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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第一章 帝国黎明期
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39 訓練場の手合わせ

「謝罪は受けよう、だから早く行った方が良いぞ」


師匠に言われて逃げるようにその場を離れる部隊長


それに合わせるように他の者達も距離をとる


当然だろうな、俺は既に魔力で全身を強化して臨戦態勢だからだ


ポイされた鎧だけがガチャガチャ近寄る

こいつは馬鹿なのか鈍感なのか…意外と強い可能性も有るか


ならば試すか…


「さあゼスト卿、剣を取れ!そしてわたしとじんじtpgjamg」



訳の解らない声を発しながら転がって行くポイ鎧

ああ、ポイッとされた鎧野郎だからポイ鎧な


「ゼスト、口上の途中で殴るのはどうかと思うぞ?」


苦笑いの師匠がボソリと呟く


「申し訳ありません、強者かと思い試したのですが…」


「そうだな、正面から馬鹿正直に殴っていたからな。あれは避けない方が悪いな」


「はっ、その通りです養父上」



周りの兵士達は唖然としながらこのやり取りを見ている

辺境伯家の訓練は初めて見たのかな?普通だぞ、この程度は


ぶっ飛んでピクピクしているポイ鎧に近より治療魔法をかける


「貴様、なぜ避けない。敵の正面に立ったら戦闘は始まっているんだ、ボーっとするな!治療魔法をかけたから治っただろう、さあ立て」


そう言って少し離れると、少しぎこちないが立ち上がるポイ鎧


「よし、油断大敵だと解ったな?さあ、次は避けろよ」


同じように魔力強化して正面から殴り飛ばす

お、さっきより飛んだな。身体が暖まってきた


軽い足取りで近寄り治す


「さあ、治したぞ。次だ…立て」


ヨタヨタしながら立ち上がるポイ鎧

ほう、根性あるじゃないか

嫌いじゃ無い


「ぐぅ、何という強さだ。これほr_d6vaj.jmtad」


異音を口から出しながら倒れるポイ鎧

今度は肩を掴んで腹を殴ったからな、飛ばないんだ

いちいち歩くの面倒だからこれにした


「だから口ではなく身体を動かせ馬鹿者が」


治療すると、今度は油断なく構えながら立ち上がるポイ鎧


「よろしい、やれば出来るじゃないか。さあ今度はそっちから攻撃してみろ」


黙って剣で斬りかかるポイ鎧


上からの斬り下ろし…狙いは左肩か

相手の左側に踏み込み、剣を持つ腕を横から右手で払い軌道を変える

受け流されて身体が泳いだポイ鎧の背中に蹴りを入れた


「なんだそれは、相手をよく見ろ。丸腰で自信満々にしてるんだ体術使いかと疑え!そうしたらそんな大振りしないだろうが」



治してはぶっ飛ばす

治しては転がす


周りの兵士達も呆然となんてしていなかった

食い入るようにその訓練を見ていた



「だから突くならその後素早く引け!」

「足が折れたら降参か?戦争にルールが有るか馬鹿者!」

「お前の籠手は飾りか!それで殴れ、使える物は何でも使って戦え!」

「あ?剣が折れた?だから何だ、周りに剣を持ってるやつが腐る程居るんだから奪って来い」





暫く指導してあげていると、だんだん動きが良くなってきた

まったく、師匠より数十倍は優しい指導なんだから

もう少し早く上達してくれないとなぁ



「おいおい避け始めたぜ鎧のやつ」

「それよりあんだけやられても向かって行くんだ、根性あるよな」

「ああ、すげぇ根性だ」

「しかし辺境伯軍の黒服は化け物だな」

「「「辺境伯軍だからな…………」」」



……酷い言われようだ

俺が化け物なら師匠と養父は何なんだ

未だに勝てないわあの二人には



少しは上達したからもう良いかな

俺もスッキリしたし、良い八つ当たりの的だったなコレは


「よしそこまで、訓練は終了だ、頑張ったな。だいぶ上達したぞ?見る見る強くなるからつい、指導に力が入ってしまったな……大丈夫か?」


我ながら言い訳があまりにも酷い

でも周りの兵士達は感動で泣いてるやつも居るくらいだ

誤魔化せただろう



ポイ鎧はこちらを見ながらガチャガチャ震えている




大丈夫か?やり過ぎたかな……

誰だか知らないが貴族であろうポイ鎧の心まで壊してしまっては不味いことになる


心配になりながら様子を見ていると、ポツリポツリと話し出す




「ゼスト卿……わたしは……わたしは……」






あ、壊しちゃったかな……


チラリと師匠を見たらヤレヤレってポーズをしている

師匠?あなたより優しい指導ですよね?

あなたはもっと厳しかったんですよ、覚えてますか?



近付いてきた師匠に小声で尋ねる



「師匠……壊れましたかね?これ」


「ゼスト、この程度ではまだ壊れませんよ?」


怖い事言うよな、師匠は……

まだって何だよまだって…


「しかし、様子がおかしいですよ…帰りますか?」


「そうですね……もう一度繰り返せば治りますかね?……ふふふ」



……師匠、やっぱりあなたは容赦無いです、怖すぎる




身の危険を感じ取ったのか、ポイ鎧が再起動した

おお、良かったな!死なないで済むぞ、頑張れ!


俺の応援が届いたポイ鎧が話す



「これ程の強者と戦えた…いや、指導をしていただいて感謝する。ゼスト卿…このご恩をどう返したら良いだろうか?」



打ち所が悪かったね

何故か感謝とか恩返しとか言い始めるポイ鎧に師匠までもが困惑している



「ゼスト、やっぱり壊れてるねアレは…どうしようか?」


「師匠、私も怖くなってきたのでほっときますか?」




壊れたオモチャの処分に困っていた俺達だが、ポイ鎧はそうは受け取らなかった



「しまった!まだ名乗りも顔も見せてはおりませんでしたな、これは失礼した」


ガチャガチャとボコボコのフルプレートを脱ぎ始める

いや、好きにしたらいいけどさ…

どうしよう…誰かに押し付けて帰るにしても

誰にどうやって擦り付けようかなぁ…



あーでもない、こーでもないと二人で相談しているとポイ鎧はフルプレートを脱ぎ終わったようで

改めて挨拶を始めた












「改めて挨拶させていただく、わたしは傭兵で各地を渡り歩くカインと申す。よろしくお願い致す」










「よ…傭兵?…貴族では?」


掠れる声で聞いてみる


「は?私は平民だが、どうかしたかね?」







「し、侵入者だ!引っ捕らえろ!!」







部隊長にボコボコにされたそいつは兵士達に簀巻きにされて連れて行かれた……


何だったんだあの馬鹿は……


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