等活
すいません、これ起承転結の起承に当たる部分なのでちょっと短いです
かつての職場をゆっくりと進む。
今までは思い出すまいとして、回想することなんてなかった。
それでも身に染みついたものを忘れることなどできなかった。
あたり一面に懐かしさを感じるが、明確な差異が存在します。
まず、感じたのは腐臭。
そして、視覚に悪夢が映り込んだ……。
目的地にあったのは、無数の骸としゃれこうべ、当たりを見渡す一人の少女。
ーーー何だこれは
そこで僕は一旦停止した。
涙すら流していたと思う。
また、だれも救えなかったと。
もし、少女がいなかったら、僕はそのまま永遠に停止していたことだろう。
「……良かった! 良かった!!」
歓喜のあまり、駆け寄ろうとした。だが、その歩みが止められる。
ーーーなぜ止める。
叫びをあげ今にもつかみかかろうとした……
続いて少女は体から血を噴き上げ倒れるが
ーーー傷が時間を巻き戻すかのように、塞がっていった。
思わず、崩れ落ちた。
何も救えなかったという現実の前に。
騎士たちが臨戦態勢を取り始めた。これから化け物退治にしゃれ込むのだろう。
ーーー知ったことか。もはや何もかもがどうでもいい。
そう思い、瞳を伏せた瞬間。
体に、温かい何かが降り注ぐ。
ーーー何だこれはと、あたりを見回すと、化け物が詰まらなさそうに立っていた。
血だ! この暖かいものは。
その事実とともに、不快な叫びがあたりにこだましているのに気が付いた。
不愉快だと思った。
何しろ狭い洞窟の中での出来事だ。こんな状況でなくとも、何重にも周囲に反響する声は人を不快にさせるだろう。
しかも、今は状況が状況だ。周囲の人間が不安がっているだけでも、致命傷になりかねない。
だが、次の瞬間にはそんなことを考える余裕もなくなった。
ーーー首がもげたと思った。
後方へと吹き飛ばされ、二転三転する。
死んだなと思ったが、存外僕は丈夫らしい。体のあちこちが痛いだけだ。
あれ? そんな状況でも、何かがおかしい多思った。
ーーーどうして、爪を使って切り裂かなかったんだ。
考えて、僕の手は喉に向かった。
ーーーどうして、熱を持っているのだろう、まるでついさっきまで叫んでいたみたいですね。
そうか!
ーーー皆を、混乱に陥れたのは僕だ!
目の前の化け物は、大声に反応して手を出しただけなのでしょう、だから、僕も軽傷で済んだ。
体の痛みとは別の痛みが僕に降り注いできた。
恐怖と不安という名の痛みが。
騎士たちも、この段になると剣を握ってはいますが、その動きは鈍い。
耳をすませば、不愉快な音が残り続けている。
「一体何が起きた!」
「センス様ご無事ですか!」
「見えなかったぞ!! クソッ!!」
「離れろ的になるぞ!」
恐怖、不安、混乱に悲鳴が呼応してか、皆が勝手なことを叫ぶ。
慌てて辺りを見回す。
最も、目の前の恐怖の権化がいるのだ、チラリと視線を向けるのが精いっぱい。
皆が、震えていた。
僕という一点から広まった恐怖によって。
僕から、零れ出た混乱のひと雫が、清廉な泉に濁りをもたらした。
これは僕のせいだ!
一体どうすればいい!!