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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第二章 帝国の剣
118/218

117 教育という調教

「では、陛下。失礼いたします」

「失礼いたします」


「ああ、ご苦労だったな。ゆっくりしてくれ……」


明け方まで続いた、皇后陛下のありがたいお話

しびれを通り越してグニョグニョになった足を引きずりながら、部屋に帰る

腹黒王子も一緒にだ


「義父上、私にも治療魔法を……」

「甘えるな。その程度、自分で出来なくてどうする!お前は、少し教育が必要だな」


まったく、師匠だったらいきなり攻撃魔法を撃ち込まれるところだぞ

俺は優しいからしないけどな

黙って王子の腕に特製の腕輪を着けてやる


「あのぅ、義父上?これは……」

「いいだろう?私の師匠に貰った特別製だからな。魔力を込めて一定以上を維持しないと、激痛が走る魔道具だ。遠慮なく使え」


王子の喜ぶ声を聞きながら、俺は部屋へと急ぐのだった

強くなれよ、婿殿



産まれたての小鹿のような足取りの王子を連れているから時間がかかったが、ようやく部屋に帰ってきた


「おかえりなさいませ、旦那様。そちらの方は?」

「ああ、婿殿……マルス王子だ」


「お初にお目にかかります。公爵家の家令を預かります、スゥと申します」

「マルスだ。よろしく頼む」


サッとスカートを摘んで頭を下げるスゥ

対する王子はプルプルしていた


「とりあえずは、お茶を頼もうか。ベアトも呼んでくれ」

「かしこまりました」


いそいそと準備をするスゥを見ながらソファーに座る

王子は必死に耐えながらも立っていた


「婿殿、ここには身内しか居ない。楽にしていいぞ」

「はい、いや……しかし……」


チラッとスゥを見る王子

まあ、気になるだろうがな


「言っただろう。身内だけだと。念のために聞くが、獣人に何か思うところでもあるのか?」

「いえ、私は種族差別主義者ではありません。獣人に対しての事ではなかったのです。誤解させてしまい申し訳ありません」


言って、頭を下げた

よかったよ、どうやら教育しないで済みそうだ


「なら問題ない。いい機会だな……これを渡しておこう。スゥは信頼する家令だから、俺が居ないときは名代として扱え。わかったな?」


スゥに手渡したのは、爵位を貰ったときに陛下から貰った短剣だ

貴族の証……普通なら他人には絶対に渡さないものだ


「えっ!?旦那様、これは!」

「名代を置くのですか!?」


それぞれ違う意味で驚く二人

スゥは実質、公爵家のナンバー2として認められた事に

王子は名代って言葉にだろう


「今さら何を驚く。俺は優秀な者は評価する。人種や性別、思想も問わないさ。俺の為に忠義を尽くしてくれる者に差別はしない。これからも頼むぞ?」

「はい、はいっ!この命の限り……いいえ、来世でも旦那様に忠誠を」


若干、怖い事を言い始めたが無視した

この異常なノリはアルバートで慣れてる


「なるほど……これが義父上の家臣団ですか。これなら皇帝陛下が重用する筈ですね」


足の感覚が復活したのか、だいぶ喋るようになったな王子


「お前も自分の腹心をつくれよ?一人では限界がある。まだ時間はあるんだ、これから頑張れよ」

「はい、そのお言葉忘れません!」


うん、俺……いいこと言ったな

満足して紅茶を飲むと、ベアトが入ってきた


「ゼスト様、おかえりなさいませ」

「ああ、ベアト。義母上との再会は楽しめたかい?」


お腹をさすりながら俺の隣に座るベアト

王子はなぜか、ベアトをガン見している


「ベアトリーチェ義母上、マルスと申します。まさか、これほどの絶世の美女が義母となるとは……家族になれた幸福を喜ぶべきか、それ以上にはなれない不幸を恨むべきか。その、宵闇のような髪が神々しいうつく……」

「婿殿、ずいぶんと気合の入った挨拶だな。死にたいのか?」


ベアトの前に跪き、うっとりと挨拶をする馬鹿王子の頭を掴む


「アルバート!!」

「はっ!」


扉の外で待機しているアルバートが、喜んで入ってくる

察したんだろう


「アルバート、婿殿が訓練を希望している。たっぷり相手をしてやってくれ。後で私も行くからな」

「はっ!たっぷりと公爵家の流儀をわかっていただきましょう」


ニヤリと笑い合う俺達だが、まさかの横やりが入った


「ゼスト様」


ニッコリと笑うベアトからだ

王子は満面の笑みである


「義母を口説くような恥知らずは、徹底的に教育が必要です。お母様にも連絡しておきますね」


こうして、馬鹿王子は教育が決定したのだった

こいつは女で失敗するな

今のうちにしっかり教育してやろう



訓練所に馬鹿王子の悲鳴が響くこと三時間……

アルバートにボコボコにされ、俺に治療されてまたボコボコに

メイド部隊や黒騎士も参戦してのお祭り状態だった


だが、そろそろ王子の目から光が消えそうだ

いい加減に終わりかな?

そう言おうとしたときに、彼女も参戦したのだ



「養父上、養母上を口説いた馬鹿はどこですか!?」



完全武装のツバキにより、王子は徹底的に調教されたのだった……

ツバキ……ガントレットで婚約者を殴るのは、淑女としてどうなんだ?


「あらあら、楽しそうね。トトちゃん、私達も行きましょうね」

(わーい!お父さんがいるから、強めにいきますね!)


トドメの参戦である

俺は合掌しながら、治療魔法の準備をするのだった……


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