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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第二章 帝国の剣
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99 義母のお願い

「あらあら、お久しぶりね。元気だったかしら?婿殿」

「お久しぶりです、義母上。えっと……活動的なお洋服ですね」


執務室で優雅に紅茶を飲む義母ラーミア

相変わらずのメイド服だ……熟女メイドとか需要があるのだろうか?

急ぎすぎて、産まれたての子馬のようにプルプルする足に強化魔法をかける

バレないように深呼吸しながら彼女の前に座った


「新婚旅行ですって?素敵ね、羨ましいわ」

「義母上が言ったら、すぐにでも師匠は行きそうじゃないですか。いつまでもお熱い秘訣を教わりたいですよ」


はっはっは、オホホホと社交辞令から入る

家族でも貴族のしきたりには厳しいんだよな

『家族だからこそ、練習にちょうどいい』とは、師匠の言葉だ



「それでね、婿殿……」


いよいよ、本題ですね

紅茶を飲んで覚悟を決める


「ライラック聖教国と組んで、謀反でもするの?」

「…………は?」


なんだその物騒な質問は……まさか、帝都はそう思っているのか?


「義母上、あり得ませんよ。まさか帝都は疑っているのですか?」

「一部の貴族が騒いだだけよ。でも、無視する訳にはいかないから私が派遣されたのよ」


困ったような顔で、鉄扇をパタパタする義母上

あの鉄扇、机に置くとミシミシいう程重いのに……


「ですが、家族を……身内を派遣しても意味は……」

「だって……宮廷魔導士で席順だと、私しかいないじゃない」


…………そうだった、上位独占してるから仕方ないのか

へたな奴を派遣しても俺には勝てない

勝てそうな希望があるとしたら、義母上だけか……それに……


「そうか、あくまで形だけは派遣した事にしたいと」

「物わかりがいい子ね、本気で疑ってはいないわよ。でも形式が大事なのよ……まったく面倒ね」


ニコリと笑う義母上

あくまでも確認はしたという形式が必要だったのだろう

帝都の貴族は、そんな形式ばかりを考えて飽きないのかな


「だから私の仕事は、半分終わりよ。ツバキお嬢ちゃんを帝都に連れて帰れば全部終わるけど……どうなのかしら?」

「大丈夫ですよ、厳しく調きょ……んんっ、教育しましたから。他国で恥はかきませんね」


「そう、なら安心だわ。ああ、例の侍女だけど実家に帰ったわよ。親が不正をしていて、発覚したみたいね……大変ねぇ」

「それはそれは」


例の侍女……ツバキの取り巻きをしていたアレか

辺境伯あたりが仕込んだのかな?さすがです


「あと、皇帝陛下は被り物がなくなって大騒ぎだったわよ?」

「……それはそれは」


チラリと睨まれた

俺じゃないよ!トトが捨てたんですよ、陛下のカツラは!


「仕方ない子ね。あまり、おいたしたらダメよ?」

「義母上のお言葉、ありがく頂戴いたします」


笑いながら言われた

意訳すると、

『私もムカついたから、まあいいわよ』

『やっぱりムカついたんですね、わかります』

こうだな


さすがに声には出せないから、回りくどい言い方になる

最近は慣れてきたよ



その後は、新婚旅行の話やお土産の話……それに最近の領地の様子などを話ていた

漁村については帝都でも話題らしい

漁が出来る場所は少ないから、魚は貴重品だからな

たっぷりお土産に渡しておくか


そんな話をしていると、だいぶ時間が過ぎた

窓の外は夕焼けだ……明日は晴れるかなぁ



会話が途切れて油断していた俺に、義母上がスッと近付いて隣に座る

……フワッと良い匂いがして、ドキドキした


「ねぇ、婿殿……いえ……ゼスト」


やけに色っぽい声色の義母上が、腕を絡めて上目遣いである

ベアトが大人になったような外見だから、これはかなり効くな


「どうしました?義母上」


腕にあたる胸の感触を、なるべく気付かないようにしながら尋ねる

誘われてるのか?これは……でもおばさ……オネイサンで義母上だからなぁ……


「あのね、ゼストにお願いがあるのよ……聞いてくれる?」

「……私に出来る事ならば」


なるべく誤魔化した返事だ

『はい』とも『いいえ』とも言ってない


ニヤリと辺境伯家らしい笑みを深めた義母上は、本当に怖い


「もう、用心深いわね。簡単なお願いよ……髪の毛なんだけど」

「…………」


「ん?どうしたの?青い顔をして……私の髪の毛をまた、して欲しいのよ」



…………また…………して欲しいだと?

オカズにですか!?義母上!?


いや、違うな……落ち着くんだ……

そんなエロチックな義母上じゃないから、意味がある筈だ!


「あ、あのぅ義母上。髪の毛とは?」

「ウフフ、髪の毛にゼストが触って撫でたでしょう?あの後、艶々のツルツルになったのよ。独自の魔法かしら?もう一度、お願いしたいのよ」



なんだ、やっぱり俺の勘違いか……

おかしいと思ったよ、義理の息子を誘惑するなんてマンガくらいなもんだからな


「解りました、やってみますよ」


ニコニコしている義母上の頭を撫でながら、イメージする

あのシャンプーとリンスのCMだ

しっとりなめらか……瑞々しい、水分を含んだ髪の毛をコーティングするイメージだ


魔力を込めながら撫でれば、どんどん美しい髪の毛になる

……面白いな、これ


両手で頭を……髪の毛の感触を確かめながら撫で続けた



うっとりと撫でられていた義母上は、いつの間にか寝ていた

寝顔はベアトにそっくりだな


親子だなぁと思いながらも、まだまだ撫でていた




「まあまあ、ゼスト様ったら。お母様と仲良くて嬉しいですわ」

(うわぁ、お父さんはラーミアお母さんとも子作りするですか?)




ゆっくりと振り向くと、ドアの隙間から二つの顔が見えた

小さい黒髪と、普通の黒髪の二人組だ



「ゼスト様……お散歩しましょうか……お話しましょうね」

(あ~、ねむいねむい。ラーミアお母さんとおねむしよう)



無表情で棒読みの二人組が部屋に入ってくる

勘違いだと伝えたい


だが、義母上をソファーに寝かせて、膝枕しながら頭を撫でる俺はどう見ても下心ありだ

…………頭を冷やされに行ってきます…………

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