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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第一章 帝国黎明期
55/218

54 慣れてしまえば……

異世界のコーヒーを初めて飲んでから3日がたった



俺にとっては驚愕の事実だったのだが、ベアトにとっては……いや

この世界の住人にとっては当たり前の事だったのだ



精霊は神の使いであり、神聖なもの

そして『精霊の雫』と『精霊丸』を恵んでくれる存在

……らしい


文献でそう伝わっているだけで、最近は精霊そのものを見かけないから正確に把握している者は居なかったのだ


まさかおしっことウンチとは知らなかったようだが……




「そろそろゼストは出発か、精霊の雫が飲めなくなるのか……」


そうぼやくのは陛下である

あれ以来、すっかりハマッていた


伝承にある精霊の雫


トトが誕生してすぐにでも聞きたかったが、精霊の機嫌を損ねたら意味は無いからな

仕方なく様子見をしていたらしいのだが、不意に飲まされてしまったのだ


『あの紅茶を探せ』


おしっこinカップ事件の時にそう言って探させたが見付からない

俺達があの場に居たのを思い出し、まさかと思いながら聞いて来たのだと言う


『ゼスト、あの時のカップにあった液体はなんだ?』


鬼の形相だった陛下に土下座したのも良い思い出だ



実際は飲みたくて必死だっただけらしいが…



「本当に残念ね、でもあまり引き留めても仕方ないわ」

「ベアト姉さま、寂しくなります…」


ナターシャ皇后もツバキもハマッていたのだ

そのせいで出発がのびていたんだ


「ツバキは甘えん坊ね、大丈夫よ?またすぐに会えるから」


ベアトにすっかりなついたツバキ皇女

頭を撫でられながらも悲しそうにしていた

まるで親子である


でもベアトにそれを言ってはいけない

『わたくし、そんなに歳上に見えますか?』

と、泣かれたのはつい昨日だ


また土下座するハメになるからな

女心は難しい……



「しばらくは辺境伯家にお世話になりますから、頻繁には無理ですが会いに来ますよ。大事な方ですからね」


フォローをしたつもりだったんだよ





「私、城外にお買い物に行くのなんて初めてですわ!」

「楽しみね、ツバキ。ほら、噴水が見えるわよ?」




何故か馬車でお出かけ中である


確かにお土産を買いに行くと話していたが、皇女様がご一緒するとは予想外過ぎる


『おまえと黒騎士が一緒なら城より安全だから問題無い』


ありがたい陛下のお言葉だ

……ベアトとデートしようかと思ってたんだけどな



まあ初めての街にはしゃいでいるツバキ皇女を見ると、細かい事を気にしても仕方ない気分になる

この子も大事にしてあげたいしな



ガラガラと馬車に揺られて30分程だろうか、目的の店に着いた

この店は最近帝都に出来たのだが品揃えと接客が素晴らしいと評判だそうだ

……黒騎士のデートスポット報告書に書いてありましたから




「ようこそおいでくださいましたツバキ皇女殿下、ゼスト公爵閣下、ベアトリーチェ公爵閣下」


店員がズラリと並ぶ中、挨拶しているのは


「ターニャではないか、あなたの店だったのか」


ニコニコしている初老の女性

以前世話になった服屋の店主、ターニャであった


「え?まあ、ターニャの店だったのね。それなら安心ですわ」


キョトンとするツバキ皇女に説明しながら店内に入る



「洋服店で出来たツテを使って作った店ですのよ、お知らせするのが遅くなって申し訳ございませんでした。本日はどのような物をお求めになりますか?」


そう言って紹介された品揃えはさすがの一言で、酒や食べ物に始まり魔道具に至るまで揃えてある

うん、デパートみたいな品揃えだな


可愛らしい装飾品を見ながらキャイキャイ騒ぐ3人を見ながら、俺はお土産選びだ

トトも向こうだよ?ツバキ皇女の肩に座っている

かわいい妹らしい



お土産は野郎達には酒、女性用に化粧品や服の生地を買った

野郎達は酔えば文句は出ない

だが女性達に変な物を渡したら大変な事になる

それだけは避けたいからな


自分用に魔道具のアイテムボックスと言えば良いのか

沢山物を入れておけるブレスレットを買った


無限には無理だが魔力に応じて入る量が増える最上級品だ

……意外と安いからまとめ買いしたよ

一個金貨1000枚だからな


安いか?

陛下から公爵の準備金として金貨5万枚もらったから、やっぱり安いな


10個程まとめ買いする事にした

用量が増えるのは2個しか無かったが仕方ない

残りは用量固定だが無いよりはマシだろう



ベアト達も良い物を見付けたようで、ニコニコしながら商談中だ


商談と言っても値切りじゃないぞ?

基本的に貴族は言い値で買うからな

値切りなんて平民がする事だから、貴族には相応しくないそうだ


まあ、貴族は金持ってるから還元しないといけないからな


話がそれたな

だから彼女達はデザインの変更や納期を確認しているのだ



イスに座り紅茶を飲み店内を見渡すが、俺達以外には客は居ない

当然だ

皇女殿下に公爵閣下2人が来店中なんだ、貸し切りである


外には皇室の紋章が入っている馬車

その回りには黒騎士がズラリ


それでも入店してくる馬鹿は居ないだろう




ようやく打ち合わせが終わったベアト達と出ようとしたその時に事件が起こる














「貴様!誰に向かって言っているのだ!」
















そんな怒鳴り声が店の外から聞こえて来る


……馬鹿は居たらしい……

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