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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第一章 帝国黎明期
22/218

21 婚約者として 前編

不幸な事故を起こす事を決めて、俺はお嬢様のフォローをしていた


貴族のお嬢様である彼女は『腕を掴まれ顔を叩かれる』なんて経験したことなど無いと思う

現に辺境伯閣下と師匠は激おこぷんぷん丸である


「婿殿、仮に死んでも事故じゃ。心配ない」

「そうですね。ゼスト、手加減は相手に失礼だから全力で行きなさい」


お二人のありがたい言葉である


使用人達も怒りMAXらしく

「ゼスト様、首です。首を狙うのです」「お嬢様が泣くのを初めて見ました……あの豚め……」「当日は全員で見に行きます!」


などなど……

豚はやめさない……あと、首を狙えとか事故ですからね?肩を狙ったら首に当たって仕方ないって流れですからね?


お嬢様もかなり怒っているらしく、魔導書…じゃないや交換日記のページが『許さないゆるさないユルサナイ』で埋まっていたときにはさすがに少し漏らした……


また、兵士達にも噂が広がっており「人の恋人に横恋慕かよ」「帝都の連中はそんなやつばっかりですね」「よりによってお嬢様かよ」などと言われているのだが、最後には皆こう続くのである


「「「ゼスト様をキレさせたんだから、死ぬだろうな」」」


…君達、俺を何だと思っているのかね?


そして問題の豚やろ…じゃない法衣貴族の馬鹿息子は「無礼な女だが、顔は良い」だの「身体で仕込めば大人しくなる」だのと招待された貴族の家で騒いでいたらしい


何故、貴族に招待されたかと言うと、やつの親は帝都の内政を担当する幹部らしくかなりの影響力が有るようだからだ

だが、せっかく呼ばれた家でそんな馬鹿な話をしていれば反感は出る

案の定今では馬鹿息子を呼ぶような貴族は居ないどころか逆に『俺が何秒で奴を殺すか?』が、賭けの対象になっている程だ


賭けるなよ……貴族も暇なんだな……




そんなドタバタした5日はあっという間に過ぎて、いよいよ馬鹿息子の公開処刑当日

俺は門番達の詰所で出番を待っている


今日の俺は養父であり騎士団長のガイウス子爵家の跡取りとしてフル装備で待っている


ガレフ養父上の話では、これは子爵家に代々伝わる当主の証で戦いのときにはこれを着て戦場へ……

それがガイウス家の伝統であるそうだ


「お前は養子だが間違いなくガイウス家の跡取りだ。それを着て行ってこい!ガハハ!」


まったく優しい養父だ


そんな事を考えながら紅茶を飲み一息つくが、同じ部屋に居る門番達の顔色は悪いな……

どうやら俺もかなり腹が立っているらしい

馬鹿息子の事を思い浮かべていると、怒りと共に湧き上がる魔力が抑えられない


「ぜ、ゼスト様。お茶のおかわりを」

「ああ、気を使わなくて良い。そろそろだからな」


「はっはいっ!」


外から歓声が上がる


始まるな……俺はゆっくり外に出た





晴天の城門前広場に沢山の人々が集まって居た


城門の上には辺境伯と師匠、そして主役の一人であるお嬢様


城門前を少し広めに空けて辺境伯領の貴族達が、それを守るように兵士達が

さらにその外には沢山の民衆が集まっており、屋台なども出てお祭り騒ぎになっている


「皆、良く集まってくれたのう」


魔法で拡散された辺境伯閣下の言葉に集まった人々が静まりかえる


「さて、今日集まって貰ったのは知っての通り、我が孫娘ベアトリーチェに求婚したいという者が出てきたからじゃ」


ワアァーっと歓声が上がる

城門の上からゆっくり見回し、歓声が収まるのを待ってこう続ける


「我が辺境伯家は国境を守る帝国の盾じゃ。その辺境伯家には家柄は勿論、盾としての武力。そして皆を率いる力が求められる。じゃからこうしたい」


人々は一体何を言うのか?何が始まるのか固唾を飲んで見詰める


「我が孫娘と結婚したければ、それを守る強さを示してもらう。そしてそれを皆が納得したら結婚を許す!」


城門の上、更に高い縁に登った辺境伯閣下が大きく手を広げ


「結婚を求めた次期子爵家当主アルフ卿よ。我等に示してみせよ!納得させてみよ!」


ワアァーッ


割れるような大歓声の中、一人の男性がやって来た

20代の太った男で茶色の癖ッ毛が所々跳ねており、顔は汗で湿っている

きらびやかな服がまったく似合っていない


広場の空いたスペースまでフゥフゥ言いながら来た男は声を上げる


「わたしがアルフである!さあ、ベアトリーチェ嬢このわたしの妻になる栄誉を与えよう!」


偉そうに上から目線でいい終えたアルフは汗を拭きながらニヤニヤ笑っている


一体どう返事をするのか

力を示すとは何をするのか


ざわめく声を辺境伯閣下の振り上げた手が止める


「アルフ卿の言い分は解った。この結婚に異議があるものは居るか!?だが心して答えよ!異議有るならば己の命をかけて貰うぞ!さあ、命をかけてアルフ卿に異議が有るものは居るか!?」



シーンと静まり返る広場

それはそうだ、気に入らないとは言え辺境伯閣下が命をかけろと言ったのだ

貴族達は黙るしかない

遠回しに逆らえば殺すと言われているようなものだ


貴族達が逆らえないのだから兵士達も……民衆は当然黙るしかない



静まり返る広場にガチャン……ガチャンと金属鎧の音が響く


やがて人々の前にそれが現れた


全ての光を吸い込むような黒い鎧

だが、金色の意匠が施された帝国の者なら誰もが知っている辺境伯領の最強の矛が纏う鎧







「ガイウス子爵家次期当主、ゼストだ!その結婚に異議がある!ベアトリーチェ様は渡さん、決闘を申し込む!」







「「「「「わあぁぁぁぁーーーーーー!!!!」」」」」





大歓声の中ゆっくり剣を抜いた俺は

黒い鎧とか……完全に悪役だよな……これ……


そう思いながら剣を構えた

良いところですが、次に続きます

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