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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第三章 調停者
136/218

135 エルフの秘術

「それで?」

「何だその態度は!私は栄えあるハイエルフだぞ!人族の国なら、侯爵待遇の一族なんだ!」


今日で二人目の馬鹿エルフである

こいつの前は『栄光の一族』とやらが騒いでいた


「私は大公だ。畏れ多くも皇帝陛下の勅命で特命全権大使としてこの国に居る。その私に挑戦するような物言い……よろしい、貴様の一族は帝国の敵とみなす。帰って武器でも磨いておけ」

「き、貴様の一存で帝国の敵などと!」


「だから、陛下に許可はいただいているのだ。おい、お帰りだぞ。手紙を渡しておけよ?」

「かしこまりました、旦那様。ハイエルフ殿?侯爵待遇の一族とやらに対する、帝国からの宣戦布告状です。首で詫びるか全面戦争かお選びください」


スゥが合図をすると、バルディッシュで武装したメイド部隊が部屋に入ってくる

ご婦人がバルディッシュは……と、言われたベアトの発案でメイド部隊の正式装備になったのだ

『これならお揃いだから、私が持っていてもおかしくありませんわ』

にこやかにベアトは語っていたが、そうじゃないと思う……


本人には怖いから言えなかった


「はぁ、ここまで馬鹿ばかりだとはな」

「はい……大使の意味を理解していないのでは?」


尚も騒ぐ栄えある一族とやらは、メイド部隊にボコボコにされながら連行されていった

俺も正面からケンカを売りたい訳じゃない

だが、向こうから売られたケンカは買うしかない

帝国が馬鹿にされて黙ってはいられないからな


「私の決定が帝国の決定となる事をか?鎖国してるとそんな事も知らない貴族が出てくるのか……」

「呆れるばかりですが、仕方ありません。ああまで馬鹿にされてはやるしかありませんからね」


大公として馬鹿にされたら、俺とのケンカだ

特命全権大使として馬鹿にされたら、帝国との戦争になる

外交の一切合切を陛下に委任されているんだからな

まあ、陛下の名代みたいなものだ


「平和ボケもここまでくると笑えないな……我が帝国が、かわいく見えるぞ」

「帝都のボンクラ貴族も、もう少しまともですものね」


美しい笑顔で毒を吐くスゥ

だが、完璧な所作で紅茶の用意をしてくれる

……なんで、うちの家臣達はどこか壊れているんだろうか?


「それで、宰相からの招待はまだか?」

「結婚式に備えて、歓迎の宴はしないとの話でしたが……暗躍しているのでは?」


通常ならば大使の歓迎を表す宴会があるんだが、今回は無いのだ

じゃあ、宰相が接触してくるだろうと思っていたのだが……


「まあ、情報収集や工作の時間が増えるのはありがたい。私達には利点が多いが……何を企んでいるんだか」

「諜報部隊が本格的に仕事が出来ると喜んでおりました。彼等の報告を待ちましょう」


確かにそれが一番だな

頷いて俺は、紅茶を楽しむのだった



「閣下!大変です、閣下!」

「アルバート、窓から入ってくるな」

「お兄様、行儀が悪いですよ」


優雅なティータイムは轟音と共に終わりを告げる

砂埃が飛び散り、その辺が壊れているが気にしない

ドラゴンが激突したんだから……この程度で済んでよかったじゃないか


「お前はベアトの護衛だろう。なぜここに来たのだ」

「ですから閣下、緊急事態なのです!!カタリナが倒れたと早馬があり、領地に向かっていた私と出会い……」

「なるほど、それでお兄様がドラゴンに乗って伝令に……旦那様、カチュア様を同行させて領地にお急ぎください。あのポンコツシスターは治療の腕は一流です。その彼女が居る領地でこの知らせ……旦那様の治療魔法とエルフの知識が必要になる可能性が高いかと」


アルバートの言葉を途中で遮り、スゥが早口で告げる

そうだな、それが一番だし悩んでいる時間は無いかもしれない


「アルバートはここに残れ。スゥの指示に従いツバキとマルス婿殿を守れ。スゥ、お前の判断で撤退も許可するし、非情の手段も許す。いいな?」

「はっ!」

「かしこまりました、旦那様。お任せを」


非情の手段……ドラゴン達を使った最終手段だ

スゥ達を中心に円陣を組んで、ブレスを吐いたら更地の出来上がりだ

こんな城なら、一瞬で消えてなくなるレベルなんだよな

そんな事態にはならないとは思うが……


後はスゥに任せて、カチュアのところに向かう

緊急事態だから魔力全開の戦闘モードでだ


「カチュア殿、頼む。少し散歩に付き合ってくれ」

「た、大公殿?わかった、わかったからその魔力を抑えるのじゃ!メイド達が倒れるのじゃ!」


風呂にでも入ろうとしていたのか、カチュアは上着を脱いだ状態だった

裸じゃないぞ?上はチューブトップのようなモノ、下はスカート穿いてるし

でも、この体型で肩紐が無いチューブトップか……

どうやって固定してるんだ??


半ば強引にドラゴンのところに連れて行き、そのまま乗せる

これから説明すれば大丈夫だろう

ツバキや婿殿にはスゥが説明してるだろうから、騒ぎにはならない筈だ


「すまないな、カチュア殿。実は緊急事態で……」


ドラゴンの背中の上で状況を説明した

部下の命に係わる問題だと納得すると、彼女は笑いながら言った


「ほほほ、あの魔力であんな顔をして飛び込んできたのじゃ……訳ありだとは思ったが、そのような理由とはのう。まったく、脅かさんでほしいのじゃ」

「申し訳ない……どうしてもエルフの長老たる、あなたの知恵が必要だったのだ」


チューブトップのロリババアはゆっくり振り向いた


「大公殿、その長老はやめるのじゃ。カチュアと呼んでほしいのじゃ……事故になる前にのう」

「カチュア殿、素敵な衣装だな。よくお似合いだ……かわいらしさが増して、魅力的だと思うぞ」


不穏な空気になったので、服とかわいいをアピールしながら褒めてみる

効果は抜群だ!


「そうじゃろう、そうじゃろう。これはエルフの技術をつぎ込んだ、まさに秘術とも言える仕組みなのじゃ!最新なのじゃ!」

「ほほう……肩紐が無いのにズレ落ちる気配すら無い……まさか……これにエルフの秘術が?」


「そこに気が付くとは、さすがなのじゃ。わらわが着るといっつも落ちるのじゃ。でも、これなら大丈夫なのじゃ!!何を隠そう、秘密はこの……」


そりゃ、引っかかる胸がないんだから落ちるだろうよ

喜々として語るのじゃロリを見ながら思う

そんな事に秘術を使うから、お前の国は終わりそうなんだよ……



すっかり上機嫌のカチュアと一緒にドラゴンから降りる

数時間で着いた領地だが、凄く疲れた……

中庭に降りた俺達にメイド部隊が声をかける


「お急ぎください!カタリナ卿が……シスターも原因がわからないと……」


泣きそうな面々に案内されてカタリナの私室に着いた

ベッドには赤い顔で唸る彼女が寝かされており、幹部一同が集まっていた


「鑑定魔法では病気なし。治療魔法は効果がありません」


メディアが状況を説明する

今は挨拶なんてしてる場合じゃないからな

カタリナに駆け寄り、鑑定魔法で調べるが病気なしだ


「これは……治療魔法を使うぞ」


病気が治るように、元気になるように祈って魔力を全開にする

だが、カタリナの表情は変わらない……


「そんな!?閣下の治療魔法でも駄目なら……」


膝から崩れ落ちたメディアのすすり泣く声が響く中、カチュアがゆっくりと口を開く


「やれやれ、今どきの若い者は……この程度の事を知らぬのか」


外見だけなら一番若いカチュアのセリフに注目が集まった

このババア、何か知ってるのか?


「教えてくれ、カチュア殿!部下を助けたいのだ!頼む、この通りだ」


なりふり構ってはいられない

カタリナが居ないと領地はお手上げだ

土下座して頼み込むのに、何の後悔も戸惑いもない


「なっ!!何をしておるのじゃ、大公殿!教えるのじゃ、止めるのじゃ!」


大慌てで俺の手を取り立ち上がらせて、ババアは言った



「彼女は、発情期をこじらせたのじゃ!!」


「「「「「……は?」」」」」


発情期って……こじれるんですか……そうですか……

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