかしのぅ」
「ですが……」
「だがなぁ」
「「「あやつは優しいから心配は無いな」」」
「しかも……」
「そして……」
「それに……」
「「「意外と小心者だから心配は無いな」」」
「それにしてはあの訓練に耐えるんじゃから、解らん婿殿じゃ」
「まったくですな」
「才能と根性ですなぁ」
小心者だとバレバレでした
でも辺境伯家がやたら義理堅い家だと知るのはまだまだ後の出来事です




