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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第一章 帝国黎明期
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15 素早すぎる返事

恭しく差し出されている手紙をじっと見る……

逃げられないよな……お嬢様の有難い手紙だ


神様、今日はもう気持ちよく寝たかったです


「ああ、ありがとう。随分と早い返事だな」


極力、平静を装い手紙を受けとる

足は震度6だったが、皆は気が付いていない筈だ


「まあ、もうお返事が?」「愛されてますわ若旦那様」「お邪魔してはいけませんね」


使用人達は口々に言いながら、頬を赤らめて出ていった

俺の顔は真っ青だけどな……


意を決して手紙を開けると無駄にフローラルの良い香りだ

花がトラウマになりそうだ



『- 最愛の婚約者様 -』




レベルアップしていた

やったな!お嬢様を味方にしないと危険だから、予定通りだな!


そう自分に暗示を掛ける

魔力がごっそり抜け落ちた気がするのは、気のせいだと思いたい



『私はあなたの事を勘違いしていたようです

あんな素敵なプレゼントとお手紙をいただいたのは初めてです。

また、あなたに初めてを貰ってしまいました』


ええ、俺もあんな手紙を貰ったのは初めてでしたよ

お揃いですね……


『しかも、愛を確かめるダイヤモンドをあんなに綺麗にピンクに染め上げるなんて……

ゼスト様は大胆なんですね!他の方にあげてはいけませんよ?』



はて?あれがダイヤモンドだったとは知らなかったし、鑑定魔力使うの忘れていた

しかも、大胆?何か意味が有るのかな?後でメイドにでも聞いてみるか



『ゼスト様のお気持ちはよく解りました

結婚まではまだ時間がかかりますが、頑張って子供を沢山産みますね!

安心してください』


…………?こ、子供?

お嬢様が暴走しているのか、ダイヤモンドが不味かったのか?


まあ、喜んでいるなら良いか

どちらにしてもダイヤモンドの意味が解らない事にはどうしようもないからな



『私の勘違いで恥ずかしいお手紙をお渡ししてしまって……

早く忘れてくださいね?』



……はい、忘れたいです



『ゼスト様のお気持ちがはっきり解りましたから、もう我が儘は言いません

でも、たまには会いに来てくださいね?

また、つい先ほどのようにお祖父様とお父様の前で泣いてしまうかもしれません』



……止めてください、俺も泣いてしまいます



『明日からは兵達との訓練だと聞いています

初めてですが、気持ちを込めてお料理を差し入れいたしますね!』



「誰か!誰か居ないか!」


お嬢様の『気持ち』を込めた『初めて』の料理だと!?

勝てる訳がない止めなければ!


メイド達が直ぐにやって来たが、事情を説明すると

「まあ、若旦那様ノロケですね?ふふふ、ご馳走さまです」

と、相手にしてくれないで出ていく


やや年増のメイドなどは、明らかに睨んでいた

おい、俺は若旦那様だぞ?そんなだから相手が……いや、よそう

これ以上は危険だ


まあ、ひ、光属性は状態異常に強いんだ

大丈夫、俺は大丈夫だ


それにお嬢様の料理がヤバいと決まった訳じゃないし希望は有る筈だ

そう心を奮い起たせて続きを読む


『では、明日を楽しみにしております。

ごゆっくり、おやすみなさいませ


追伸


私がお料理をすると言ったら、家族はみな反対していました。

貴族なのに有り得ないと』


そうだよな……普通、貴族はそんな事はしないんだから家族頑張って止めてくれ!


『ですが、気持ちを込めて必死に説得しましたら感動で涙を流し、床に座り込みながら認めてくださいました!

楽しみにしていてくださいね!


- あなただけのベアトリーチェより -』



お嬢様、それは感動ではありません

闇魔法で疲労したんです

そう思いながら意識を失った








どのくらい時間がたったのか……気を失っていたらしい

そっと窓から空を見上げる


「何故だろう。楽しみにしてろよ?って脅されてるみたいだ……」


誰ともなしに呟いた俺に見えたのはまるで明日を象徴するような、真っ赤で不気味な満月だった……


死ぬだろうな、これは

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