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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第二章 帝国の剣
63/218

62 隣国よりの使者

「よく来てくれたなゼスト、ベアトも元気そうだな」


そう言って笑うのは皇帝陛下だ

何度か顔を出しに来ては居るのだが、最近は遊びに来た親戚のおっさんの雰囲気だ


俺は公爵だし未来の娘の結婚相手だ

わざわざ波風は立てないし、敵対したら面倒過ぎるだろう

何より味方に取り込む為に娘……ツバキ皇女と婚約させたのだからな


無条件に信頼は出来ないが信用は出来る


「しかし、精霊の雫は旨いな」


…………それが仲良くしてる理由じゃないですよね?陛下



一通り挨拶と雑談をして本題に入る

今、俺達が居るのは居住区だ

気楽に話せるとは言え限度は有るんだよ、貴族の面倒過ぎるお約束だ



「実はな、隣のターミナル王国より使者が来る予定なんだが…ゼストに同席して欲しいのだ」


ターミナル王国

辺境伯領の隣の国で人族至上主義に傾いている胡散臭い国だ

当初は辺境伯が内部撹乱を予定していたが、今は違う

『きっかけが有れば開戦すべし』

国内の貴族達もこの調子なのだ


なかなか平和にとはいかないな……



「内容が予測出来ないのだ、あの国は危ないかもな……まあ来てみなければ解らんし、念のためだな」


険しい表情の陛下と一緒に紅茶をすする


念のため……要は暗殺対策に最高戦力を集めているのだ

もし陛下が殺されても俺がそいつを殺して弔い合戦って流れだろう

まあ、殺されたりしないようにの意味も有るが最悪の想定はしておかないとな



用件が終わればツバキ皇女やナターシャ皇后も加わり雑談タイムだ

ツバキ皇女は相変わらずベアトとトトに遊ばれている


「ベアト姉さま、今日は一緒に寝てくださいますか?」

「ええ、トトちゃんも一緒にね」

(ツバキ、さみしがりだなぁ)



……今日はおあずけだ。アルバートと飲みに行くか


「顔に出てるぞ、新婚は初々しいな」

「あらあら、ゼストったら仕方ない子ね」


お二方、読まないでください

残念じゃありませんよ?ええ、ありませんとも



ベアトとトトを置いて自分の部屋に戻る、宮殿に俺の部屋が用意されているのだ


大人しく寝よう……





そして3日後、問題の使者がやって来た



謁見の間

俺は皇帝陛下の後ろ側に、やや離れて立っている

公爵として、婚約者としての位置だ



やって来たのは痩せ型の男性だ、赤い髪の毛の老人だな

魔力は隠匿されているようだな……それなりの使い手か……


「余がグルン帝国、皇帝である。発言を許す」


顔を伏せたまま口上を述べる使者


「ターミナル王国の伯爵でハーニルと申します、皇帝陛下に拝謁の機会を賜り伏してお礼申し上げます」


「うむ、用件を聞こう」


「はい、我がターミナル王国よりの親書をお渡しすると共に、口上を託されております」


懐から取り出した親書を両手で掲げる


用心の為に俺が使者に近付き親書を受け取る

怪しい魔法はかかってないな、一応鑑定魔法もかけるが異常無い


親書を陛下に手渡すと読み始める




が、見る見る険しい顔になる陛下


これは尋常じゃ無いな

普段なら顔に表情を出さない陛下が、明らかに怒っているのだ


周りの貴族達も異常を察して青い顔をしている




やがて親書から目を離した陛下が口を開いた



「これは本気か?内容を貴公は知っていたのか?」


「そう質問されるであろうと、口上を預かっております」


使者は微動だにしない


「親書に偽りは無い、本日を以て我がターミナル王国はグルン帝国に宣戦布告するものである」


顔を上げて表情を変えずに言いきったな

これは本気だ

となると……




「伝令!緊急伝令!」



バンッと乱暴にドアが開かれ、謁見の間に似つかわしくない傷だらけでボロボロの兵士が転がり込む



「何事だ!無礼者!」

「貴様、陛下の御前になんたる……」

「衛兵!この者を直ちに連れて行け!」


馬鹿が……

状況を判断出来ない文官どもか……



「黙れ!緊急伝令は儀礼を無視して良いのだ、報告をせよ」


俺は既に魔力全開で周囲を威圧しながら剣をアイテムボックスから取り出している

もう宣戦布告がされたのだ、つまり戦時特例が適用されている



「申し上げます、ターミナル王国軍が辺境伯領に襲来!国境の砦にて戦闘開始されております」



言い終わると倒れ込む兵士

辺境伯軍だな、こいつは……見覚えが有る



「なんと…開戦が宣戦布告と同時とは……」

「は、早く軍を派遣しなければ」

「将軍達を集めて……」



「静まれ」



陛下の一言でシーンと静まり返る


まったく、やいのやいの騒いでも仕方ないだろうに



「ゼスト、どう考える」


俺ですか陛下…

仕方ない、時間が惜しいからな


「伝令は戦闘開始と申しました、つまりまだ始まったばかりです。敵軍の兵力は不明ですが、辺境伯領を抜かれた後に戦うのは愚策。精鋭を失えば待っているのは滅亡です、速やかに増援を送り情報を集めながら第2陣で最大兵力を投入して追い返します」



一気にまくし立てる



「増援は私が自領地軍を率いて直ちに向かいます、直轄軍は直ちに帝都に召集し他の領地軍は召集の準備をそれぞれ指示されるのが良いかと」


「解った、それでいこう。直ちに軍の将達を集めろ、領地の貴族達に伝令もだ。文官は物資の補給手段を手配せよ、宰相に一任する……その使者は首にして送り返せ」



陛下の号令で、一気に動き出す



謁見の間を飛び出した俺はアルバートと合流して確認する


「アルバート、戦だ。何人連れて来ている?」


一言でアルバートは状況を理解した

もともとキナ臭かったからな

軍人は謁見の間でも慌てて居なかったたし


「全部で100程です、領地に1000かと」


理解してくれたな

今回はスピードが勝負だから精鋭だけを連れて行く


「先触れを出してすぐに動けるようにしておけ、精鋭だけで良い。残りは補給部隊に回す、辺境伯領までの街道に補給物資を並べ一気に走り抜けるからな」


「はっ!ただちに」











領地まで馬車なら3日、領地を抜けて辺境伯領から国境へ更に8日くらいか……

精鋭だけを連れて行ければ半分以下の日数で着く


5日ならギリギリか……

早ければ早い程、無傷の辺境伯軍と共に戦える

そうなれば簡単には負けない



一刻も早く戦場へ向かう事

それが俺に出来るたった一つの事なのだ

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