100 一難去ってまた一難
「もう、ヤキモチ焼きね。私が婿殿とそんな事、するわけないじゃない」
「ははは、義母上。もう許してあげてください」
「……申し訳ありませんでした」
(お母さん、お顔が真っ赤です!)
激しい物理的なお話と、綺麗な川とお花畑が見えるお散歩だった
ピンクダイヤのおかげで誤解がとけたが、戻ってきた俺達は義母上にからかわれていた
「ベアト、心配しなくてもいい。君だけを愛してるんだよ」
「……ゼスト様、私は悪い女です。旦那様を信じないで」
「ヤキモチ焼きなベアトもかわいいから、大丈夫だよ」
「もうっ!ゼスト様ったら!」
「ねぇ、トトちゃん。私が居るのが見えないのかしら?あの二人は」
(ラーミアお母さん、ああなったら無理ですよ!)
二人だけの世界でイチャイチャしていたのだが、うっかり出た一言で修羅場になる
「でも、私には髪の毛を艶々にする魔法をしてくださらないのに……どうしてお母様だけに?」
「ベアトは元々、綺麗で艶々な髪じゃないか」
「あら……そうですか?」
「そうだとも。瑞々しい、若さが溢れる……」
「あらあら、私は年寄りだからパサパサなのかしら」
こめかみに青筋が浮き出ている義母上
まだ居たのか……違う、これはヤバいパターンだ
「義母上、何をおっしゃいますか。ベアト一筋な私もドキリとするような、妖艶な魅力は……」
「ゼスト様?お母様にドキリとしたんですか?」
ヒヤリとした黒い魔力が流れてくる
これ、さっきくらいましたわ
「ははは。ベアトがもっと大人になると、こうなるのかなって意味だよ。かわいいベアトが、どんな女性になるのか楽しみなんだ」
「子供扱いして……私も母になるのですよ?」
「だからさ。今のうちにかわいいベアトをしっかり記憶に焼き付けないとね」
「ゼスト様ったら。仕方ないですわね」
頭を撫でると、ニコニコしながら寄り添ってくる
よし!誤魔化しきれた!
「婿殿?もしかして、誤魔化しきれたと思っていませんか?」
顔を上げると、辺境伯笑いの義母上が鉄扇を構えていたのだった
駄目みたいです……これだからおばさ……オネイサンは扱いにくいわ
お土産にブラジャーを渡す約束をして許してもらい、ようやく自分の部屋に帰ってきた
やれやれだ……本当はブラジャーが欲しかったんだろ、義母上は
とりあえず納得した義母上は、明日ツバキを連れて帝都に向かうらしい
これで一段落だな……
紅茶を飲んでベッドを見ると、俺に全力で頭を撫でられたベアトはもう眠っている
トトも仲良く寝ているな……本当に親子みたいだ
俺も寝ようとイスから立ち上がり、ベッドに潜り込んだ
ベアトとトトの温もりを感じながら、長い一日が終わっ……
「ゼスト様、寝てしまうのですか?」
「ベアト、起きてたのか……」
「……お詫びをしようかと」
「どんなお詫びをしてくれるんだい?」
そっとベアトを抱き寄せてキスを
(お父さん、おしっこ)
…………出来ませんでした
次の日、手早く着替えて執務室へ向かう
トトに邪魔されて、欲求不満だが仕方ない
今日はベアトにお願いしよう
少しニヤニヤしながら執務室で義母上を待つ
義母上とツバキがきたのは直ぐだった
「義父上、ツバキ参りました!」
「うむ、ラーミア義母上がお前を帝都に連れていってくださる。挨拶をしなさい」
義母上に向かいビシッと敬礼するツバキ
「ラーミアおばあ……」
「まあまあ、ラーミアでいいわよ?それを言ったら、私……どうなるかしら」
「ラーミア様、よろしくお願いいたします!」
うん、おばあ様はマズイ
察したようだなツバキよ
「ツバキちゃん、見違えたわよ。しっかり教わったのね」
「はっ!ラーミア様。公爵家の一員として、恥ずかしくないようにいたします!」
「懐かしいわぁ、ベアトも似たような話し方だったのよ?」
「義母上と似ているとは、光栄です!」
うんうんと頷く義母上……良いのかよこれで……
いや、良いなら問題ないけどさ
ベアトもこんなだったのかよ
「よくちょうき……教育してくれたわね、婿殿。さあ、いきましょうか?ツバキちゃん」
「はっ!義父上、お世話になりました!いってまいります」
「うむ、達者でな……また帝都で会おう」
調教と言いかけた義母上に連れられて、ツバキはドナドナされていく
まあ、結婚前に帝都に行くからな
…………またバカ令嬢にならないでくれよ?
お土産を満載した馬車が出発して、ようやく落ち着ける
一ヶ月後に帝都でエルフの王子と顔合わせだから、それまではゆっくり書類仕事だな
新婚旅行でたまっている仕事を片付けるか
久しぶりの書類仕事をサクサク片付ける
良いリフレッシュがあったから、仕事が捗るよ
順調に働き、夕方には予定の倍近くを終わらせていた
これなら二週間で終わるな……また海でも行くか
そんな予定を考えている俺に、悲しいお知らせが届いた
「閣下!大変ですニャ!」
血相を変えて飛び込んできたのはカタリナだ
胸はBカップに落ち着いたらしい
「カタリナ。お前も貴族なんだから、もう少しおしとやかにしろ。騒がしいのはメイド部隊と黒騎士で間に合っている」
紅茶をゆっくり口に含む
良い香りだ……今日の茶葉は、高級品だな
「閣下!アルバート卿が、シスターと結婚すると言ってますニャ!」
ブッーーーーと、紅茶を吹き出した
シスターと結婚?アルバートが?
いったい、どんな流れでそうなったんだ……また面倒事かよ
頭を抱える俺に、もう一つの不幸がやってきた
「ゼスト様……カタリナになんて事を……」
(うわぁ、カタリナお姉ちゃんスケスケです!)
紅茶でシャツが濡れてスケスケ状態のカタリナ
涙目でプルプルしている……この状況は…………
また…………お話かもしれません…………




