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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第三章 調停者
209/218

208 新たな事実

今年一年、お世話になりました!

ランキング入りして書籍化して……そして二巻も発売が決まるという

忙しい年でした!

残すところあと僅かですね。

また来年もよろしくお願いします(`・ω・´)ゞ

「閣下、まだ休んでらして結構ですが?」

「アルバート。もう昼過ぎだぞ……たっぷりとベアト成分は補給したから大丈夫だ」


旧ドワーフ王国のお姫様製造計画が大詰めを迎えている現在、そう長く仕事を離れる訳にはいかないだろう

しかもライゼル殿下も来ている現在、俺がのんびりしていては……


「ミラ姫の教育はアナスタシアお嬢様が奥様の代わりについておりますし、カチュアお嬢様は怨嗟の声をあげながらお見合いが成功した男女の対応をしております」

「ほほう。意外と何とかなっているじゃないか」


「はっ!政務については辺境伯とソニア師匠……ソニア卿が処理を行っておりますので問題ありません」

「ははっ、ここには身内しか居ないのだ。ソニア師匠で問題ないぞ」


俺にとっても師匠なのだが、アルバートも正式な弟子だもんな

しかも俺より先だったから兄弟子なのだ……尊敬はしてないけど


「いえ、先日うっかりと他人の目がある場所で失言してしまったもので……こうなったら最初から呼び方を公式用にすればいい事に気が付いたのです」

「……うむ。アルバートは賢いな」


「閣下、私も成長するのです」

「……」


最早何も言うまい

幹部専用に区切りはしたが、相変わらず天井のない執務室で駄犬を見つめる

素直なのは美徳なのだが、大貴族の仲間入りをした彼だ

そろそろ腹芸の一つも習得させないとな

ちょっとした皮肉も理解出来ないこいつには、誰が教師役にちょうどいいだろうか?


「アルバート、この書類がわらわのところへ回って来ていたのじゃ。これはお主の担当……パパ上!?もうママ上との時間は終了したのか?まだお昼なのじゃが」


書類をピラピラさせながら入室して来たカチュアに真顔でそう突っ込まれる


「もう昼だぞ。多少は仕事をしないと落ち着かないのだ」

「ダメなのじゃ、今日は働いたらダメなのじゃ」

「カチュアお嬢様、もっと言ってやってください」


働こうとすると叱られる謎の現象を体験する

そうは言われても現状の把握が出来なくなるから、少しは書類に目を通したいのだ


「わかったわかった。軽く書類を確認したら戻る。それでいいだろう?」


自分の席に座って軽く手を振りながらそう答えて視線を落とす

スゥが処理してくれたのだろう、机の上の書類は僅かだった


「その程度ならいいのじゃ」

「それで妥協しましょう」


微妙に上から目線の駄犬にイラッとするが我慢する

この流れだとカチュアが駄犬の側に付いたら面倒だからな

カチュアが自ら用意してくれた紅茶を一口飲んで書類を見ると、視界の隅の窓が無言のアピールをしている気がした


「アルバート、ライゼル殿下はどうしている?」

「はっ!黒騎士達と訓練中であります!」


ある意味では想像通りの返事ではある

そうなると、やはりこれは現実のようだな


「まさかとは思うが、手加減なしの本気での訓練か?」

「閣下、あの黒騎士達が訓練で手抜きをするとでも?忠誠を誓うのは主に相応しい強者のみです。ライゼル殿下が奴等よりも強ければ問題ありません!」


実に懐かしい辺境伯領地理論である

それに我が領地も同じ理論が通用しているのだが、それでも相手は皇太子殿下だ

心配にもなるだろう


「私の目には、窓の外に皇太子殿下がチラチラ見えるのだが……気のせいだよな?ドラゴンにお手玉されてないよな?」


俺が指差した窓を振り返るアルバート

ちょうどいいタイミングでライゼル殿下が下から現れて、また下に消えていく

ちなみにここは3階である


「閣下……ドラゴンは獣ですし……仕方ないかと」

「……獣相手に不敬罪は問えないか。それでごり押そう」


「はっ!」


さすがにマズイと思ったのだろう駄犬と、俺の意見が一致した瞬間だった

カチュア、そんな目で見るんじゃない

お前だって皇太子殿下を燃やしただろうが!



「ゼスト大公、私は放り投げられて空を飛んだのは初めてだったぞ」


「得難い経験をしましたね、ライゼル殿下」

「おっしゃる通りなのじゃ」

「もうドラゴンと打ち解けるとは、さすが皇太子殿下です!」


「しかし、私を皇太子だからと腫れ物に触るような事をしないで真剣に訓練に付き合ってくれた騎士達はさすがだな。黒騎士の噂は本当であったか」


「……得難い経験をしましたね、ライゼル殿下」

「おっしゃる通りなのじゃ」

「もう黒騎士達と打ち解けるとは、さすが皇太子殿下です!」


思わず裏を読んで返事が遅れてしまった俺と、年の功でサラッと受け答えをするカチュア

そして同じ様な事しか喋れない駄犬

そんなメンツでのお茶会は続いていた


「だが、ゼスト大公はもういいのか?奥方と休息する日だと聞いていたが」

「我が領地のペットが粗相をしたのでさすがに……」


お手玉されているライゼル殿下を救出した後、ドラゴン達を軽く殴り倒してから応接間に移動したのだ

いくら何でも止めないとマズイだろう?アレは


「気にすることはない。私は『厳しく教育される馬鹿皇太子』なのだからな」

「そう言っていただければ……」


「それだ。皇帝陛下の手紙を見たのであろう?私は大公の息子だと思って接してくれてかまわぬ」

「そうはおっしゃいますが……わかりました。いや、わかった。徐々に慣らしていこう」


既にここまでやってしまっているのだ

今更ガタガタ言っても仕方ないだろう

本人がそれでいいと言うなら、そうしようじゃないか

なんとかそう思い込もうとしている俺を尻目に、娘と配下は順応が早かった


「ではライゼル。カチュアお姉ちゃんが訓練の続きをしてやるのじゃ」

「閣下の……大公家の息子。それならば武力は必要です。さ、もう一度訓練場へ行きましょうか。ドラゴン程度に遅れをとっているようでは一人前とは言えませんからな」


カチュアは確信犯で駄犬は素直なだけだろう

皇太子本人もこんなに素早く受け入れられるとは思わなかったのだろう

キョトンとした顔のまま、二人に引きずられて行くのだった

……カチュアが対応するなら大丈夫だろう……多分



「……と、いう事があってだなぁ」

「普通の事ではありませんか?ゼスト様」

(弱いのにお父さんの息子にはなれないです)


結局、俺だけが応接間に残されたので素直にベアトの部屋に帰って来た

そこで顛末を話したのだが、このありさまである


「貴族の家に生まれたからには、最低限の武力は必要ですわ。男ならば当然の事ですし、女でもたしなみ程度には使えないといけません」

(乙女のたしなみですね、お母さん!)


「ましてや、皇室の皇太子殿下があの体たらくでは配下が付いてきませんわ」

(二番目に接近戦が弱いアナスタシアにも勝てない男はダメダメですね、お母さん!)


一番弱いっていうカチュアでさえ、素手で黒騎士達をボコボコに出来るし皇太子殿下にも勝ってるけどな

我が一家の中で弱いって比較検討になるのだろうか?

それに乙女はダンスとか刺繍とかがたしなみじゃないのだろうか?


「こ、皇帝陛下になる方だぞ?直接戦闘能力は必要なのか?」

「普通は必要ありませんわ。ですが、あの方は改革をなさるおつもりでしょう?ならば最低限のわかりやすい武力は必要ですわ」

(口だけのボンクラは要らないっておじいちゃんが言ってました!)


そうですか、辺境伯もスパルタ教育に賛成なんですか


「それに若い頃じゃないと訓練も難しいでしょうし、ちょうどいい機会ですわ」

(ライゼルはまだ15歳ですもんね、お母さん!)


「……は?15歳?誰が?」


「ライゼル殿下ですわ、ゼスト様」

(ライゼルですよ、お父さん)


15歳で三人の行かず後家三人衆を側室にして子供も仕込んだのか……

い、一応この世界では成人だが、てっきり20歳以上だと思ってたよ

そりゃあ、皇帝陛下も俺に『息子のように』って言う訳だわ


「ちょっと、私も訓練場へ行ってくる」


(お母さん!お父さんも15歳って聞いたカチュアと同じ目をしてるです!)

「トトちゃん、それは思っても言ってはダメよ?」


まだ若いのなら、今のうちに洗の……教育すれば色々と都合がいいかもしれない

そんな建前を考えながら訓練場へ急ぐ

迷惑の仕返しに強めに殴ろうと心に決めていた俺は悪くない筈です

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