表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第一章 帝国黎明期
43/218

42 義母にあいさつ

目の前のオネイサンのメイドを見る


黒目黒髪……キリッとしたややキツイイメージの女性…なるほど、お嬢様に……似てますね



震えそうになる身体と声を抑える


「はじめまして…に、なりますかラーミア義母上。ゼストと申します」


なんとか震えないで言えた


「はじめましてゼスト。ふふ、驚いた?」


イタズラが成功したような笑みだ、実際に成功したけどさ…


「まさか義母上がメイドの格好をしてらっしゃるとは…さすがに驚きました」


正直な感想である


「ふふ、ごめんなさいね?お風呂で見たときは驚いたわ。ソニア?殺気を抑えなさい、説明したでしょ?」


そう言って師匠の頭を畳んだ扇ではたく

……大丈夫か?ゴチンって重い音がしたぞ


「実は陛下に頼まれて、あなたを試してたのよ。怒らないでね?」


小首を傾げて上目遣いされた…かわいい仕草だけどおばさ……オネイサンな女性だし義母上だからなぁ


「怒りませんよ義母上」


ニコリと笑いながら予想をぶつける


「私の人間性の試験と貴族として使えるか、帝国に反意が有るかも試しながらですかね?宮廷魔導士…恐らく4席殿ですか義母上は?」


先ほどまでの優しい微笑みを消して、辺境伯そっくりの腹黒い笑みになる


「まあまあ、どうしてそう思うのかしら?」


メイドの雰囲気はまるで無い

辺境伯爵の…大貴族のプレッシャーを放っている


「まず、陛下との密会に同席されていました。これでただのメイドでは無く何等かの繋がりが有ると思いました。次に風呂に居ましたね、風呂係のメイドは固定の筈。しかも陛下との密会に同席出来る程のメイドがやるなど不自然です」


一端紅茶を飲んで間を空ける


「この事から【このメイドは陛下から何か密命を受けて私を試しているのでは?】と、警戒したのです。今の私の状況で試したい事とは何か……突然現れた謎の男、しかも精霊化を成し遂げた。辺境伯爵家には気に入れられているが帝国に忠誠心が有るのか?貴族として使えるか?何を与えれば制御できるのか?」


ふふっ、我ながら怪しいよなそんな奴は……


「ですから試したのでしょう?」


ニコリと問いかける


「自分の立ち位置を把握出来るのは良い事ね、それで?」


「はい、義母上の魔力は隠匿されてない今ならはっきり感じます。並みの魔法使いでは無いから宮廷魔導士だろう…ですが筆頭では辺境伯家に権力が集中し過ぎる。ならば2か3席?違いますね、宮廷魔導士の上から3番目までは戦争時3交代で参戦させたいだろうから女性を据えるとは考えづらい……となると」


「4席なら妥当だろうと思ったのね」


「はい、義母上」


お互いに紅茶を飲む

多分間違い無いだろうな


チラリと義母上を見ると、顔を赤らめてうっとりとした視線だ

なんだなんだ大丈夫か?


「ソニア…この子は手放しちゃダメ。かわいいわぁ……仕込み甲斐が有るわねぇ」


「だろう?魔法はだいたい仕込んだけど、キミも仕込みたくなっただろ?」



……止めてください、死んでしまいます

無能と思われても死ぬけど逆も危ないのかよ



「魔力は問題無く強力だし精霊化で実績も有るわね、他の貴族に嵌められないような知識も有り光属性……ああ、ベアトの婿にぴったりね!ソニア、結婚式には私も出ますからね?」


「解ってるよラーミア、かわいいベアトの結婚式だからね」



あの、止めてくださいね?

お二人イチャイチャするのは良いですけど程々にしてくださいね?

手を結んで見つめ会う二人から視線を外して紅茶を……無いや

自分でいれよう




2杯目の紅茶を飲み終わる頃

ようやく二人の世界から戻って来たラーミア義母上が慌てながら話す


「んん、ゼスト。宮廷魔導士4席ラーミアが認めました、試験は合格で終了です。陛下にきちんと報告するから安心なさい」


「ありがとうございます、よろしくお願いいたします」



ふぅ、とりあえずクリアか


まあ、陛下も心配するよな


突然現れた養子が辺境伯家の婿になり、精霊化を成功させた

功績を認めるしか無いが裏切らないか?

とんでもない馬鹿で貴族社会に馴染めなくならないか?


こんな不確かな男なんて、疑うのが普通だ

確認しないで出世させていたら逆に無能皇帝に恐怖を抱くよ


これなら安心して帝国に居られるな



ほっとしながらお菓子をつまむ

うん、なかなか旨いなこれ



「でも、困ったわね……優秀過ぎるのよね……」


え?


「だろうね……こうなると……ね」


顔をしかめて仲良く二人でウンウン唸っている


何だろう

何が不味いんだろうか?


優秀過ぎるか……


過ぎる……ねぇ




ああ、そうか

確かに困るなこれは



「辺境伯家に権力が集中し過ぎると?」


そうだろうな

精霊化という問答無用な功績を無視出来ない

だから宮廷魔導士筆頭として周辺国に知らしめた


だか、辺境伯家で二人の宮廷魔導士を抱える事になる


信頼はしているが、パワーバランスが傾き過ぎるのは避けたい



そんなところだろうな


「そうなのよ……辺境伯家で四人も宮廷魔導士を抱えるなんて不味いのよ……」




ん?四人??



「義母上、よ、四人ですか?」


聞き間違いか?


「ええ、元筆頭2席がお父様辺境伯でしょ、ソニアは元2席で3席になるわね。それでも今までさんざん文句言われたのよ?『辺境伯家は三人も宮廷魔導士を抱えるのか』って」


困ったわよね?と、師匠に微笑む義母上


それは……不味いんじゃないですかね?

文句言うよ、それなら



「それが今度は四人よ?筆頭から4席まで独占よ?困ったわ、大丈夫かしらねぇ……」


義母上、大丈夫じゃないと思いますよ

あなただってそう思うから空の紅茶を飲もうとしたんでしょ?


最強戦力の上から4番目まで独占とか……

陛下の胃に穴が開くレベルだわ



沈黙を破ったのは師匠だった












「ゼスト……ベアトの婿にはなれないかも知れないね……」












沈痛な顔でそう言った師匠を……

俺は黙って見詰めていた……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ