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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第一章 帝国黎明期
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10 お嬢様の秘密

神は居たらしい


相手の心を読む……なんだその反則魔法は!


だが、これで生き残れる!そんな事が出来たら怖いものは……うん、結構あるわ……

しかしかなり有利に話を進められるぞ、この魔法が本当に心を読めるならば……

先ずは試してみないとな



「お嬢様、お話中失礼します。どうやら彼女は勘違いしているのでは?」


さあ、何と答える?お嬢様


「?……勘違い……ですの?」

『え?勘違い?何を勘違いしてるのかしら?もう!私はあの子が心配なんだから邪魔しないで欲しいわ!』


相変わらず俺を見下しながら答える

だが、心の声が確かに聞こえてきた!これなら!


「申し訳ありません。お嬢様が彼女を心配なさっているのは充分解っております。ですが、先程の言葉を彼女は勘違いして、自分がお嬢様に疎まれ家族もろとも厄介払いされると思っているのでは?」


チラリとメイドさんを見ると俺の言葉に顔色悪く頷いている


「まあ、そのような勘違いをしていたの?困った子ねぇ……」

『ああ、またなのね……私はいつもこうなるのよ……私に優しいメイド達も大事に思えば思うほど居なくなる……』


その言葉にメイドさんは一層顔色を悪くする

……なんだろう?お嬢様にとっては勘違いされるのが日常的なんだろうか?

しかもお嬢様以外の心の声は聞こえないし……どうなっているんだ?


「ふむ。みな席を外しなさい。今までの出来事は無かった事にする。罰を与えるつもりはない。安心して戻りなさい」


師匠の言葉にメイドさん達が一斉に返事をして出ていく

三人だけが残ると、師匠はこう続けた


「何故、ベアトの言葉が勘違いされていると思ったのかね?」


完全に無表情だ……目が据わっている


「ベアトはな……闇属性の才能に溢れた子なのだ…闇の神の寵愛を受けていると言って過言ではない。しかし、それ故に他人から……その……」


言って辛そうな顔をする

お嬢様も高飛車な態度だが、何処か寂しそうでもある


『闇属性の才能なんて要らなかった……わたしは何でこんな目にあうのかしら……きっとこの方も嫌な子だと思うわ……私との結婚だってお祖父様に言われて仕方なく……』


なるほどなるほど、解って来たぜ!


闇の神の寵愛とやらで周りに誤解されてるのか!このお嬢様は!

だから言うこと為すこと裏目に出て誤解されると……


「はい、師匠。実は光の魔法を練習中に倒れた為にお嬢様を拝見したとき、つい光の魔法を発動しながら見つめてしまいました。すると私の目にはお嬢様が纏っている闇の魔力がとてつもなく強く感じたのです」

「ふむ。続けなさい」


「はい。私は光の魔法を自分に発動させました。純粋にお嬢様の魔法の才能に負けたくない。自分にもお嬢様と同じ、いやそれ以上の魔力を!と。お嬢様の魔法の才能に嫉妬したのです。恥ずかしい話ですが……」


ここまでは大丈夫な筈だ、もう少しだ


「すると、どう言ったら良いか……何かに守られているように感じたのです。その状態でお嬢様を拝見しているとその……」

「怒りはしないよ。素直な事を教えて欲しいのだ」


「は、はい。儚げで繊細な、優しい方であると……思いました……」


師匠は真顔だがお嬢様は……それ怒ってますよね?その顔


『は、儚げで繊細!?初めて……初めて言われたわ私……優しいともこの方はおっしゃいました……?』


あ、照れてたんですねお嬢様

普通に解りませんよそれ……


「ですので、そのような優しいお嬢様がメイドに無体な事などするはずはないと思いまして、勘違いであると」


言い切り紅茶を啜りながら反応を待つ

大丈夫だよな?大丈夫だよね?


「ふぅー」


大きな溜め息をついてから師匠は初めて見せる優しい笑顔で俺を見る


「闇属性の使い手はそのように勘違いされる事が非常に多いのだよ。みな知っては居るのだが余りに強い魔力は強制力もまた強い。そして娘は非常に強い魔力を持っている。そうなると闇属性のせいなのか娘の性格のせいなのかなど解る者は居ないのだよ」


お嬢様の頭を優しく撫でながら続けた


「辺境伯家は闇属性の家系でね、わたしも婿だから最初は驚いたよ。察してるように私も光属性だ。だからね、少しでもこの子が傷付かないように接して居たつもりだ。悪いのはこの子じゃない、私が悪いのだと思えるようにね」


あの悪い顔とセリフは娘を庇う為か……


「だが、安心したよ。私以上の光属性の才能に出会えて。君なら誰よりもこの子を解ってあげられる。幸せにしてくれるだろうね」


そう言って笑う師匠は、本当に優しい笑顔をしていた

そんな背景なら気苦労で胃に何回も穴が空くだろうに……


妙な親近感を感じるなぁ師匠……


『お父様、そんな事を考えていたなんて……ごめんなさい!冷たい、酷いお父様と思っていてごめんなさい!』


うん……お嬢様そう思ってるんだよね?凄く鬱陶しそうなお顔ですが……


「だから、ベアト。彼に大事にして貰うんだよ?」


「……は、はい。お父様」

『本当に?私を酷い女だと思わない?冷たくしない?』


うむ、これでかっこよく決めなきゃな!



「お嬢様、あなたが優しい女の子だと言うことは解っています。そのあなたが悲しむような事は致しませんし、大切にします。どうかご安心ください」


そう言って微笑むと、お嬢様はお得意の汚物を見る目……汚物目をしながら言ってくれた


「そう。私、庶民の暮らしなど存じませんの。ですからそれなりの暮らしをさせていただかないと困りますわ。それにあなたは異世界人なのでしょう?結婚までに色々と覚えていただかないと。でも美的感覚は覚えてどうなる訳ではありませんものね。憂鬱ですわ」

『喜んで結婚します!でも……この方は異世界人と聞いたけど、私を可愛いと思ってくださるのかしら?お嬢様育ちでお料理なんて出来ないし……異世界では奥さんが料理を作るのよね?無理だわ、ごめんなさい!だから結婚までにこの世界の事を理解して、私を責めないでね?ああ、大丈夫かなぁ?心配だわ……』



……こう変換されてるのか

苦労したんだろうなぁ……泣けてくるよ可哀想に



「うんうん、良かったね。ベアト」


師匠も嬉しそうで何よりです


「でもね?」


ん?








「今の魔法の腕とこの世界の知識では心配なんだよ私は……ベアトに相応しい男になって貰うよ?」








そう言って笑う師匠は辺境伯じいさんと同じ凶悪な笑顔をしていた……

『婿養子とか嘘だろ?』そう思いながら紅茶をすする

少しお漏らしをしながら……


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