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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第一章 帝国黎明期
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28 帝都への旅路

「ふぉっふぉっふぉ、心配要らぬ大丈夫じゃよ、陛下がお主を見たがってのぅ。遊びに行くと思って気楽に行ったらええじゃろ。土産なぞ要らんぞ?」


「行ってらっしゃいませゼスト様。このピンクダイヤが砕けないようにしていただければ気にしませんし、お土産など結構ですわ」

『浮気は駄目よ?したら切り落としますからね?あ、帝都のお菓子食べたいなぁ』


「ガハハハ、帝都の軟弱ものなぞ軽くひねって来い。土産は酒で頼む」


「まああなた、ゼストは優しいからそんな事しませんわ。ああ、最近お化粧品が肌に合わないわぁ…独り言よ?」



「み、皆様行って参ります。お土産買ってきますね……」


帝都への旅立ちの日、緊張気味の俺への言葉はお土産の催促しか無かった……




同行者は師匠とアルバートで仲良く野郎2人で馬車に揺られている

アルバートは騎乗だ


勿論3人だけじゃなく、護衛の騎士10人メイド2人の大所帯である

貴族が旅するのだから身軽にはいかない

世話役のメイドも連れていくのは俺たちにはただの見栄だが、身の回りの事が出来ない貴族も多いのだ

護衛だって俺達なら必要無いし

まあ、辺境伯の身内がフラフラと旅したら名誉にかかわるって下らない理由でゾロゾロ引き連れて行くわけだ


「ソニア卿、そろそろ村に到着いたします」


外からアルバートが声をかける

帝都までは村や町が有るのでそこに泊まる事になる


村には貴族が泊まるような宿は無い、だから先触れを出して村長の家に泊まるのだ


村は木の柵で囲われており、出入り口は限定される

そこまで立派な柵ではないがそれでも盗賊やモンスターの対策にはなっている


「お待ちください、先触れは承っておりますがお名前を頂戴いたします」


門番をしている兵士が声をかけてくる

各村や町には駐屯している兵士が居るからな、わざわざ兵士を派遣しているのは辺境伯領だけらしい

金も掛かるし手間も有るのだ


「私はバーナム辺境伯家の騎士アルバートだ。馬車にお乗りなのはソニア魔法兵団長とガイウス子爵家の嫡男ゼスト様だ、お役目ご苦労」


馬上からアルバートが答える

仕事中は真面目なんだ彼は


「はっ!お疲れ様でした、村長宅まであのものがご案内いたします」


先導に従い村に入る


すると子供達が遠くから騒いで……いや、大人も混じっているな


「すげぇー!黒騎士だ!」「正規領軍か、久々に見たな」「ねぇあの獣人騎士カッコいいわね」


そうなのだ

普通なら軍が来たら怯えそうなものだが、辺境伯領内はそうじゃない

黒の軍装を纏う正規兵は憧れの対象でありモテモテらしい

飲みに行ったときに兵士達に聞いた話だけどね


女の子にキャーキャー言われているアルバートが少し羨ましいが大人しく馬車の中で待つ

たまには飴も必要だからな、最近アルバートには調教が激しかったし



そうして村長宅に着いて宴会だ

俺達は泊まる村への土産として金と肉、酒も持って来ているから振る舞う

平民を敵にはしたくないし、まあ礼儀の一つだ


楽しい宴会が終わり、メイドに身体を拭いて貰ってベッドに入る

浮気じゃないぞ?身体を拭いただけだ


そうして旅の初日は問題なく終わっていった



その後の旅も順調だった


犬みたいなモンスターが出たらしいが騎士達にあっさり倒され拍子抜けするほど平和な旅は続く

さすが精鋭と言われる黒騎士だ、心強い


だが帝都まであと1日というところで問題が発生する



「お二方、何やら前方で揉め事です。念のためご注意を」


アルバートの言葉で外を確認すると、それが見えてきた


若い男女を鎧姿の者達が囲んでいた

馬に乗っている鎧姿も居る……騎士だろうか?それにしては軽装だな


向こうもこちらに気が付いたようだ

騎兵が一騎走ってくる……何だ?途中で引き返したぞ?


一旦戻って行った騎兵はその一団の中でも責任者であろうフルプレートを伴ってやって来た


「馬上から失礼する。私は帝都警ら隊班長のケネスと申す。黒の軍装を見るに辺境伯正規軍と思われるが馬車の方はどなたか」


フルプレートがフェイスガードを上げて声をかける


師匠が馬車を止めさせて外に顔を出す


「バーナム辺境伯領の魔法兵団長ソニア-バーナムだ。何が有ったのだ」


おお、辺境伯家モードだ

師匠さっきまで帝都の飲み屋の話してたとは思えない凛々しさですね


「これはソニア卿、失礼いたしました。現在冒険者を捕縛いたしまして……」


彼の話によるとこうだ


冒険者達が街道沿いの森の中で採取をしていたら盗賊らしき者に襲われた

反撃して戦っていたが冒険者の放った流れ矢が巡回中の騎兵に命中

事故なのであまり大事にはしたくなかったが態度が悪い冒険者が居たせいで揉めて仕方なく全員捕縛



おいおい、軍に喧嘩売るなよ

まあ兵士が平民だったのが救いだったな、貴族相手ならサヨナラである


「なるほどな、では我々には関係ないな。通るぞ」


「はいっ!ご面倒をお掛けして申し訳ありませんでした」


師匠も絡む気は無いようだし、彼等は牢屋に少し泊まれば帰れるだろう


どれだけ態度が悪かったかは知らないが、あまりにも酷いなら斬られるかも知れない

だが仲間が悪かったんだ自業自得だろう


その一団が脇に寄り、俺達が通過する

そのまま通り抜けて終わり……その筈だった










「お願いいたします!お助けくださいバーナム辺境伯様!」









縛られながらも馬車の前に飛び出して来た冒険者の女性の叫び


無視して通過する事が出来なくなった瞬間だった……参ったなぁ

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