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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第三章 調停者
133/218

132 到着!エルフの国

「旦那様、聞いておられますか?本日の予定は以上です。急がないと間に合いません」


「聞き間違いで無ければ、面会が三十件と聞こえたんだが……」

「大人気ですね、ゼスト様」

(お父さん!オムツを持ってきました!)


ベアトの部屋でウィスのオムツを交換しながら報告を聞く

今日の夕方に出発するのに、何でそんなに面会予定が入っているんだよ


「よし、完成だ。肌が痛くならないようにサラサラにしておいたぞ。気持ちいいか?ウィス」

「キャッキャッ!」

「あらあら、よかったわね」

(お父さん、凄く嬉しそうです!凄いです!)


ベビーパウダー代わりに治療魔法を使うとか、普通ならあり得ないらしいがな……

大公家だから仕方ない


「ウィスお嬢様のお手入れが終わったのなら、行きましょうか」

「……行ってくるよ、皆」


後ろ髪を引かれる思いで部屋を出た

これからハゲ親父達との面会祭りである



「ようやく終わったか……」


土下座するおっさん達の頭を復旧する作業は、ようやく終わりを告げた

事前に俺を支持する派閥のみを面会させたスゥのおかげだろうな

廊下では、治療を是非って奴等がアルバートに連行されているからだ

あれ全部とか、普通にイジメである


「さて、休憩したら出発しようか?婿殿達の準備は?」

「大丈夫です。後は旦那様が行けば直ぐにでも」


紅茶を飲みながら肩をさする

スゥが気を遣って、揉んでくれる……ああ、気持ちいいなぁ


「ベアトの部屋でウィスに会ってから行こう。数日は帰れないから、私の顔を忘れていたら泣く自信がある」

「数日で親の顔は忘れませんよ……」


スゥの小言は無視して、たっぷりと家族成分を補充した

今回は連れて行くのは、トトだけなんだ

ベアトとウィスは領地に帰って留守番だ


「では、そろそろ行くか。ベアト、帰りに辺境伯領で養父達にもウィスを見せてやってくれ」

「はい、寄って帰りますね」

「キャッキャッ」

(お父さんと一緒です!久しぶりです!!)


ガレフ義父上とセリカ義母上にも最近は会えないから、これで大丈夫だろう

トトを肩に乗せて、婿殿達の待つ広場に向かうのだった



「ぎゃああああああああああ」

「ちちうええええええ」


「やかましいな、あいつ等は」

「まったくですね、養父上」

「旦那様、髪が乱れております」

(あははは、速いです!!)


悲鳴を上げる野郎二人……マルス王子とカリス将軍だ

ツバキや女性陣は平気な顔で、空の旅を満喫している


「しかし速いな……これなら数時間で到着するな」

「船だと一か月の旅だそうですよ?義父上」

「この程度で悲鳴とは……旦那様、これは訓練が必要ですね」


ドラゴンの背中でくつろぐ俺達

魔法で障壁が張ってあるようで、風はそんなに感じない

これなら安心して乗れるな


「死ぬ!死ぬうううううううううう」

「おかあさあああああああああん」


……そんなに怖いか?

あいつ等は根性が足りないな


「やかましい!!ドラゴンで空を飛んだくらいでガタガタ騒ぐな!馬鹿者共が!黒騎士達や戦乙女部隊を見てみろ!あんなに静か……」


「どうかしら?空の旅は……あなた、なかなかイケメンね。私の乗り心地が気に入ったなら……また乗せてもいいわよ?」

「……俺、ドラゴンに口説かれたのかな?」

「がははは、よかったじゃないか!お前独身だもんな!」

「ドラゴンにすら口説かれない俺は……」


「で、どうなったんだい?その男女と女男は」

「そしたら、ターセル卿がね!?」

「そうそう、素敵よねぇ」

「私も結婚したいのに……ねえ、いい男居ないかしら?ドラゴンでもいいわ!」


楽しいピクニックになっていた……

うん、静かなんかじゃなかったよ


「旦那様、あの二人は気絶したようですし……見なかった事にいたしましょう」

「そうだな……後で訓練追加で頼む。ドラゴンに相手を紹介しろって言っていた彼女には、誰か紹介しような」


「ええ、あまりにも不憫です」

「さすが義父上の部隊……ドラゴンさえも結婚相手とは……」


こうして、楽しい空の旅は過ぎていったのだった

お見合いパーティーでも企画してやろう……



「旦那様、陸が見えてきました。そろそろ到着いたします」


スゥに声をかけられて、目をこらす

だが、獣人の彼女には見えても俺達には見えない

もう暗くなっているからな


「そうか、使者は送ってあるのだ。ドラゴンで向かうとな……スゥ、大丈夫だよな?」

「はい、間違いなく出しました」


うん、それなら平気だな

このまま首都まで一直線だ


「夜だから、平民達には見えないだろうしな。城まで行くぞ」

「了解した、主よ」


俺の乗る黒い大きなドラゴンを先頭に、十匹のドラゴン達は雄たけびを上げて城に向かう

エルフの国の城……それは目前まで迫っていた



「どどどどど、ドラゴン達よ!いったい何の用だ!ここはエルフの王城じゃぞ!!」


拡声魔法で大音量の声が響く

気のせいか、震え声のようだが……女の声だし、緊張しているのか?


「グルン帝国、大公のゼストだ。娘の婚姻に伴い、婿殿と娘を連れてきたのだ。貴様は何者だ!」


俺も拡声魔法で応える

すると、城の前の広場にかがり火が焚かれて明るくなった

真ん中には小さな女の子が立っている


「しっ、失礼いたしました。私は宮廷魔導士筆頭のカチュアと申します。ゼスト大公、こちらの広場へ降りてくだされ」

「カチュア殿、了解した。先ずは私が降りるから、付近の兵士は離れていろ。接近したら敵対とみなして排除する」


一方的に言い切って、ドラゴンに降りるように指示した

暗闇から狙撃されたら面倒だからな

地面に居れば俺は負けない自信がある


ゆっくりと降下して降り立つドラゴン

それを確認すると、先ほどの少女が近寄って来た


「改めてご挨拶を……宮廷魔導士筆頭のカチュアです。ゼスト大公」

「ああ、これを確認するといい。我がグルン帝国の皇帝陛下からの親書だ」


懐から親書を取り出して渡す

その少女は大事そうに受け取り、裏の封印を確認している

外見は少女……だが、纏う魔力はなかなかのモノだな

王子なんかより一回りは強いだろう


銀色の長い髪を二つに分けた頭

ツインテールってやつか……愛くるしい外見によく似合うな

……胸は……うん、あれだけど


「はい、確かに皇帝陛下の封印です。ようこそいらっしゃいましたゼスト大公。歓迎いたします」


片手を胸に当てる、エルフ式の敬礼をするカチュア

周りの兵士の殺気も収まっていく


「随分と物騒な出迎えだが、使者が来ていないのか?」

「使者ですか?いえ、まだ……」


困惑する彼女は、本当に知らないようだ

他国の要人を無礼に出迎えて焦っている……それに間違いなさそうだな



「旦那様、先ほど追い抜いた船が使者を乗せた船かと」


スゥの小さな声の助言に固まる

え?そんなに遅いのかよ、使者の船は!

ドラゴンなら一瞬……ああ、そのドラゴンが来るよって事を知らせる船か……

どうしよう……いきなり失態を先に見せるのはマズイな……


静まり返った広場に、落下音が響く

どうやら、王子が落っこちたらしい


「グホッ!?義父上?……私はいったい……」

「なっ!?マルス!お主は何をしておったのじゃ!!!」


俺が突っ込むよりも早く、カチュアの突っ込みが響いた


「のじゃロリ……だと?」

「旦那様、声に出ています」


冷静なスゥの声よりも、王子がド突かれる音が響く広場

このロリは、ただの宮廷魔導士筆頭って訳では無いようだ……

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