sideシック 叫喚
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師のことを考えたら、胸が張り裂けそうだ。
僕にとって、師はどこまで行っても愛しいエリンの父親だからだろう。
研究者として、打ち込み杉田氏ならきっとこう思っていたのですかね。
☆
私のいう人間は優れた人間だ。これは、客観的に事実に基づいて出した結論でもある。
皆が、私をほめそやした。
神童と呼ばれ、幼いころから難解な真理を探究していた。
大人になってからも、次々に優れた発見を見出した。
これで自信が優れていないというならば、それは自虐でしかないだろう。
だからこそ、私は優れている。
そんな私が、伴侶に選んだのは凡庸な女だった。
様々な女が私に言い寄ってきたが、いい加減それも煩わしくなって、適当な女を見繕うことにした。
女の名はエリナ。
私とは幼馴染の関係にある、出しゃばり過ぎない女である。
研究さえできればいいという私を、甲斐甲斐しく支え、望んだとおり出しゃばりすぎることもなかった。
なので、喧嘩など一度もせず、夫婦生活は悪くはないものだった。
いや、一度だけ喧嘩をしたことがあったか。お産の周期を見てこの日と予定した時に、約束をすっぽかした時だ。
お産なんてもの、予定日道理にいかないのが常なので放っておいたが、娘が生まれたのはまさにその日だった。
あらかじめ、名前を考えていたのだが、そのせいで命名を妻に譲ることとなった。
とはいっても、その程度のことで生活が変わることなどない、これまで道理研究三昧の日々を過ごしていた。
なぜなら、私は優秀な研究者だったから。
異変があったのは、それからしばらくのことだった。
産後の日達が悪いせいか、エリナが体調を崩すことが多くなり、ベットで寝て過ごす日が増えた。
私は、どうにかしようなどとは思わず、仕事に打ち込んだ。
来る日も、来る日もだ。そして……。
妻が死んだ。
私は何もしなかった。
エリナが体調を崩していたことを、知っていたにもかかわらず、何もしなかった。
一緒にいてやるために、仕事を切り上げることができたのに、何もしなかった。
家事や子供の世話をするのを、時折辛く感じているのを見ていたのに、何もしなかったのだ。
その積み重ねかどうかは分からないが、妻が死んだ。
残されたのは、 私と娘だけ。
葬式の時、エリナの棺に土をかぶせていた時、要約、私は家族のかけがえのなさを知った。
男で一人で、娘を育てる私に、周囲は暖かく接してくれた。
家庭というものの、大切さを知った私は、これを手放すまいとした。
その思いも時間とともに薄れていく。
魔がさしたというやつだろう。
娘が成長し、手がかからなくなると、時間に余裕ができた。
この時間を研究に注ぎ込んだ。
気が付けば、仕事にかける時間が増えていった。
こうなってくると、働きすぎというのは、私が生来持つ病といえるだろう。
気が付けば娘の相手をする時間が減っていった。
娘もまた、献身的に私を支えてくれた。
口答えしたことはないし、家事もよくしてくれるし、誠意をもって私を支えてもくれた。
あまり構ってやらなかったというのに、いい子になってくれたと、私の心はいっぱいだった。
そんな娘が、ある日男を連れてきた、なんでも私の助手になりたいらしい。
娘が連れてきただけあってよく働いてくれる若者の名前はシックというらしい。
シック君は、誠実な男だった。
しばらくすると、娘を見る目に、熱があることに気が付いた。
そう、シック君は、娘に恋をしていたのだ。
娘のほうを見ると、こちらもまた、満更ではなさそうだ。
私は、それを温かく見守ることにした。
いつかこの二人が結ばれるのを信じて。
けれど、現実というのは、そうそううまくいかない。
シック君は、待てど暮らせど、娘にプロポーズすることなく時間だけが過ぎていく。
しまいには、娘は、違う男性と接近していった。
これが悲劇の始まりだった。
娘は死んだ。
騙されて、絶望してだ。
その男は、私の研究を盗み出さんとしてやってきた,スパイだったのだ。
言い換えれば、私はまた、仕事の末に家族を殺したということだ。
このような悲劇認めてなるものか。
だから、塗り替えよう。
たとえ、どれだけの血が流れようとも、私は止まれない。
私は罪人として裁かれることとなるだろう、娘も、私を受け入れてくれないとも理解できた。
それでも、私は前へと,進まなければならないのだ。
その先に破滅が待っていようとも。