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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第三章 調停者
194/218

193 地雷処理班マリー

「大変申し訳ございませんでした!!」

「聞こえないな」


「大変!!申し訳!!ございませんでしたぁぁぁ!!!」

「うむ。今度は聞こえた。後100回な」


「そんなぁぁ!もう許してください、何でもしますから!」

「旦那様、アレはもうしばらく反省が必要です」

「そうだな、スゥに任せる」


簀巻きにされたマリーを爪で掴んだドラゴンが大空を飛ぶ

俺とスゥは背中でゆったりとしいるが、内心はドキドキである


「顔色が悪いようですが、いかがいたしました?寝不足でしょうか?久しぶりに奥様とお会いしたので仕方ないとはいえご自愛くださいませ」

「……違う。辺境伯からの手紙のせいだ」


つい先程まで領地の館に居た俺なのだが、その手紙のせいで急遽旧ドワーフ王国へと急いでいるのだ

『婿殿はどこに行ったのかのぅ』

たった一行なのにいろいろ考えて足に震えがきたのは内緒である

竜騎士部隊が届けたのだから居場所はわかっているのに、この書き方っていうのが余計に怖かった

マリーの馬鹿はお仕置きとしてこの状態である

それに『あのような卑猥なモノを作ったお詫びをご本人にするべきです』とスゥがお目付け役で同行している


「しかし、まさかスゥが同行するとはな。ベアトが怒るかと思ったがなぁ」

「奥様直々のご指示です。旧ドワーフ王国の女性が近づかないよう監視も仰せつかっております」


「そ、そうか」

「それに身分上位の女性がお嬢様方だけでは心配だと。そちらの配慮もするようにとおっしゃっておりました」


配慮か……それは『いい男が居たらうまくやれ』なのか『悪い虫をくっつけるな』という意味なのか微妙だな

ああ、一応『政務や外交で困ったら大変』って意味もあるかな?


「馬鹿な男がウロチョロしていたら始末するようにと。特に皇太子殿下のお話を聞いた際はそれはお怒りでした」

「……そうか」


どこまで知っているのかどうかわからんが、幼い女の子三人を孕ませたのは知っているらしい

そりゃあ、同じくらいの歳の娘達が心配になる気持ちはわかる

……あの三人がババアだったのはまだ知らないのだろう


「娘達は心配要らないとは思うがな。それに俺も浮気はしないぞ?」

「それは存じております。余計な事が起きないように虫よけだそうです。『家令でさえ美人なら、女で釣ろうという雑魚も減るだろう』と。私などを美人と言われては恥ずかしいですが……」


「お前が美人でないなら、世の中には美人は居ないだろう」

「お気遣いありがとうございます、旦那様。自分の程度は自覚しておりますから」


絶対に自分の事を過小評価しているが、あまり突っ込んだら危険だ

口説いていると思われても面倒だからスルー安定である


「それと、これも預かっております」


そっと懐から小さな布を取り出した

嫌な予感しかしない物体を広げると、案の定下着である


「……スゥ、だからお前の下着を貰ってもだなぁ。私は獣人族ではないから、その、な?」


困惑する俺に、彼女はニッコリと微笑んで言い含めるように優しく言ったのだった


「ご安心ください、それは奥様の物でございます。旦那様がお望みならばとおっしゃっておりましたが、今度ゆっくりとお話したいそうです。それと私の物は後日お渡ししますので大丈夫でございます」


安心出来る要素がどこにも無い返事

俺は一言も望んでいません

言葉に出来ないセリフを飲み込んで、空の旅は続く

……なに?トトの物もある?要りませんからしまっておいてください



「おお、婿殿。長い政務でしたのぅ」

「ゼストは一人で政務をするとドラゴンで空を飛ぶようだね」

「っふぁっふぁ、ふぉふぉふぃふぁふぇふぁふぃふぁふぇん」


「し、少々手間取りました」


満面の笑みでそれ以上は追求しないでいる辺境伯と師匠

これなら普通に怒られた方がマシだ

アルバートはまた顔を倍以上に腫らしていたが……後で治してやろう


「旦那様、お二人は何か誤解があるようです。この手土産をお渡しすればわかっていただける筈ですから、ご安心を」


スゥが用意した二つの袋

こんな賄賂でだと?そもそもどんな物を渡しても無駄だとは思うが、信頼する家令の言う事なので無視は出来ない

駄目で元々で渡すが、効果は劇的であった


「これは!?」

「素晴らしい、不問にしましょう」


先程までとの腹黒い笑みは何処へいったのか

さわやかな笑顔の二人の手には娘二人とベアトのフィギュアがしっかりと握られていた


「おい、スゥ」

「ご安心くださいませ。きちんと処理がしてあり、妙な目的には使えなくなっております。お嬢様方の名誉も守れますから」

「ゼスト閣下、徹夜で仕上げました!」


確かに造形は文句なく優秀だから、ジジ馬鹿と親馬鹿には何物にも代えがたい品物だろう

それに親である二人なら変な目的にも使わないだろうし、身内だし……これはこれでアリなのかな?


「ふぁっふぁ、ふぉふぇふぁふぃっふぁふぃ」

「すまん、アルバートは少し黙れ」

「駄犬がご迷惑をおかけして申し訳ございません、旦那様」


何処から取り出したのか白い羽でアナスタシアとカチュアのフィギュアの服に付いたホコリをはたく辺境伯

他の使用目的が理解出来ないミニサイズのブラシでベアトフィギュアの髪をすく師匠

『お二方ともさすがでございます』というスゥの謎の呟きを聞きながら、切実にまともな部下が欲しいと思う俺だった



「ふぅ……堪能したのぅ」

「ゼスト、量産はまだかね」

「とりあえず、座ってください」


阿呆二人がフィギュアの虜なので、旧大広間の執務室は使えない

美少女人形にうっとりしてる貴族二人を公衆の面前には出せないだろう

仕方なく、若干狭いが自室の机で書類仕事中なのだ


「失礼致します。着せ替え用の服が仕上がりました」

「いやぁ、いい仕事をさせていただきました」


マリーが言い終わるより早く、二人が獲物を見付けたように服に飛びつく

書類仕事は当然だが捗らない……しかし俺も領地に帰ってたから文句も言えないし


「旦那様、これで少しは静かになります。今のうちにお仕事を」

「なるほど……さすがスゥだな。策士だな」


「ありがとうございます」


フィギュアを片手にやいのやいの煩かった馬鹿が服に釣られて大人しくなった

確かにこれなら書類に集中出来る

間違ってそっちを目視すると地獄絵図だが、見なければどうという事はない

フンスフンスと荒い鼻息が聞こえるのは仕方ないとして我慢する

そうすれば、俺の机に積み重なった書類はどんどん消えていく

窓から夕日が差し込む頃にはすっかりと綺麗に始末がついたのだ


「お養父様、どちらにいらっしゃったのですか?」

「パパ上、行方不明と聞いたのじゃ!」


やりきった気分でスゥが用意した紅茶を飲んでいると、娘二人がやってくる

フィギュア馬鹿三人は着せ替え用のエプロンドレスのスカートの長さでケンカをしているが無視する

巻き込まれても碌な事はないだろうし


「いや、すまなかったな。心配をさせたが大丈夫だよ。少し領地で問題があったようだから急ぎ対応してきたのだ」


こんな言い訳をしても三馬鹿には聞こえていない

いいタイミングで二人が来てくれて助かった……イチゴケーキをフォークで切り取り一口

甘いクリームとイチゴの酸味で疲れた脳が癒されているようだ


「そうでしたか……お忙しいとは思いますが、ご無理はしないでくださいね?」

「そうなのじゃ、パパ上は働き過ぎなのじゃ」


「ああ、二人ともありがとう」


ベアトとのイチャイチャタイムも癒されるが、この娘達とのイチャイチャもなかなかの破壊力である

ギュッと抱きしめるとアナスタシアはミルク系の香りだし、カチュアは柑橘系の香り

どちらもリラックス効果は抜群だ

ああ、幸せというのはこういう事かと少し涙目になっていると、その感動は大きな声で遮られるのだった


「なんと!?服が脱げるのか!!それはマズイのではないか!?」

「肌着まで脱げるとは!?はっ!!まさかその下まで!?いけません、娘のそんなっ!」


「ふっふっふ、ご安心ください。そこは改修済みです!ほら、このように胸と股間は黒く塗って抉ってあります!奥様の胸は先端だけ処理したのですが、お嬢様方のやつは勢い余って大きく抉ったのですが大差無いので大丈夫でした!!……あれ?」


「胸までおしとやかとは言われた事がありますが、抉れてるとは初めての経験です。神もお許しになるでしょう」

「小さいとは言われたが、凹むとは恐れ入ったのじゃ。わらわをここまでおちょくった女子は初めてなのじゃ」

「旦那様、しつけが甘かったようです。もう一度行ってまいります」


俺の返事を待たずにマリーを担いで消えていった彼女達

野郎三人取り残されて、何とも言えない気まずい沈黙が部屋を支配した

そんな空気を察したのか、軽快な足音を響かせて開けっ放しのドアからヤツが来た

こんな時には役に立つあの男である


「ふぁっふぁ、ふぇふぃふぉふぁふぁふぇんふぇーふぇふ」


あ、ごめん

治療するの忘れてたわ……もう一回言ってくれ

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