表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第一章 帝国黎明期
48/218

47 婚約者を狙う男

「私の婚約者に何か用件が有るのか?」


そう言って近付き手を払う

ベアトを抱き寄せて頭を撫でた


よしよし、大丈夫だったかい?


「婚約者だと?ふんっ、貴様のような男にはそのお嬢さんはもったいないな。私に譲るならそうだな…金貨20枚をくれてやる、さあ彼女を渡したまえ」


偉そうにふんぞり返る中肉中背の若い男

服はそれなりの仕立ての真新しい黒い服

金貨1枚で10万円相当だから、200万円か…舐めてるな


無視して頭を撫でる

ベアトの髪は細くて柔らかい


(お父さん、アレは何ですか?敵ですか?)


トトが俺の肩から男を睨む

…なかなかの魔力だ、これ義母上くらいの魔力は有るぞ


「トト、やめなさい。彼らの仕事だからな」


そう言ってトトを止める

ポイッで済めば良いが、この辺が更地になるような魔力で威嚇するのはやめなさいね

怖いから




俺が何を言っているのか、わからない男がイライラしながら怒鳴る


「おい!早くその女をよこせと言ってるんだ、この私に逆らうのか!この服がわからないのか?」


わかるよ…やっちまったな、お前


フゥフゥいいながら睨む男


その肩をポンポンと、叩く者が居た


「なんだ、何の用だ!私は今、この女を…」



振り返った先には、街の警備兵が居た



そりゃ、白昼堂々と道端で騒いでいたらこうなるよな


「その女性をどうするのかね?」


険しい目付きで男を囲む兵士達

当たり前だ


「しかも、黒い服とは…お前帝国の者じゃないな?」


そうなんだよ

黒い服は辺境伯家専用だ、他の者は黒い衣装はタブーなんだ


黒騎士を許されてる辺境伯家

間違いを避ける為に黒は辺境伯家だけの色になっているんだよ

服や旗などは黒禁止、葬儀は白服が一般的だから問題無いんだ



ああ、例外はトトだな

精霊に人間の決まりを守れとは言えないし、辺境伯家のものみたいな扱いだしな



たまに余所者が黒服を着て騒ぎを起こす事があるらしいが

…まあ、こいつはおしまいだって事だ



「まあ、じっくり詰所で聞かせて貰うさ。おい!連れていけ!」


こうして偽装黒服はドナドナされて行った…

黒服詐欺か…たまに居る馬鹿はどうしようも無いな


やれやれと店内に戻ろうとするが、兵士に呼び止められる



「待ちなさい、君達にも事情を…なるほどな、綺麗なお嬢さんだな」


ニヤニヤしながらベアトを見ている兵士


…またか?



「被害にあったのはお嬢さん…ぜ、ゼスト様!お疲れ様です!!速やかにあの馬鹿を始末してきます!失礼しましたっ」



泣きながら走り去った…なんだろう、胸がチクチクするわ…


疲れたなぁ

あの偽物黒服でストレス解消すれば良かったかな


「あの、ゼスト様…そろそろ恥ずかしいです」


あ、ベアトを抱き寄せていたままだった

ゴメンゴメンと謝る


「お二人さん、新婚さんかい?」

「いやぁ、昼間から凄いな」

「若いモンはこれだから…」


はい、すいませんでした

ひやかされながら、逃げるように店内に飛び込んだ



まあ、店内でも顔真っ赤なベアトにポカポカされて

それを見た店員達に生暖かい目で見られたが気にしないでおく


気にしないでおく


大事な事だからな、2回言っておく



店主が用意した生地は素晴らしいものだった

服は替えたくないとトトが言ったので、下着やパジャマを作って貰う

ベアトもついでに作って貰うらしく相談していた


俺?お茶飲みながらウンウン返事する機械になってたよ



ようやく採寸が終わりデザインが決まり、納品は3日後となって店を出る

トトの着替えはもう貰って有るぞ

小さいからな、針子がパパっと作ってくれた



宮殿に帰ろうかと思ったが、まだ日が高い

せっかくだから街でお茶でも飲もうと店を探す


御者に伝えると、良い店が有ると言う

どうせ帝都などわからない俺だ

そこに向かわせる事にした



案内された店は、綺麗なオープンテラスがあるお洒落なお店だ

女の子が好きそうな感じだな

ベアトは目をキラキラさせている


紅茶とクッキーを頼んで味わう


「おいしいですわ、このクッキー。何が違うのかしら?」


ポリポリクッキーをかじるベアト

リスみたいだ


トトも負けじとクッキーに挑戦する

うん、親子だね君達は


微笑ましい二人を見ながら紅茶を楽しむ

コーヒーが有れば飲みたいと思っていたが、最近はすっかり紅茶党になった

今は日本帰りたいとは思わなくなって来たのと一緒だ

ベアトとトトと…暮らせていければそれで良い



少ししんみりしたな


気分転換に店内を見回す

帝都でも人気だというだけあり、上品な調度品が並べられてセンスが良い

ただ、女性ばかりで若干居心地が悪いがな



あっさり食べきったクッキーを追加して、今度は3人でかじる

トトがこぼした食べカスを払ってやるベアト

すっかり親子である


色々あったが、最後に美味しい紅茶とクッキーで幸せな気分になったな

偽物黒服はぶっ飛ばせなかったのが残念だが…




店を出て馬車はどこかと見回す


そんな俺達の後ろから忍び寄る気配…

また揉め事か……何処の馬鹿だよ……













「美しいお嬢さん、よろしければ私とお食事でもいかがですか?いやいや、警戒するのも解りますがご安心を。確かに私は犬獣人ですが草食系なんですよ、食べたりしません」


ドヤッと、キメポーズなのか額を押さえて上を向いている


















「アルバート、貴様何している」

「アルバート、おすわり」

(あの犬っコロ、ポイッてしますか?)


残念な事に辺境伯軍の身内でした……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ