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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第一章 帝国黎明期
41/218

40 指導者ゼスト

「なんだそのへっぴり腰は、舐めてるのか貴様!」

「すっすいません、ゼスト様」


「そこっ、ダンスじゃないんだフラフラするな!」

「申し訳ありません!」


「お前は痛がるな!その隙に攻撃されたらどうする!?」

「はっ!ご指導ありがとうございます!」




あの頭のおかしな傭兵乱入事件の後、俺は訓練所で兵士達の指導をしている


いったい何故か?

不審者の侵入を許した事に宰相が激怒し


『なんたる不祥事だ!幹部は会議室に集まり対策を検討せよ、ソニア卿に指示を仰げ!兵士達はゼスト卿に鍛え直して貰え!』



宰相に言われたら断れないよな、こうして訓練が続いている訳だ

やれやれだよ



「あの、ゼスト様?次は私の順番です。お願いいたします」


そう言って頭を下げる女性騎士

額に5cmくらいの傷痕が有るが、かなりの美人さんだ


「ああ、その額の傷痕かな?目を瞑って力を抜きなさい」


言われた通りにする美人騎士

傷痕に触れた手がポゥっと光るとあっという間に治っていく


「終わったぞ、気分は悪くないか?」


額を触りながらプルプル首を振る

うん、美人がやると破壊力あるな。素晴らしい光景だ


傷痕がすっかり消えた彼女は、仲間達と喜び合っている



そう、俺は訓練には参加していないのだ

口で指示をするだけ


では何をしているのか?女性騎士や兵士の傷を治しているのだ


光魔法で治療するのは一般的なのだが、見る見る傷が治るような事は一般的じゃない

普通なら傷の治りが早くなる程度、専門の魔法使いで止血程度で宮廷魔導士クラスでようやくそのレベルだ


更に、傷痕を消せる光魔法の使い手は師匠と宮廷魔導士4席だけだったらしい

師匠は辺境伯領へ婿に行って居ないから、帝都に一人だけの4席はとても多忙でなかなか治療して貰えない


そしたら俺が治せば良いじゃない


こうなった訳だ

治療なんて自分で散々試したし、黒騎士相手にもタップリ使っていたので慣れたもんだ



指示をしながら治療を続けるが、なかなか人数が減らない

なんかメイドまで並んでないか?


……ついでだから治すか……




いつの間にか用意されていたイスに座り紅茶を飲む


騎士や兵士達の治療は終わっている

やはり女性だから顔の傷痕は嫌だったらしく、とても感謝された

男達がガタガタ言っていたのだが

『同僚が美人になるんだが嫌なのか?』

と、言うと黙って訓練に戻って行った

素直な奴等だ



「ゼスト様、お願いいたします」


頭を下げながら手を差し出すメイド


ニッコリ笑いながら手を包むように握る

メイドはやや顔を赤らめて恥ずかしそうだ


パァっと光り、治療が終わる


「終わったぞ、どうだ?痛みは引いたか?」


手を握ったり開いたりして確認するメイド

やがて納得したのかこちらを見て、満面の笑みでお礼を言ってくる


「ありがとうございますゼスト様!すっかり治りました、痛くありません」


そう言って仕事に戻って行く




かわいいなぁ


俺の心のオアシスはここだったんだな


かわいいメイド達の手を握り恥ずかしがる顔を見て、治療してあげると満面の笑みも見られる


なんだこの役得は、最高じゃないか!



結局、全ての治療を終えたのは夕方になる頃だったが満足だ

素晴らしい1日になったよ


……あ、訓練止めて良いぞ?まだやってたのかお前ら





公認セクハラが終わった後は楽しい楽しい宴会である


今日は軍の兵士達相手だから気楽だ

いつもの黒騎士達との飲み会みたいなものだ



訓練所の一角に作られた会場に入る

そこには500人程の兵士達が集まっていた

やや少ないが兵士全員酔い潰す訳にはいかないので選抜したらしい

お、女性騎士達も居るな

後でお話ししよう



「皇帝陛下のご配慮で、このような機会をいただいた。まずは皆、皇帝陛下に深く感謝するように」


宰相の言葉に全員がコップを掲げる


何故、軍の宴会に宰相が居るのか?簡単だ

軍の幹部は会議室で師匠にまだ絞られているからだ……可哀想に


「では、ゼスト卿。挨拶を」


会場の前に作られた壇上に上がる


前もって言われていたので慌てない

気楽な宴会にするって宰相も言ってたからな


「宮廷魔導士の筆頭を任される事になるゼストだ。正式発表まで時間はあるが承知しておいてくれ。長々と挨拶はしない、今日は無礼講だ!城の酒を飲み尽くせよ?乾杯!」


「「「「「おおおおおおお!!!」」」」」




そうして始まった大宴会


若い兵士達は料理も酒も必死に腹へと詰め込んでいる

凄い勢いだな


隊長クラスだろう中年組はなかなか賢い

高そうな酒を選んで飲んでいるようだ

……狡猾だな


女性陣は一纏まりになって飲んでいるようだ

うん、あれは華があるな。素晴らしい

最終目標はあそこだな


だがいきなり突撃してはドン引きされてしまう

焦ってはいけない


まずは宰相を潰す

お偉いさんが居ては、なかなかハジケられないのはどこの世界でも一緒だ


「宰相殿、どうぞどうぞ。ささ、グイッと」


「おお、ゼスト卿すまないな。お?うまいなこの酒は」


ふふ、宰相の好みは把握している

酸味の強いワインが大好きなんだ、アルバートに調べさせたのは無駄にならなかったな、撃破完了

テーブルに突っ伏した宰相のもとを離れる




次は隊長クラスだ

ほとんどが貴族だから注意が必要なんだ


「隊長方、飲んでますかな?これは辺境伯家の差し入れです、さあどうぞどうぞ」


「これはゼスト卿、ありがたい。なっ!?これはあの銘酒と名高いあの?」

「なんと、初めて見ましたぞ……」

「こ、こんな高価な酒を…よろしいので?」


貴族だが軍に居るとなかなか金は稼げない

高い酒などめったに飲めないのだ…ふふふ、飲むが良い

撃破完了

床にのびている隊長クラスのもとを離れる




さあ、あそこに向かおう……準備完了だ

俺は桃源郷に足早に向かう


隊長クラスに粘られたので、かなり時間をとった…だが慌ててはいけない

彼女らも良い感じに酔ってきている筈だ

むしろ良いタイミングである



「やあ、皆飲んでるか?ああ、気楽にしてくれ無礼講だと言っただろ?」


立ち上がり挨拶しようとする女性軍団

騎士も混じっているが基本的に平民が多いから、無礼にならないようにしたのだろう


そんな彼女達に手を振って座るように促す


「これは差し入れだ、甘口で果実の風味が良い酒らしいぞ」


黒騎士に走って買いに行かせた酒をすすめる

こんな酒が有るとは知らなかったから慌てたが間に合った

黒騎士にはお礼を言えば良いだろ


「うわぁ、美味しいですねこれ」

「凄い!初めてです、こんなお酒」

「これならいっぱい飲めるね!」


ふふふ、作戦成功だ

女性好みの酒なんて珍しいからな、帝都中を探させた甲斐があったよ


黒騎士には褒美を出すか




ハイペースで飲み進む女性陣

暑いと上着を脱ぐもの

トロンとした目でこちらを見るもの

さりげなく俺の足に手を置くものも居る



素晴らしい

異世界に来てこんな理想郷に辿り着けるとは…


女性の良い匂いもするし、薄着なチラリもあるし……


野郎の兵士達がチラチラ見てくるが、軽く魔力で威圧する

邪魔するな、訓練するぞ貴様ら



よし、みんなこっちから目をそらしたな

俺の勝ちだ


勝利を確信してワインを飲み干す

うまい

勝利の美酒は格別だ!


「お強いんですねゼスト様、戦いもお酒も強いなんて…もしかしてその他もお強いんですか?」


俺にもたれ掛かる女騎士

なんだなんだ?試してみたいのかね?


エロい顔にならないように必死に感情を抑え込む

ここでエヘヘなんてだらしない顔したら残念野郎だからな


優しく肩でも抱いて、耳もとで何て言おうか

カッコいいセリフを考えていると突然念話が届く













(ご主人様、ベアト様が来ましたよ)












魔力全開で身体を強化して、最高速度で立ち上がり振り返る


どうか……どうかまだお嬢様がここに居ませんように

俺の願いは届くのだろうか?

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