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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第一章 帝国黎明期
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11 閑話 犬騎士アルの驚愕

私はアルバート


栄えある我らが帝国の重鎮であるラザトニア辺境伯にお仕えする騎士だ

辺境伯閣下は非常に公平なお方で獣人だろうと少しの差別もしない


『優秀であれば種族など些細な事だ、誰でも受け入れる』


言うのは容易いが、実際に出来る人は限られる

どうしても種族によっては大っぴらにでは無いにせよ完全に公平にとはいかないものだ


だが、辺境伯領にはそれがある

田舎騎士家の三男の私は普通でも騎士になどなれない

ましてや獣人の、しかも側室どころか町娘に産ませた俺などは夢のまた夢であった


だが閣下は違ったのだ

兵士の訓練所を視察なさっていた閣下はこんな俺を取り立ててくださった


この方は他の貴族とは違うのか?田舎騎士家の……と、呼ばないのだろうか?母のくれたこの獣人の身体を蔑まないのだろうか?


そんな事を考えながらも俺は他の兵士とは別の厳しい訓練を受けていた

それは厳しいだけではない

騎士団長自ら戦いの技を、魔法師団長が魔法を俺に教えてくれた


獣人の俺をイビる為に選ばれたんじゃない、明らかに俺に期待してくださっている!



俺は必死に食らい付いた

閣下の期待にこたえる為に……直接教えてくださっているお二人の為に

そしてこの身に流れる獣人の誇りの為に



そんなある日、妹をメイドとして辺境伯家に迎えると言われた

正直、最初は妹が目当てだったのか?などと、下らない事を考えていた俺は大馬鹿だ


妹はメイドとしてきちんとした扱いを受けている

行儀見習いとして辺境伯家は理想的な場所だから、これで妹もかなり良い条件で嫁に行けるだろう


そんな妹と誓ったんだ

俺達は閣下に拾われた……必ず閣下のお役にたつと!



そして、その時が来た……『異世界人召喚』だ

はるか昔に行われた後、やり方が失伝されていた秘術

それを閣下は甦らせたのだ


稀代の闇属性魔法使いとしても有名な閣下と若くして閣下を超えると言われているベアトリーチェお嬢様

この天才二人が揃っているからこそ、成功したのだろう


だが呼び出された異世界人は複数だった

おかしい、一人では無かったのか?


どうやら勇者の周りに何人も集まって居たのが原因のようだな、一人以外は全く魔力を感じない


その一人はまさに化け物と言うのがぴったりの圧倒的魔力を撒き散らしていた

悔しいが魔力に当てられてまともに話す事さえ出来ない程だ


召喚されたときに衣服は纏っておらず、勇者様達は裸だったが

迂闊に近くに寄れない……

圧倒的な魔力で近寄れないのだ


その時、婦女子を襲う馬鹿が居た

俺と騎士団長は決死の思いで部屋に踏み込み、その馬鹿二人を処分した


今が好機と他の異世界人を勇者様と別にしようと部屋を移るように声をかける


くそっ!こんな魔力の中ではまともに話せない!


俺は一足先に部屋から飛び出した……耐えられなかったんだ

騎士団長に後を任せて異世界人達の先導をする

勇者様は最後に残って居たからだ



その後だ……あの勇者様の凄まじさを騎士団長からお聞きしたのは……







なんと、勇者様は目の前で初めてであろう、人を殺される事を見た後に部屋にマーキングをしたのだ!!


しかも、ただのマーキングではなく、擦り付けて縄張りを主張したのだ!



なんという剛胆!『戦場でマーキング出来るのが族長』そう言われている獣人の俺達にだって出来やしない


更にだ!


閣下、騎士団長、俺を前にして妹に対し『猫か!』と求愛したのだ!!

犬獣人に猫と言うなど、これ以上ない求愛だ……そして下半身を揺らす見事な求愛の踊りまで!!!



あの後、閣下は『忘れろ。気にするな』とおっしゃったが、俺はあの剛胆で女泣かせな色男の事は忘れられない……


勇者様は恐ろしい人だ…………


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