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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第二章 帝国の剣
103/218

102 久しぶりの両親

「がははは、久しぶりだなゼスト!元気だったか」


「お久しぶりです、養父上」

「お義父様、お久しぶりですわ」

(お父さんのお父さんだ!お久しぶりです!)


あのポンコツシスターとの結婚騒ぎから一週間後、俺達は辺境伯領地にある養父ガレフの屋敷にきていた

帝都でのエルフの馬鹿王子との顔合わせがあるし、養母の出産祝いもあるからな



「おお、ベアトリーチェお嬢様……いや、ベアトも順調そうだな。お腹の子を大事にな」

「ありがとうございます、お養父様」


養父上、俺の肩はガンガン叩くのにベアトには優しいですよね

差別か?差別なのか?

痛む肩に治療魔法をかけるが、また叩かれる


「とりあえず屋敷に入れ!話はそれからだ、がははは」


バンバン肩に衝撃を受けながら懐かしい屋敷に入る

足もとの石畳が衝撃でひび割れるのを、もう使用人達は驚かない


(お父さんは頑丈ですね!石より固いなんて凄いです!)


素直なトトを撫でながら屋敷に入り、応接室についた

トトは癒し系だなぁ……最近は政治家並みに空気読むけど



応接室には懐かしい笑顔があった

久しぶりだ……思わず俺も笑顔になった


「久しぶりね、ゼスト。元気だった?病気してないかしら?」


ギュッと、優しく抱きしめられる

ああ……母の優しい香りだ……帰ってきた感じだな


だから養父上、殺気を出すのはやめてください

相変わらずセリカ養母上にベタ惚れですね


「お久しぶりです、養母上。少しお痩せになりましたか?体調はいかがですか?」

「ふふ、大丈夫よ。少し寝不足だから、食欲がなくて……」


そう言って笑う養母上は、顔色が悪い

治療魔法をかけながらソファーに座らせた


「ありがとう、ゼスト。楽になったわ」

「お義母様、お久しぶりですわ。後程、赤ちゃんを見せてくださいませ」

(お父さんのお母さん!お久しぶりです、良い匂いです!)


「あら、ベアトもそろそろお腹が目立つわね……楽しみだわぁ」



女性軍団はキャッキャッと、お茶会が始まった

さりげなく離れながら様子をみる

下手に巻き込まれると、録な目にあわないからな


「ゼストよ、今日はここに泊まるだろう?ゆっくりしていけ」

「ありがとうございます、お言葉に甘えます」


さっき義母上に抱きつかれた事を怒ってませんか?

バンバン肩を叩く力が五割増しである


「それに、話もあるからな……ゆっくり聞いていけ」


真面目な顔でそう告げる義父

…………やっぱり、ただのお泊まり会にはなりそうもないらしい



久しぶりの両親との再開だが、懐かしんで喜ぶだけではないらしい

夕食を済ませると、養父の部屋に呼ばれた


ベアトとトトは義母上の部屋で仲良くおしゃべり中だ

俺だけが呼ばれている

つまり、内緒の話があるんだろうな……何か重要な話が



「養父上、ゼストです。話とは?」


養父の部屋でソファーに向かい合って座る

珍しく思い詰めた表情の養父だ……よほどの事だな


「ああ、解っているとは思うが他言無用だ」

「解っております、養父上」


グラスの酒を一気に飲み干して、養父は告げる


「実はセリカの事なのだ…………」

「養母上が?いったいどうしたのですか?」


「うむ……そうだ、出産後から体調が優れなくてな。今日は助かったぞゼスト。感謝する」

「やめてください、親孝行に礼は要りませんよ」


「……そうだな、確かにそうだ。それでセリカなんだが……」


そこまで言って言葉につまる

俺は養父が話すのをじっくり待っていた

それほど、言いにくいのだろうな


どれくらい時間が過ぎたのか……ようやく養父が口を開く



「セリカがようやく……ようやく……出来るようになったから、つい激しくしてしまってあのザマだ……もう、させません!と…………」



……………………?

え?それは、痴話喧嘩ですよね?


「最近は一緒に寝てもくれないのだ…………私はどうすればいいのだ!」


男泣きしながら震える養父を見詰める

泣くなよ、養父上……それに限度が有るでしょうが

覚えたての若者ですか……


しかし、気持ちは解るんだよ

もしベアトがそうなったら……想像するだけで胃が痛い


「養父上、よくぞ話してくださいました。男として、良く解ります!」

「ゼスト……解ってくれるか……」


「無論です。もし……私がベアトとそうなったら、八つ当たりで国の一つや二つは攻め滅ぼします」

「さすがは我が息子だ……私も同じだ。今すぐ戦争に行きたい気分だ!」


比喩表現だ、あくまでも比喩表現である


「養父上、マッサージを覚えてみませんか?養母上にマッサージをして身体と心をほぐすのです!」

「……まっさーじとは?私に出来るのだろうか……」


そう、マッサージはこの世界には浸透していない

だからこそ、効果はある筈だ

心配げな養父の手を握り、説明した


「大丈夫です。マッサージとは、身体を優しく揉みほぐして安らかな気分にさせる技術です。練習すれば誰でも出来ます!」

「練習あるのみ、か……だが、私は無駄に力があるからな。上手く手加減出来るかどうか……」


なるほど、自覚はあるんだな

なら私に手加減してくださいよ、養父上

いや、今は練習が先だな……よし



「アルバート!アルバートはいるか!?」




その後、アルバートの悲鳴が徹夜で続く事になった

養父上が壊して、俺が治療魔法で治す

アルバートの目から光が消えた明け方には、見事なマッサージ師が誕生していた


早朝からハイテンションの養父は、養母の部屋に突撃していった


「……ゼスト様、私はお役にたちましたか?」

「うむ、アルバート。よくやった……ゆっくり休め」


「……御意」


真っ白に燃え尽きたアルバートを見ながら紅茶を飲む

窓の外は、だんだん明るくなってきていた

……俺は徹夜で何をやっていたんだろうか


涙を拭きながら自分の部屋に帰ると、ベアトとトトが仲良く寝ていた

起こさないようにそっとベッドに入り、少しだけ仮眠をとったよ



昼頃に起き出して、部屋で起きるのを待っていてくれた二人と食堂に向かう


「ゼスト様、大丈夫ですか?昨日は遅かったですから、心配しました」

(今日は一緒にいっぱい寝ましょうね!)


「ああ、大丈夫だよ。ありがとう、いっぱい寝ような」


食堂には両親がすでに待っていた

艶々のツルツルだ……お楽しみだったのか?

仲直りしたなら良かったけどさぁ……


ニコニコイチャイチャする二人から、目をそらしながら食事を終える

食後の紅茶を飲んでいると、養父がボソリと呟いた



「ああ、そういえば魔族の長が午後から来るぞ」



ちょっとコンビニ行ってくる

そんなノリの一言に固まった


…………痴話喧嘩より、そっちを早く教えてくださいよ

嫌な予感しかしないです

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