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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第一章 帝国黎明期
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22 婚約者として 後編

大歓声の中ゆっくり剣を構えた俺


漆黒の金属製鎧を身に付けた暗黒騎士……いや、魔王か?我ながら恥ずかしい格好だ


正面の服を着た豚が汗を拭きながらニヤニヤと声をかけてくる


「ふふん。良かろう、相手になってやる!宮廷魔導士の第3席たるわたしに挑むとは間抜けな奴め!」


そして身体に魔力を纏わせ始めた



ば、馬鹿な!?この魔力!宮廷魔導士の上から3番目……だと!?


俺は驚きで声も出ない


何て事だ!計算違いにも程があるだろ?まさかこれ程とは……



先ほどまでとは一転、広場は静まり返っていた


「何だあの魔力は」「ぜ、ゼスト様勝てるのか?」「宮廷魔導士だったとは……」


貴族達や兵士達からそんな声が上がる


そうなのだ……口だけではなくなかなかの魔力を撒き散らして居るのだこの豚は


「ほう……まさかこれ程とはのぅ……」

「ええ、私もこれは予想外でした閣下……」


辺境伯閣下と師匠は苦い顔をしていた……それはそうだろう


お嬢様にちょっかいを出してきたアホ貴族


そんな認識で居たのにそれがいざ闘いとなってみれば宮廷魔導士の3席ときた

そしてこの魔力である……驚きもするだろう


「ふふん、我が魔力に驚き声も出まい!只の法衣貴族の嫡男と侮った自分を呪うが良いわ!」


そう言って豚は身振り手振りで巨大な魔法陣を生み出した

呪文を唱えながら魔力を更に練り上げる

炎の魔法なのだろうか?既に周囲の温度が上がり、兵士達が貴族達の前で魔法障壁を組み始める


「貴族様方、お下がりください!障壁の後ろへ!そこっ!強度が甘いぞ、何してる!」


部隊長の怒声が飛ぶ

それほど危険な魔力の炎が練られて居るのだ


そしてそれは出来上がりを迎える


幾つもの魔法陣で制御されている白い炎の巨大な玉が……直径2メートルくらいだろうその玉は豚の頭上に浮いている


「さて、命乞いするなら助けてやっても良いぞ?決闘だからな、死んでも文句は言えんのだが私は慈悲深いのだよはっはっはっ」


慈悲深い豚は嫌らしい笑いを浮かべて汗をかいている

ふん、どうせ許す気も無い癖に……


「…………」


「ぶははは、恐怖で声も出ないか?安心しろ、痛みなど感じる前に消えてなくなるぞ?……時間切れだ。焼き払え!!」


その言葉を合図に火の玉が俺に向かって真っ直ぐ飛んでくる

俺に当たると城門よりも高く火柱を上げた


「障壁班、気合いを入れろ!とんでもない火力だぞ!」


隊長の悲鳴に近い言葉に魔法兵達が必死に魔力を込める

俺の居る場所では石畳が煮沸しているな、確かにとんでもない火力である

その場の者達は初めて見る宮廷魔導士の大魔法に顔色を失っていた


肩で息をしている豚野郎

魔力のほぼ全てを込めたのか、既に魔法陣は消えて見に纏う魔力も消えていた

顔は汗だくで醜いその見た目をより引き立てている


「ぶははは、騎士がわたしに勝てる筈が無かろう!愚か者め!」


高笑いしながら喜ぶ豚野郎……それを苦々しく見詰める三人


「まさかこれ程とはのぅ……」


「ええ、全く予想外でした」


「驚きましたわ」


その三人は同じ言葉を呟いた



「「「まさかこれ程弱いなんて……」」」



その言葉に満面の笑みを浮かべる豚野郎

未だに炎が立ち上がっており、聞こえたのは側に居た貴族達や兵士達であったがはっきりと聞こえた


「はっはっはっ、驚きですよ!わたしもこれ程弱いなんて思わなかったわ!」


豚野郎のセリフに顔をしかめる兵士達だが、さすがに貴族達は顔には出さない

言葉だけでも身の破滅に繋がる貴族だ。そうそう反応などしない



豚野郎の高笑いの響く広場で炎の柱がその魔力を使い果たして消え去る



そして現れたのは煮沸する石畳の上に何事も無く立っている俺だった


「面白い出し物だったが終わりか?宮廷魔導士どの」


剣を一振りすると石畳の熱は霧散していつもの姿を取り戻す

ガチャンガチャンと一歩一歩豚野郎に近づく


「あの火柱の後に何か仕掛けが有るのかと待ってたんだがな。あれで終わりだったのか?」


豚野郎は口をパクパクしているが声が出ないようだな、何だそれは金魚の真似か?


「長い長い詠唱と準備をしておいて、あれで終わりかと聞いている」


もう豚野郎の目の前だ


「で、あるならもう良い。お別れだ」


俺は剣で豚野郎の首をはねる

はねた首はボールのように転がって行き、胴体はその場に崩れ落ちた



人を殺した……だが意外な程嫌悪感はない

その辺の虫を殺したような感覚で不思議と落ち着いている



「この決闘、わたしの勝ちだ!さあ他には居るか!?ベアトリーチェ様に結婚を申し込む者は?わたしの相手をする者は居るか!?」


剣を掲げて辺りを見渡す

魔力は全開、威圧感を込めて辺りを見渡す



そして誰からだっただろうか

皆それぞれその場に跪いていた


ある者は震えながら……ある者は英雄に熱い視線を向けながら


俺はお嬢様を見上げる


「ベアトリーチェ様、ガイウス家嫡男たるこのゼストあなたに結婚を申し込みます!お受けいただけますか!?」


剣を後ろに回して膝を突く

お嬢様の答えは決まっている……のだが……






「あなたのような武辺者はわたくし以外では押さえきれませんわ。面倒をみてあげます、その結婚お受けしますわ!」

『ゼスト様ゼスト様ゼスト様ゼスト様ゼスト様ゼスト様ゼスト様ゼスト様……』









俺たちを祝福する大歓声の中、ヤンデレお嬢様に殺されるフラグが立った俺は人知れず漏らしていた……

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