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苦悩と絶望の狭間に

三話目です。ヤンホモおいしいです。

グロあり。


結局、相手は十六夜さんになり、地獄を味わい、今日の一日は終わった。

やはり、十六夜さんは怖い。確信した。


『これからは指定された部屋で寝ることになるから、番号通りの部屋に行ってね。はい、この地図に書いてあるから…迷わないでね?あとこれ、ルールとか書いてあるから目を通しておきなさい』

医務室の先生に渡された紙を見る。


*教育舎の5階からは生徒の寮になります

*消灯時間は守るように

*起床は6時

「まぁ普通の寮って感じだな…」

ルールなどに目を通した、地図をみる。6階の66号室に赤丸がつけられていた。自分の部屋はそこのようだった。

指示された部屋に向かう。階段を上る。これがなかなか大変だった。一階から六階は流石に体力を削られてしまった。

66号室。これからどんな地獄が始まるのか。考えるだけで嫌だ。気分が悪くなる。


『気持ち悪い』『来んじゃねぇよゴミムシ』『消えろよバーカ』


『お前なんか誰にも好かれてねぇんだよ…気づけよ…』


手が震える。ドアノブを握ったまま数分経過した。落ち着くんだ…


ガチャッ


「あ、蒼瀧さん。大丈夫ですか?」

シェンドが声をあげる。隣には翠緑がいた。

「医務室の先生から聞いたよ?ありがとう、受け取っておくから」

翠緑が言う。顔は笑っていた。

その笑顔が、おれには怖い。

どうせ裏があるのだ。裏も表もないのはメビウスの輪くらいだと思う。

「飛鳥!だーかーらー....出てきて下さいよ!」

「わかってるよ!!偉そうな口をするな!普通の差別もされてない人間が...苦しみも知らないくせに!!」

「だから違うって言ってるでしょう!!」

どうやら修羅場だったようだ。シェンドのあんな声は初めて聞いた。

「あー.....ごめんね。今ちょっとまずいから向こう行こうか。」

「え、あ、うん」


「何が違うんだよ!!お前みたいなのが偽善者だろうが!!いきなり今日から部屋移動させられてクラスの人気者と同室だとかおかしいだろ!」

「だから....!!」

「五月蝿い....!!どうせ俺らを馬鹿にするんだろ!?わかってんだよこの偽善者!!」

飛鳥がシェンドのシャツの襟を掴む。

ドス、とシェンドは壁にぶつかる。もう片方の手で首を締める。

「.....ぐっ....やめ...」

ギリギリと力を込める。飛鳥は止まらない。

「がはっ....あす、か....」

「死ねよ、この偽善者が。」


ぼきり


嫌な音がした。部屋全体が静かになった。聞こえるのは飛鳥の荒い呼吸のみ。

「はぁっ....はぁ....」

飛鳥は力が抜けてしまい、壁に体を任せたままだった。また、やってしまった。しかも今回は相手は同類ではない。俺の中の悪魔は人格をもおかしくする。いや、俺は多重人格ではない。悪魔でも何でもなく、ただ、今のは自分だ。俺の中に悪魔など存在しないし取り憑かれてもいない、本物の自分。相手に向けられた怒り、嫉妬、恨み。人を傷つけるという恐怖。しかし、今回は相手が死んだのだ。確実に俺は死刑だろう。

考える。時計の秒を刻む音。


しばらくして、違和感を感じた。ずるり、ずるりと音がする。虫とかかな。眠ってしまったのだろう。あの二人は何処へ行ったかな。多分、医務室。あそこの先生、優しいから一日くらい泊まらせてくれるんだろうな。

なんか、肌が気持ち悪い。誰かに触れられているような。しかも、体が熱い。

汗ばみ始めた体に自分に何が起こったの

かわからない。

「はぁっ、何だ、これ...」

下を向く。そこには、殺したはずの、

シェンドの姿があった。俺の上に乗って彼はニコニコと笑い、言った。

「僕が何故死んでいないのか知りたいですか?」

「ひっ...何だよ....お前...」

逃げようとするが、後ろは壁だ。逃げられない。手が床に食い込む。

「僕の体、見て下さいよ....」

彼はそう言うと、服のポケットからナイフを取り出す。シャツのボタンを外し、ナイフを体に突き立てた。傷口から血が溢れる。そのままナイフを縦に移動させ、腹部を開いた。開いた傷口からは内臓が見えた。しかし、有るべき場所に有るべきものがない。肝臓や腸が見当たらない。おかしい。見たことのない光景を目の前にして、飛鳥の動きが硬直した。

「くっ.....ほら、どうですか?綺麗でしょう?僕の中を見て興奮してますか?」

口から血を零し、興奮した様子でシェンドはいう。興奮しているのはお前だ。嬉しそうな顔で俺に質問してきた。血に濡れた手で俺の顔を自分にむける。

「冗談じゃない、離せ!!」

抵抗する飛鳥を気にもせずにシェンドは言葉を紡ぐ。

「僕は貴方と一緒。伝説上の生き物である筈の悪魔。僕の秘密、知りたいでしょう?」

「誰が知りたいかよ...お前の事なんて...」

視線を飛鳥から逸らす。

「嘘。顔に出てますよ?知りたい、と」

「何で分かるんだよ....」

しばらくの沈黙。シェンドの笑顔が消えた。彼の顔は、とても同い年に見えなかった。大人びた、目が俺を捉える。

「悪魔は身体に特徴が現れます。例えば、蒼瀧さんのように。片目がないなど外部に特徴が現れる種類を、外部欠損型と言います。貴方のような顔や皮膚に特徴がある場合は具現型、と言われています。」

「お前は.....」

「内部欠損型、とでも言うのでしょうね。僕の場合、本体が何処かにあるような気がします。幾ら自分を傷つけても翌日には完全に直るんですよ。痛みは死ぬ程感じますが....これらも何らかの関連性があるような....あくまで推測にすぎませんが」

シェンドを見ると、傷が塞がり始めている。飛鳥は先程までシェンドを狂人として捉えていたが、考えが変わったように、シェンドの方に顔を向けて言った。

「なるほどな....悪かったよ。お前が同じじゃ無かったら今頃俺は断頭台の下にいただろうな。色々教えてくれてありがとう」

正直な気持ちを伝える。

「ふふ、ありがとうございます。飛鳥。これからどうします?僕、興奮が収まらないのですが...」

「内蔵出したままのお前とは何もしたくない」

飛鳥は視線を逸らす。

「また、嘘、ですか?」

「癖を見抜くとかお前…気持ち悪いてか服着ろよ」

「何とでも言って下さい」

二人は顔を見合わせ、笑った。



翠緑と蒼瀧は医務室で静かに過ごしていた。二人とも、先程のこともあってか、黙ったままだった。

「…シェンドのことだけど…」

蒼瀧が沈黙を破る。ベッドの横に腰掛け、うつむいたままだった。

翠緑は何かを知っているような顔で、大丈夫だよ、と言った。大丈夫、と言われてもシェンドは死んだのだ。何も大丈夫ではないと思う。

「でも…シェンドが」

「大丈夫だから、今日はもう、休もう?」

翠緑は静かに答えた。

「ただ、僕にとっては二人共大事な友達。もちろん蒼瀧も」

「…そうか」

「…例え相手が悪魔だとしてもそれは同じ」

「あっそ。…お休み」

蒼瀧は布団に潜る。さっきまでの翠緑を疑った自分を憎んだ。自分が勘違いをしていたのかもしれない。深く考えれば考える程自身が何をどうしたいのか分からない。

「蒼瀧、何か悩んでるんでしょ?最近来たばっかりなのに、物事が進みすぎたよね」

「なんで....」

「部屋に入って来た時の蒼瀧の顔、辛そうだったから」

蒼瀧は返す言葉が無かった。翠緑がここにいる理由は分からないが、ただ、分かるのは、優しさ。他人のことを気にする余裕がなかった俺とはまるで違う。此処に保護されるまでの空白の五年間が俺を

おかしくさせた。しかし、此処にいれば自分を変えることが出来るかもしれない。

「ありがとう」

過去編、終了させようとしたのですが...思った以上に設定が長すぎました。

次回あたりで五月雨さんでも登場させたいです。

閲覧ありがとうございました。

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