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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第一章 帝国黎明期
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4 世界の仕組み

マズイ……非常にマズイ……


紅茶の香りで油断した

つい、地球でのクセ……日本でのクセが出た

紅茶のリラクゼーション効果は抜群だな、身をもって証明されたわ……


「トシよ……一つ忠告しておこう」


無表情の老人が語る

目が据わるってこんな感じなんだろうなぁ……と、のんきに思うが足元は震度7である

ガクガクだ


「は、はい。閣下」


「まだこの世界に慣れておらぬお前だ。最初に言質も取られた事じゃ。多少の事は目をつむる」


そこで大きく深呼吸した老人に反応し、俺は震度8になる


「じゃがな、種族を間違う。または種族を差別・軽視する発言は絶対にするな。死にたくなければな」


俺は立ち上がり犬耳美人に誠心誠意謝りたおした

土下座である


「しきたりも解らぬゲスが大変失礼いたしました!あなたを、あなたの種族を貶めるつもりはありませんでした。無知をお許しください」


そこまでしてようやく犬騎士が落ち着いてきた

さっきまでブルブル震えながらフゥフゥ言ってたんだ彼


「どうじゃなアルよ。これで手打ちじゃ。よいな?」


「はっ。閣下のご判断に従います」


犬騎士はアルね

アルか……覚えたぞ


「スゥも解ったな?」


「は、はい。かしこまりました閣下」


メイドさんはスゥか

スゥさんね。釣りは好きなのかなぁ


「やれやれ、最初に許すと言質を取られたからのぅ。だが、次は無いぞトシよ。命は大事にせねばのぅ……」


……え?本当に死ぬピンチだったのか?今の……

余程のタブーなのか種族の話って


「はい。閣下の格別のご配慮に感謝いたします」


老人にも頭を下げる


どれがキルスイッチなのか解らん……

この世界の常識を早く覚えないと命の投げ売りだなこれは

『死因 突っ込み』とか、目もあてられない


スゥさんは一礼して部屋から出ていった

涙目はおさまったみたいだ


「さて、勇者の話じゃったな。なに、簡単な話じゃよ」


紅茶を飲み、薄笑いに戻った老人が続ける


「何も魔王を倒せだの、戦争の矢面にたてだの言わぬ。旗頭になればよいのじゃ」


は、旗頭?


「そもそも魔王なぞ聞いた事も無い。いや、魔物も魔族もおる。しかしお主らの世界で言う魔王と言うものは存在しないし、今までの歴史上居た事も無い。魔族たちは国を造らんでバラバラに好き勝手に暮らしとる。国など王など面倒じゃそうな」


「な、なるほど。好き勝手……ですか」


「うむ。魔物を支配しけしかけるでもなく魔法の使い手として優れた種族、それがここの魔族じゃな。好き勝手と言っても無法者ではないぞ?冒険者をしたり学者になったり、料理屋をしたり宿屋をしたり。まあ、国に溶け込んで国民として自由に生きとる訳じゃ」


なるほどな、対立的な訳ではないと

でも自分の国を持ちたくは無いのかなぁ……


「じゃからこそ、種族の差別は許されないんじゃよ」


もう一度紅茶を飲むと老人は真顔になって言った


「種族を差別したとき、それをした種族はドラゴンと魔族が敵になる。差別をした種族が一握りだけ残されて消されるんじゃよ」


……ん?それって要は……


「断罪者……いや、審判者……ですか?」


「そうとも言えるのぅ……それは言っても大丈夫じゃ。この世界の流儀じゃからな」


なるほどね、昔は有ったんだろうな差別が

それをさせないシステムなのか……


「で、お主の……勇者の仕事じゃがな……」


そうだそれなんだ!ある程度完成してるだろうこの世界のシステム

ドラゴンと魔族が監視するシステムなんだ、勇者の仕事なんか有りそうに無いぞ?


「勇者が喚ばれたのは久しぶりなんじゃよ。記録には有ったがな、実に1000年ぶりの快挙じゃよ」


あ、凄く嫌な予感がしてきたわ


「なに、昔の勇者は差別思想を持つ者達を倒す為に喚ばれたらしいがの。そこまで大それた事をするつもりも無いし、ワシもこの種族差別の無い世界を気に入っておる。壊すつもりは無い」



良かった……1000年前に喚ばれなくて本当に良かった

名も知らぬ勇者さん、ありがとうございました


「ワシが……このグルン帝国の辺境伯ラザトニアが成したいのはな……」


へ、辺境伯?国境の重要な領地を持つ大貴族様じゃないですか、ラザトニアさん……





「王権の簒奪じゃよ」







今度こそ、俺は死ぬんだと強く確信した

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[良い点] 前話の「猫かよ!」 やっぱり面白い。  「王権の簒奪」 大それたことじゃないって。 やっぱ好き。面白い。
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