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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第二章 帝国の剣
105/218

104 実家に帰って

「がははは……昨日はすまなかったな、ゼスト」

「ゼスト、次は治さなくていいですよ?まったく……」


「……その、ほどほどに……養父上」

「えっと……お大事に?お義父様」

(お父さんは腰が強いから大丈夫ですよね?)


トト、やめなさい

ベアトが真っ赤だから、やめなさい



気まずい朝食を終えて、辺境伯の屋敷に向かおうと準備をしている俺にメイドが声をかけた

辺境伯に魔族達の件を相談したかったのに、面倒事かな?


「若旦那様、商人のターニャ様がお目通りを願っております。いかがいたしましょうか?」

「ターニャか、久しぶりだな。応接室に通してくれ」


「かしこまりました」


頭を下げてメイドは出ていくが、俺は少し気になっていた

わざわざ商人が訪ねてくるんだから、挨拶だけではないだろうな

一応、ベアト達も同席させるか……



ベアトとトトを連れて応接室にいくと、初老の女性が待っていた


「ゼスト公爵閣下、ベアトリーチェ公爵閣下、お久しぶりでございます。トト様もお元気そうですわね」


相変わらず柔らかい物腰の女性だな

さすが商人だ、この笑顔だけでホンワカしてくる……やり手だな


「久しいな、ターニャ。息災か?」

「ありがとうございます。おかげさまで商いも順調で、体調も健康そのものですわ」


席に座り世間話スタートだ

毎回毎回大変だが仕方ない……これをしないと他の貴族からチクチク嫌味を言われるんだよ


「さて……そういえばゼスト閣下?なにやら素晴らしい物を開発されたとか……噂になっておりますわ」


先ほどまでの柔らかい物腰ではなく、ギラリとターニャの目が輝く

それが狙いだな?


「開発か……ああ、ブラジャーの事かな?」

「ええ、それですわ閣下。是非わたくし共にもご指導いただきたく……」


ふむ……まあ、秘匿するような物でもないし

あんまり独占してても妬みが怖いからなぁ


「他ならぬターニャの願いでは断れないな。なあ、ベアト」

「さすがゼスト様ですわ。素晴らしいご配慮ですわ」

(お父さんは優しいですね!女の人には!)


……トト?よく見なさい、ターニャはもうおばあちゃんだからね?

それに男にも優しいぞ?……多分


「ありがとうございます閣下。これはほんの手土産ですが……」


ターニャが差し出したのは、生地や宝石だった

そちも悪よのぅ……な、構図だが違う

あくまでも手土産だから問題ないんだよ


「そうか、もらっておこう。技術者の派遣等、細かい事は領地のカタリナに任せる。一筆書いておくからそのようにな」

「カタリナ様ですね、かしこまりました。よろしくお願いいたします」


「これは独り言だが、下着類の新しい試作品を開発中だからな。なかなか忙しいし、人手も足りないのだよ」

「それはまた、格別の配慮をいただいて……」


「ターニャ、独り言だと言っただろう。礼など言うな」

「あらあら、わたくしとしたことが」


はははは、オホホホと笑い合う

『内緒だけど新製品出すよ。費用提供と人材派遣すれば一口乗らせてやるよ』

『ごちになります』

意訳すればこうなる


俺の領地で独占ではなく、辺境伯と商人のターニャを巻き込んでリスクを減らす

最近は目立ちすぎだからな……少しは利益を還元しないと不味い

なるべくリスクは分散しないとな



その後、カタリナとのやり取りの手配をして話は終わりだ

大量の手土産で大金を使った筈のターニャは、ホクホク顔で帰っていった


まあ、利益を計算したら黒字だろう

商人って凄い嗅覚だよ



だいぶ遅くはなったが、辺境伯の屋敷に向かおう

昼ご飯を済ませてから向かったが、まだ時間はある

夜までゆっくり相談だな


「お帰りベアト、調子はどうだい?苦しくないかい?そうだ、早く屋敷に入ろうね?トトも相変わらずかわいいね。昔のベアトを見ているようだよ……あ、婿殿。元気だね、よかった」


「お久しぶりです、師匠。いや、義父上」

「お久しぶりですわ、お父様」

(かわいいですか?トトかわいいって言われました!)


若干、扱いがひどい師匠に連れられて屋敷に入る

ベアトのお腹が大きくなってきた最近は、ますます親バカ全開だ


「お嬢様があんなに優しい微笑みを……」

「ああ、お嬢様のお子様が見れる日がくるとは!」

「あんなにおそろし……凛々しかったお嬢様が母親の顔に」


メイド達のひそひそ話が聞こえる

お前達、苦労したもんな……交換日記とかさ……



実家に帰ってきたベアトは、すっかりくつろいでいる

トトもメイド達に世話されてニコニコしていた


「で、婿殿。ワシに相談があるそうじゃな」


何で俺だけ別の部屋で、辺境伯と仲良くツーショットなんですかねぇ……

悪い人じゃないって解ってはいるが、怖いからなこの人


「ええ。魔族の長、ニーベル殿から聞いた件でご相談があります」

「ニーベル殿か。それは、科学についてかのぅ?」


やっぱり知ってるのか


「はい。何故、彼等は科学を否定……監視するのか?理由が知りたいと思いまして」

「ふむ……婿殿、急がぬほうがよい。それはニーベル殿が時期を見て自ら説明するじゃろう。それまでは調べるのはやめておけ」


じっと目を見詰めながら語る辺境伯


「婿殿が知りたいと思うのは当然じゃ。しかし、焦ってはいかん。もう少し待つのじゃ……頼む……」

「なっ!?おやめください!」


まさか辺境伯が頭を下げて俺に頼むとは……これは断れないな

よほどの理由があるのだろう


「解りました、ニーベル殿の説明を待ちます」

「そうしてくれ。これでワシも安心出来るわい」


心底、ホッとしたように笑う辺境伯


「安心したところで、ベアト達のところに合流しますか?久しぶりの里帰りですから」

「ふぉふぉ、そうじゃのう。ベアトが子を産むのか……ワシも歳をとる筈じゃわい」


辺境伯と一緒に師匠の部屋に向かう

ベアト達はそこでお茶会の真っ最中だろうな


珍しく優しい笑顔の辺境伯が、師匠の部屋のドアを開ける

そこに現れたのは戦場……いや、地獄だった



「まさか……ゼスト様があなたに求婚していたと?」

(お母さん、キューコンって?お花の種ですか?)


「はい、ベアトリーチェお嬢……いえ、公爵閣下。その通りでございます」



床に正座する師匠とアルバート

懐かしい底冷えする黒い魔力を纏うベアト

ぷるぷる震える犬獣人のメイド


そして……


「婿殿…………求婚とは、どういう事じゃな?」


真っ黒な笑顔の辺境伯


久しぶりのピンチに俺は少しマーキングをしてしまう

これは……ヤバイかも知れません

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