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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第三章 調停者
123/218

122 かわいいドラゴン

「なるほどな……任せると言うなら、とりあえずは安心していいようだな」

「はい、彼等……裁定者がいいと言っているんです。我々でやりましょう、陛下」


ニーベルが徒歩でトホホと帰った後、陛下に報告をしていた

さすがに管理人とは言えないからな……あくまでも裁定者という、一般的な言い方をした


「魔族の件はわかった。問題はだなぁ……」


若干、額の境目が怪しくなっている陛下が難しい顔をしている

陛下……その……ズレてますよ?とは、言えない


「ドラゴン達は、お前の領地に住むのか?」

「はい。奴らは、私かベアトでないと制御するのは難しいでしょう。しばらくは預かりますよ」


「そうなんだろうが……また、お前の戦力が増えるのか……」

「まあ、一時的にですよ。大丈夫です」


あんまり大丈夫では無いが、ここで言っても仕方ない

なんとかごまかす方向でいこう


「あんな空飛ぶトカゲが少々増えても、そんなにたいした事ありません。それに、緊急事態になれば我が領地に王子をお迎えするのです。戦力はあった方がいいでしょう」

「まあ、確かにな」


「それに我々は親戚ですから、安心してください。身内を裏切ったりしませんよ」

「ふふ、信じるしかないな。お前が裏切ったら、簡単に帝都は陥落だ。心配するだけ無駄か」


フーっと長く息を吐き出した陛下は、イスに座り直した


「わかった、城の騒ぎは宰相と始末をつける。ゼスト……お前はこれからの準備を頼む」

「御意」


頭を下げて会議室を出る

これからの準備……つまり、エルフの国を取り込む準備だ

早速、辺境伯と相談しないとな



自分の部屋に戻った俺は、すぐにスゥを呼び出す

伝令を送る手はずを整えないとな


「お呼びですか、旦那様」

「スゥ、早速だが至急で辺境伯に伝令を手配してくれ。私だけでは手に余る」


「至急ですか……エルフの関係ですね」

「ああ、急いで大まかな計画を提案しないといけないんだ」


少し考えたスゥは、斜め上の提案を言い出した


「ドラゴンを使えば、かなりの速度が出せるのでは?」

「だがなぁ……あれに乗って、伝令を引き受ける命知らずが……」


いるのか?

そう、聞くまでもなく候補は決まっているようだ


「兄にお命じください。あれならば、喜んで引き受けます」


キッパリと言い切るその顔は、真っ黒な笑みを浮かべていた



「はっ!早速、向かいます」


呼び出されたアルバートは、一切否定の言葉は出さない

いいのか?俺も言ってはみたが、かなり危険だぞ?


「このアルバート、閣下の命令に嫌とは言いません!見事に成し遂げてみせます!」


キリッと言うアルバートは、寝そべる金ドラゴンに近付いた

アルバートのくせにカッコイイじゃないか

だけど、ガルルルって威嚇してないか?ドラゴンは、おこだよ?


「ドラゴンよ!閣下の命令だ!!逆らうなら、閣下と奥様が折檻するぞ!」


待て、なんだその説得は

他力本願かよ……


「主ゼストよ……この者を乗せて飛べばいいのか?」


若干、震える声でドラゴンは言った

そんなに折檻が怖いのかよ……俺は、だんだん人間辞めてきたみたいだ


「ああ、頼む。お前達が頼りなんだ」

「ふむ。主の頼みなら仕方ないな。おい、獣人よ。乗るがよい」


体を屈めて乗りやすいようにするドラゴン

まだ足は震えているようだな……そこはそっとしておこう


「ドラゴンよ、辺境伯の領地……向こうの方角に急いでくれ」

「任せろ獣人。落ちないように掴まっていろよ?」


そう言うなり、一気に飛び上がる

見る見る小さくなるドラゴンを見送りながら、俺は思わずつぶやいた



「あいつ……手紙も持たず、伝言も聞かずに……どこに行くつもりなんだろうな」

「あの駄犬……あんなのが兄だなんて……」


ゴミクズを見るような目のスゥは、本当に恐ろしかったです……



慌てて戻ってきたアルバートが、スゥにボロクソにバカにされて旅立った

俺は先に部屋に帰るように言われていたから、現場は見ていない

だが、居合わせたメイド部隊によると……アルバートは泣いていたらしい

仕方ないから、帰ったら飲みに誘うか


部屋のソファーに座って、紅茶を飲みながら行く店を思案しているとベアトがきた

トトも勿論一緒だ


「ゼスト様、ただいま戻りましたわ」

(お父さん、ただいまです!)


「二人ともおかえり。散歩は楽しめたかい?」


ニコニコ上機嫌の二人だ

聞くまでもないが、こういった些細な事を怠ると危ない

夫婦の仲が冷える原因になるからな


「ええ、あの子達は素直でかわいいですわ」

(はい!ビューンって飛んだです、速いです!)


おいおい、妊婦が空を飛んで平気なのか?

飛んだら駄目って決まりは無いけどさ……普通は駄目だろう?


「と、飛んだのか?大丈夫なのか?ベアト」

「ご安心なさってください。私は乗っていませんわ。トトちゃんとメイド部隊が乗っていたのですよ」


ああ、それなら……いいのかなぁ……

ちょっと不安は残るが、ベアトが乗らないなら問題ないか

好きにしたらいいだろう


「ですから、ゼスト様にお願いがあるんです」

(トトからもお願いです!)


スッと腕を絡めるベアトに、肩に座るトト

お願いか……二人のお願いなんて珍しい


「なんだい?二人からなら、大抵の事を許すよ?」


指と手のひらで頭を撫でると、上目遣いで告げられる



「ドラゴンをウチで飼いましょう。ドラゴンの説得は済みましたわ」

(うれし泣きしながら、飼われたいって言いました!!)


「……い、いいんじゃないかな」



こうして、ベアトの『説得』により公爵領地のペットが出来た

散歩の為に乗るのは、アルバートや黒騎士達……そしてメイド部隊の精鋭達だ


後に、『帝国最強最悪の竜騎士部隊』と呼ばれるようになるきっかけだった

ニーベルに知られたとき、たっぷり嫌味を言われたのは別の話である

……ドラゴン……返さなくていいのかなぁ……

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