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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第二章 帝国の剣
110/218

109 義母との密談

「スゥ、少し席を外す。だが、私はここにいる。わかったな?」

「……かしこまりました」


頭を下げるスゥを部屋に残して廊下へ出る

彼女なら、意味を察してくれるだろう

誰にも見付からないように、気配を殺しながら義母の部屋に向かう


ベアトとトトはぐっすりだから、大丈夫

治療魔法付きのマッサージをたっぷりしたから、明日の朝まで起きないだろうな


深夜とはいえ、そこは城の中だ

巡回の兵士をやり過ごしながらコソコソと向かう

まさか、探知魔法がこんなときに役に立つとは……

なんとか無事に義母の部屋にたどり着いた


廊下から狭い通路に入る

絨毯が敷かれていないその通路は、使用人達が使う裏道だな

預かった鍵を使って、なるべく音をたてないように滑り込んだ



「待ってたわよ、婿殿。ふふ、ベアトに見付からなかった?」

「お久しぶりです、義母上。あの……上に何か羽織りませんか?」


部屋でくつろぐ義母ラーミア

深夜だからな……夜着なんだよ……

結構、ドキドキするレベルの


「あら?この程度であたふたするなんて……ベアトは着てくれないの?」


イタズラっぽく笑う義母

胸元が大きめに開いたシンプルなワンピースなんだが、これがなかなかエロいんだよ……

柔らかそうな素材と胸のコラボが素晴らしい


歳は……やめておこう、死にたくない


ようやく上着を羽織った義母に、ソファーに座るように言われる

本題が始まる前から疲れたよ


「あんまりからかっても可哀想ね。ふふふ、若い子にそんな反応されたのは久しぶりだから、つい……ね」


若い子って……俺はもう30半ばですよ?

それが若いなら、義母上は……


「婿殿?余計な事を考えてる余裕はないわよ」

「はい、義母上」


自分からかまったくせに……


「んんっ!それでね……貴族達の計画はエルフの王子に不敬をさせて、あなたかベアトと揉めさせる。なるべく殺して欲しいから、盛大に煽るわね……成功すればよし……駄目なら」

「貴族としての貫禄がない。そんな人物が公爵では……って、ところですか?」


「それを布石に、あなた達に側室を入れたいのよ。婿殿だけじゃないわよ?ベアトにも……ですって」

「……ベアトも完全に独立した公爵家にすれば、私の力が削がれて……ですか」


まだ、諦めてなかったのかよ

外交責任を盾に公爵家を二つに割りたいのか

俺もベアトも公爵を貰ってるからなぁ

分けようとすれば、出来なくはないけど……


「帝都の貴族に、私はなめられているのでしょうかね?」

「完全に平和ボケよ。機会があれば、何人か斬ってしまいなさいな。皇帝陛下は子爵以下なら文句を言わないわよ」


なかなか物騒な話だが、上級貴族としては不味い状況だよな

なめられたままにしておけば、つけあがる

ある程度は恐怖を植え付けないとな……


「わかりました。ちょっと釘はさしておきましょう」

「良さそうな馬鹿は処分しないで残してあるわ。適当にやっておきなさいね」


リストアップ済みですか

おっかない義母上だよ

さすがは辺境伯の娘だよな……


一息ついて紅茶を飲む

メイドが居ないから、義母が用意してくれたものだ


「……ぶっっっ!?ゲホッ!ゲホッ!」


思わず吹き出した

マッズイ……絶望的にマズイ……

さすがはベアトの母親だよ、メシマズは遺伝だ

しかし、どうしたら紅茶がこんなにマズくなるんだよ


「あら?婿殿ったら、大丈夫?」

「ゲホッ……だ、大丈夫です」


手で口を抑えたから被害は少ない

ハンカチを取り出して、手早く拭いていく


「……不思議なハンカチね、婿殿」


ゴミクズを見るような目だ

ああ、懐かしいベアトのようだ……

違う違う、なんだ?なんでそんな目で?


義母の視線は俺の手に向かっていた

紅茶を拭くハンカチへと



…………パンツだった


「婿殿?そのハンカチ……」

「……はて?なぜこんなモノが」


我ながら馬鹿みたいな言い訳だ

だが、これが限界だった

妻のパンツを忍ばせる貴族……普通にアウトだ

ましてや、それを義母に見付かるとか土下座するしかない


「それ……私が実家に置いてきた下着よ?それを私の前で使うなんて…………まさかっ!婿殿!?」


訂正しよう

切腹するしかない

義母のパンツを大事に持ち歩く婿……考えなくてもアウトだ


「わ、私はあなたの義母ですよ?そんな……ベアトになんて……そうよ!ベアトが妊娠中だから、魔が差したのよね!本気じゃないのよ、そうよ!」


真っ赤な顔で混乱中の義母上

混乱具合では、俺も似たようなものだ


「ま、待ってください!義母上!違います、知らないで使っただけですから大丈夫です!」

「……わかっているわ、そう言うしかないものね」


「違うんです!知らなかったんですよ、大丈夫です!」

「そ、そうよね?知らなかったのよね?大丈夫よね?」


その後、お互いに大丈夫を繰り返す不毛な会話が二時間続いたのだった



いい加減に疲れはてた俺は諦めた

俺が誤魔化す為に、嘘を言っていると義母は思い込んでいる

スゥを連れてきて説明させるしかない


……それはそれで地獄だか、義母のパンツ泥棒よりはマシだ


紅茶まみれのパンツを回収して、義母が席を外す

今日の密談は終了だが、手紙をくれるらしい

まあ、まともに話が出来なかったからな……やれやれだ


いたたまれない時間が過ぎていく

これ程、メンタルをゴリゴリ削られたのは初めてだ


しばらくすると、義母が手紙を持って戻ってきた


「消しても問題がない貴族の一覧と、今日の本題が書いてあるわ。自室で確認してちょうだいね?いい?すぐに確認するのよ?」


本題?まだ重要な事があったのか?

しかし、義母もメンタルがもたないらしい

疲れきった表情だ……勘違いとは恐ろしいな


「わかりました。義母上、今度はスゥを連れてきますから」

「?……スゥを?ええ、わかったわ」


お互いに気まずくて、目を合わせられない

今日は諦めて帰ろう……義母に挨拶をして、クタクタになりながら自室に帰るのだった





自室に帰り、手紙を開ける

出来る事ならもう寝たいよ?でも、パンツ泥棒が頭にこびりついている

寝れそうにはない……泣きたいよ


義母の言葉通り、一枚目は貴族のリストだ

こいつらは殺しても問題ないって事か……

いきなり斬りつける訳にはいかないからな、絡まれたら斬るか


二枚目の内容に、ボーっとしていた頭が覚醒した



『エルフの王子は、命の危険を感じて演技している。

陛下も疑ってはいるが、確証はない為に黙っています。

婿殿と話がしたいらしいから、時間を作っておくように』



これはまた……面倒事が増えるな……

馬鹿のフリをしないと殺されるのか?


だとしたら、今度一緒にくるらしいエルフ……そいつが怪しいな

馬鹿王子と名前だけの外務大臣を殺させるのが目的だった?

それが失敗したのだ、次は自分が動くだろうし……



二枚目の手紙を焼き捨てる

これは見られたらマズイからな


銀のトレイの上で燃える手紙を見詰める

馬鹿王子でも困るが、馬鹿なフリをしないといけない王子とか……もっと困る


完全に燃え尽きたのを確認して、封筒の中身を改める

すると、小さな包みが入っていた


まだ、オマケがあるのかよ……勘弁してください


小さな包みを開けていく

手のひらサイズの紙に包まれたそれ

タバコの箱大で、半分くらいの厚さのそれを開く


中からメモと布が出てきた



『婿殿、恥ずかしいから今回だけよ?』



義母上……あなたのパンツは要りませんから……

俺には泣くしか出来なかったのだった……

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