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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第三章 調停者
135/218

134 閑話 カタリナの忙しい日常

「これは、このままでいいニャ。でもこっちの書類はこうするニャ」


はぁ、これでようやく一区切りだニャ

指示を出し終えた私は、椅子に寄りかかり一息ついている

公爵領地……旧王国の半分を治めるゼスト公爵の領地

私はそこの内政を一手に任されているニャ


「もう少し、内政官が必要だニャ……いい人居ないかニャぁ……」


ゼスト閣下には感謝しているニャ

平民の猫獣人の小娘

そんな私を貴族にまでしてくれて、こんな重要な役職にしてくれた

他の領主様では、絶対にあり得ない待遇ニャ

でも……この忙しさは、地獄ニャ


「でも、優秀な人材なんて……そうニャ!あの子なら!!」


あの子なら、絶対に優秀だニャ!

でも、理由が無いときっと駄目だニャ……


「そうだ!この手でいくニャ!」


早速、私は手紙の用意をするのだった



「カタリナ卿、お手紙です」

「待ってたニャ!」


手紙を書いてから数日で返事が来た

内容は了承するって返事だニャ!

これで、人手が増えるニャ!


「それと、別件でシスターがお越しですが……」

「ああ、多分……例の件だニャ。応接間にお通しするニャ」


メイドに指示を出して、私は手紙の転送の準備をする

これが閣下に届いたら間違いなく成功するニャ

ニヤつく顔を引き締めて、応接間に急ぐのだった



「お待たせしましたニャ。先日は失礼しましたニャ」


部屋で待つシスターに、挨拶をする

奥様の出産騒ぎでは迷惑をかけてしまっているから、謝る事から始めないといけないニャ


「ふふ、謝罪は不要です。神の巫女たる我が身は修行の日々。ならば、出来事全ては神のご意思……そう、まるでそよ風が木の葉を揺らすように!」

「……最後以外は、わかりますニャ」


最近は慣れてきたのか、このポンコツシスターもまともに話すようになったニャ

緊張したり、興奮すると訳がわからない事になるみたいだニャ


「それで、例の件はどうなっているかの確認ですかニャ?」

「はい。アレが完成すれば、子羊達は歓喜の涙を流すでしょう。そして、神の理想郷に一歩近付く筈……小春日和の木漏れ日のように!」


相変わらず、無い胸をそらすポンコツ

意思の疎通が辛うじて出来るから、もう突っ込まないニャ


「完成度は九割ですニャ。完成したら、真っ先にお知らせしますニャ」

「そうですか……群青色の夕焼けにならない為には、雷雨の中で清流を見付ける覚悟が必要なのです。それは、神の寵愛……そう!天空の楼閣です!それでは、よしなに」


ニッコリ微笑んで、ポンコツは帰っていった

最後はまったく理解できなかったニャ……多分、アレが欲しいんだニャぁ



「それで、カタリナちゃん。何を企んでいるの?」

「ニャ?」


執務室に戻ると、メディアが待っていた

彼女とは仲良くなったからよくわかる

ゼスト閣下の為にならないと判断したら、私でも彼女は迷いなく斬るだろう

だからこそ、仲良くなったとも言えるニャ


「大丈夫ニャ。閣下の為にもなって、領地も助かる案だニャ」

「……そう。なら、いいのよ。うふふ、新しい焼き菓子買って来たのよ!一緒に食べましょ?」


人懐っこい笑顔だが、彼女は閣下に仇なすような者は容赦しなかった

まさに閣下至上主義の人だ

先日も、奥様の出産程度で……そう言っていた貴族が何者かに殺された

彼女の仕業だろうニャ……


「メディア。私が閣下の敵になったら、遠慮なく斬っていいニャ。その代わり……」

「ええ、私も閣下の敵になったら……いいえ、足手まといになりそうって判断したら殺してちょうだい」


そう、こう言える人だから仲良くなったのだ

あの人が居なければ、まともには生きていなかっただろう私達

だから恩返しをするニャ

誰にも閣下の邪魔はさせないニャ


「それで、どんな案なの?」


紅茶を飲みながら、新作の焼き菓子をポリポリ食べるメディア

そうだニャ……説明しても問題無いニャ


「閣下に対して、水田マリから手紙を書いてもらったニャ」

「手紙?みずたマリって……誰よ?」


「閣下のお知り合いニャ。平民だけど、優秀ニャ」

「そんなお知り合いが居たのね。それで?」


私も紅茶を飲んでから答える


「男同士で愛し合うお話を書いてもらったニャ」

「……は??」


まあ、そうなるニャ

説明しないと殺されそうな殺気ニャ


「エルフの国に、宰相と腹臣の名前でばらまくニャ。そんな不名誉な話なら、甚大な被害ニャ。ましてや閉鎖的なエルフは驚くに違いないニャ」

「ああ、策略に使うのね」


「更に、閣下ならばこの有効性と危険性を認識してくださるニャ。差出人のマリは、間違いなく手元に置いて監視しようとするニャ……」

「なるほど、領地にその人が居るようになる。優秀な人なのね」


「そうニャ。でも魔族が絡んでるから、普通の手段じゃ駄目だったニャ。これなら閣下も動ける理由が出来るニャ」


ようやく殺気を引っ込めたメディアが、いつもの微笑みになる

納得してくれたみたいだニャ


「魔族?そう、その方は異世界人なのね……それなら内緒で進めたのも納得ね。うふふ、カタリナちゃんは本当に閣下至上主義ね。魔族にケンカを売る気?」

「メディアには、言われたくないニャ。魔族とは話し合いで上手くいくニャ」


「ふーん。まあ、そういう事はあなたの専門ですものね。そうだ、シスターはあの件で来たの?」

「よく知ってるニャ……そうだニャ。そんなに欲しいのかニャぁ」


「それはそうよ。あなたは欲しくないの?」

「胸パットを?要らないニャ……私は閣下にお願いするニャ!閣下はハゲを治したらしいニャ、胸くらい大きく出来るニャ!!」


「カタリナ卿、それは本当ですか!?」

「やだ、閣下は本当に天才なのね」

「閣下ならやりかねないわ……」


うニャ!?……何でこんなにメイド部隊が隠れてたニャ?

あんた達はたっぷり胸があるくせに贅沢ニャ!

そう、怒鳴ろうとしたときに視界が歪んだ……


あれれ?グルグル世界が回るニャ……


「ちょっと、カタリナちゃん!どうしたのよ!?」

「だ、誰かシスターを!カタリナ卿が倒れたと伝えなさい!」

「しっかりしてください、カタリナ卿!!」

「カタリナ卿が倒れた……カタリナ卿が倒れた……うーーん……」

「ちょっと、何であなたまで倒れるのよ!」



カタリナが倒れた……

その知らせは、エルフの国に居るゼストに到着するまで時間がかかってしまう

その結果が……後の事件の発端になるのだった……


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