200 美女同伴でお店
風邪でダウンしております(;´・ω・)
感想の返信が遅れてしまいますが、ご了承ください(´;ω;`)ウゥゥ
尚、犬の名前がアルバートで薬を吹き出しました
「で?何か言い訳があるなら聞くが?」
グリフォン王国の飲み屋『子犬と子猫』の店前で駄犬にそう聞いてみる
師匠もおすすめの店と言うから来てみたがこの店名で既に怪しさ爆発中だもんな
どう考えても幼い外見の子達が接待する店なのだろう
「閣下、それは穿ち過ぎなご意見です。私は純粋な気持ちでこの店をご案内したのです!」
無駄にイケメンな駄犬が吠える
確かに彼の目には邪な気持ちは見えない
このパターンは純粋に勘違いしているか、斜め上の発想をしているかのどちらかだ
実は本当にいいお店でした……そんな希望は持つだけ無駄なのだ
「私には外見が幼い娘が接待する危険な店にしか見えないが……お前がそう言うなら聞いてみようじゃないか」
「はっ!店の入り口の店員に確認すればよろしいかと」
自信満々で、むしろ早く確認してみろと言いたげな駄犬が余計に不安を増す
俺達のやり取りをおどおどしながら見ていた店員に意を決して聞いてみた
「少し聞きたいのだが」
「は、はいっ!」
ビクンと肩を震わせた彼女はどう見ても10台前半で、日本ならランドセルが似合いそうな子であった
まあ、耳がケモ耳なので日本には居ないだろうが……
「怯えなくてもいいぞ?私は君には危害を加えない。君にはね。それで、このお店は外見が幼い子が接待をしてくれる店なのかい?」
返答次第で駄犬をぶっ飛ばせるよう、右手に魔力を込める
その右手を見てアルバートの馬鹿は真っ青な顔になっているが仕方ない
自分の発言には責任を持ってもらわないと、大貴族としては失格だからな
「い、いいえ!違います!!」
震えながらもしっかりとそう口にした幼女店員
あれ?それじゃあ本当にいいお店のパターンか?
でも、あの店名じゃあ他にどんな意味が……そんな俺も思考は続く言葉で霧散する
「外見だけではなく、ちゃんと幼女ばかりです!具体的には3歳~12歳までの健康優良児だけが……」
「この駄犬がああああぁぁぁぁ!!!」
「ぐぼjさっばぐさjskjjkjxkls」
狙いすました右のアッパーが駄犬の顎を正確に捉え、10メートル程浮きながら吹き飛んだ
野郎は当たる瞬間に強化魔法で防御したので追撃する
「本物の!幼女!とは!救いようが!ないだろうが!!」
「閣下、誤解!です。これにはっ!?訳が!グッ!あるのでふぐっ!?」
着地したアルバートへ一気に間合いを詰めて攻撃する
生意気にも避けたり躱したりする駄犬だが、回し蹴りをフェイントにして足の甲を踏みつけると動きが鈍る
そこへ肘を鎖骨目掛けて叩き込み、鼻を狙って頭突きを入れた
「ちょこまかと避けやがって……街中では魔力を全開に出来ないからといって、こんなに苦戦するとはな」
「閣下、私も成長しているのです!」
「常識面も成長しろ!この大バカ者!!」
鼻を押さえてフラフラしている駄犬へ、俺の怒りの右ストレートが吸い込まれるように入った
イライラしたから強めの魔力が練りこまれた攻撃
それは飲み屋街の真ん中でドンガラガッシャンと派手な音を立て、周囲の建物の壁を壊しながら駄犬をぶっ飛ばしたのである
……やばい、やり過ぎたかもしれません……警備兵じゃなくて城の衛兵クラスがぞろぞろ集まってきちゃった……
「いやぁ、最後の一撃は見事でした。この鎧がなければ即死でしたな」
「……アルバート、鼻血を拭け」
派手に暴れたせいで、いつの間にかやってきていたエミリア宰相
そうだよな、他国の貴族が暴れてたら警備兵では対応出来ないのが普通の国だよな
俺の領地だったら問答無用で黒騎士達が襲い掛かるけど、あれが異常なんだよなぁ
相手が強い程『強者が居たぞ!殺せ!!』って笑顔で襲い掛かるもんあ
「そろそろよろしいでしょうか?一体、こんな場所で何をなさっているのですか?」
飲み屋街のど真ん中で衛兵に囲まれる
そんな現実逃避したい状況の中、エミリア宰相が疲れた顔で聞いてきた
気持ちはわかる……俺もそんな顔しているだろうし……
「いえ、まだ入店はしていないのですが……どんな手違いがあったのか『子犬と子猫』とか言う店を……」
「ああ、あのお店がお目当てでしたか。さすがゼスト大公は素晴らしいお方ですね!」
「……は?」
何故かエミリア宰相は褒めちぎっているが、どういう事なのだろうか?
まさか獣人族の風習では幼子を愛でるのが普通なのか?
そんな事は『獣人族の手引き書』には書いてなかったが……
「あのお店は我が国の肝いりで始めました。戦災孤児が安心して働けるようにと……当然ですが兵士が常駐しておりいかがわしい事など出来ません。だからこそ今回はゼスト大公が暴れて……んんっ、訓練をなさっているとの報告がいち早く届いたのです」
「……素晴らしい事業ですね」
「閣下、顔色が悪いようですが?」
まさかの駄犬のおすすめ完全勝利である
これではただ単に誤解でアルバートを殴り飛ばした大馬鹿野郎は、俺という事になってしまうではないか
「せっかくここまでいらっしゃったのなら、ご一緒しますか?エミリア宰相」
「そうですね、このお店ならばいいでしょう。喜んで」
「閣下、顔色が悪いようですが?」
ドヤ顔の駄犬がウザイので軽く魔力で威圧して黙らせた
俺が悪いから謝るよ?でもそれは今じゃないだけである
何か言いたげな駄犬を引き連れて、俺達は『子犬と子猫』という素晴らしいお店に入っていくのだった
「お嬢さん達、安心してください。犬獣人族ですが私は草食系なので!」
「あははははは、すごい!こんなに面白い人初めて見た!」
「アーお兄ちゃん、このお菓子頼んでいい?」
「私も食べるー!!」
何をどう安心していいのかわからないが、アルバートは絶好調だった
周囲にはすっかりなついた子供達が取り巻いている
「これなら確かに幼い子供も店に出せる筈だ」
「ええ、お姉様……獣王陛下の発案で始めたのですが、当初は反対したのです。そんな事が出来る筈がないと」
そんな駄犬は無視して店内の様子を見ていた俺は驚いた
独り言のつもりであったがエミリア宰相に答えられて更にびっくりしたが……
それでもこの光景は想像以上だった
「まるで自宅の食卓で子供達と遊んでいるような雰囲気なのですね」
「ええ、ゼスト大公のような大貴族様には縁がないでしょうが……平民や下級貴族達には日常の光景なのです。様々な理由で子供が持てない者や、失った者には心の癒しになりますから」
日本では不可能な事だろうが、ここは異世界である
子供が働いてはいけないって法律はない
むしろ働かないと生活が出来ない者も多いのだ
「子供達と共に過ごして癒しを求める。いい事だと思いますよ」
「ふふっ、最初はそんな簡単な事にお金を払う者が居るのか?と心配したのですが、獣王陛下もたまにはいい事を思いつかれるのです」
「確かに簡単ですが難しい事なのですよ。欲する者からすれば金銭には変えられない事なのでしょうね」
「そうかもしれませんね……私も子供は好きなのですが、自分の子を持てるようになるのはいつになるか……」
ちょっといい事を言ってお互いにしんみりとした空気が漂う
この人も苦労性なんだよなぁ
まあ、獣王陛下の駄犬っぷりは擬態なのだろうが……それに付き合うのも大変だろうし
そんな大人な空気感の中、一際大きな黄色い声でハッとする
その中心にはアルバートが鎮座していたからである
「アーちゃん、本当に!?」
「アーお兄ちゃん出来るの!?」
「私もやるー!!」
「ああ、いいともいいとも。長老様ごっこなら私が一番だと帝国では評判だからな!!」
こうしてグリフォン王国の夜は更けていった
謎の長老様ごっこと共に……え?エミリア宰相も参加する?
どうぞどうぞ