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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第三章 調停者
208/218

207 閑話 クリスマスSS

二巻の発売まで間もなく+クリスマスなのでSSをあげておきます!

1月10日発売なのでボーナスやお年玉は残しておいてください(;´・ω・)


「閣下、くりすますとは何でしょうか?」

「水たまりをここに連れてこい」


「はっ!」


朝の執務室で駄犬が放った最初の一言がそれだった

どう考えてもあいつの仕業だろう

ただ教えただけの筈がない……絶対に何か画策中なのだろうな

嫌な予感しかしないわ


「閣下、マリー卿を連れてまいりました!」

「おはようございます、ゼスト閣下。あの……なぜ睨まれているのかわから……」


「クリスマスがどうしたって?」

「わかりました!わかりましたから、アイアンクローは勘弁してください!!」


涙目の水たまりを解放して椅子に座らせる

軽く掴んだだけで大げさな奴め

苦笑いのスゥが全員にお茶を用意し終わってからボソボソとマリーは口を開いた


「私は奥様に閣下の故郷の風習を教えて欲しいと言われて、それでお教えしたのです!今回は叱られる覚えはありません!ありませんとも!」


「ほほう、覚えがないか」

「マリー卿、早く謝った方がお仕置きは少ないですよ?」


俺とスゥの言葉にビクンと肩を震わすが、それでも彼女は続ける


「こここ、今回は本当に身に覚えがありません!」


「ふむ。それほど怯えるとは、やはり怪しいな」

「旦那様、少し魔力を抑えてくださいませ。それでは誰でも怯えます」

「閣下、私の尻尾も垂れ下がる勢いです!」


駄犬がビビるレベルで魔力を垂れ流していたのか……そりゃあ、一般人のマリーにはきつかっただろう

つい興奮してしまったか


「すまんな、先程までドラゴンがモーニングコールだと窓を突き破ったお仕置きをしていたから、つい魔力を纏うクセがついていた」

「あのトカゲは本当に学習しませんね。駄犬が賢く見えます」

「家令殿、閣下の前でそんなに褒めるのは止めてほしい。恥かしいではないですか」


違う意味で恥かしい駄犬は放っておく

突っ込んでいたら日が暮れるからな

それに皮肉が通用しないのも貴族としては必須事項だし、ある意味向いているのかもしれない


「さあ、これで大丈夫だろう?ベアトにはどのようにクリスマスについて説明したのだ?」

「ふぅ……ようやく落ち着きました……はい。奥様にはこのようにご説明いたしました!」


そう言って額の汗を拭うと、懐からメガネと指し棒を取り出した

どうやら形から入るタイプらしい


「コホン。えー、クリスマスというのは、恋人同士がイチャイチャしながらプレゼントを渡すイベントです!」

「いきなりツッコミどころ満載だな」


「そして、プレゼントにもある程度決まりがあります!」

「うむ。そこには同意だ」


俺のヤジが気に入らなかったのか、指し棒をパシンッと机に打ち付ける


「閣下、説明中はちゃんと聞いていてください!えーっと……そう!プレゼントの決まりですが、女性の最上級は裸で自分にリボンを巻いて『私がプレゼント』というのが最も……」

「おい、ちょっと待て」


さっきよりも強めのアイアンクローで水たまりを捕獲する

声もなく体が痙攣しているが、この際無視した


「そのようにベアトに説明したのだな!?」

「旦那様、それでは返事が出来ません」

「閣下、マリー卿が泡を吹いております」


そうだった

こいつは言動はアレだが、あくまでも一般的な身体能力の女だった


「そうだったな……ほら、回復魔法もかけたから平気だろう。で、どうなんだ!?」

「大きな川とお花畑が見えました……はい!そのように説明しました!」


一瞬トロンとした目をしていた彼女だが、俺を見るなり大きな声で返事をした

なんだ?そんなに怯えるなよ……


「そうか……そうか!スゥ、マリーに何か褒美を用意しろ!」

「かしこまりました。ですが旦那様、その血走った目を何とかしてください。配下の女性をそのような目で見てはいけません」

「狩りですか!?閣下!」


そんなに危険な目をしているのか?

いや、そんな事はどうでもいい

今はこの事実だけが重要なのだ!

アルバート、狩りじゃないからバルディッシュはしまってきなさい


「私は急用を思い出したから席を外す。それではな」

「かしこまりました」

「はい。お疲れ様でした」

「はっ!わかりました、ご武運を!」


真顔で敬礼している駄犬は絶対にわかっていないのだろうが、それどころじゃない

執務室を飛び出してベアトの部屋へと向かう

だってそうだろう?あの話をベアトが聞いたなら、間違いなく期待出来るであろう


「ターセル、この部屋には誰も近付けるな」

「御意」


ここまではアルバートでも入ってこれない

戦乙女部隊が守る女性限定のエリアだ

男で入れるのは俺だけである……あ、たまにメディアが居てたまげる事はあったな


「お養父様?扉の前で何をなさっているのですか?」

(お父さん、お仕事終わったですか?)


部屋の前でそんな事を考えていたら、アナスタシアとトトが目の前に立っていた

しかも何故だかサンタ服スカートバージョンである


「お、お前達……その格好は?」


「ふふふ、似合っていますか?」

(作ってもらったです!かわいいですか!?)


クルリとその場で一回転をするアナスタシアは非常にかわいい

トトは元気に飛び回り、満面の笑みを浮かべていた


「ああ、とても似合っていて素敵だね。どうしてその服を作れるのだ?マリーが説明したのかい?」


「いいえ、ガーベラに……教皇猊下に教わりました」

(マリーは嘘つきです!クリスマスはサンタさんがプレゼントを配る日だったです!)


……そうか、冷蔵庫の仕業か……

奴の生みの親は当時まだ子供だったらしい……それならクリスマスはそんな日という認識だろう

納得がいく


「そ、そうか。それでベアトに用事があってここへ?」


「いいえ、お養父様。ベアトお養母様は訓練場ですから、私達も向かう途中なのです」

(お母さんはドラゴン達に鈴を付けて、おっきなソリを引かせるって張り切ってました!)


「……そうか」



大公領地のクリスマス

ムフフなイベントを期待していた俺の目論見は木っ端みじんに吹き飛ばされた

領主一家が揃いの衣装を着て、ドラゴンを駆って領民にプレゼントを配る日

そう認識されたクリスマスは、配下の騎士達も真似して同じ行動をするようになる


翌年のクリスマス……訂正できないまま迎えたその日、真っ赤なサンタ服を纏った騎士達とその家族を引き連れて領内を駆けずり回る事になるのであった


ちなみに、その次の年は縮小版で開催される事になる

理由は皇帝陛下や獣王陛下に冷蔵庫

そして他の貴族達からの手紙である

『真っ赤な軍装で統一した大公軍数千~一万が集結したと聞いた。戦争か?』

年末のクソ忙しい時に、訂正の為各国を飛び回ったのもいい思い出です


裸リボンは……正月にアルバートがやってくれました……

駄犬よ、それはふんどしだ……リボンじゃないぞ?

マリー、描くのはやめてあげなさい

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