表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

夏だらだら日記

作者: かなぶん

 風鈴が微かに鳴いた。

 網戸越しに見る外の景色はいつもと変わりなく、今日が少しづつ始まろうとしていた。

 夏の陽は早く、空が白んできていた。

 優しい風と蒸し暑い空気が今に始まる。

 扇風機が回る頃、小学生の笑い声が聞こえた。

 タオルケットに身を包み、畳の上でごろついていると、その声が耳障りで仕方ない。ついで蝉が騒ぐものだから、余計に頭に来る。

 昨日朝方まで起きていたものだから、眠くて仕方ない。

 今日は仕事が休みだから、朝から何を急ぐことも無いのだが自分のペースを乱されると腹が立ってしまう。

 苛々しながら、扇風機をクーラーに変え、窓を閉めて涼しい空気を篭らせる。しかし逆に、寒くなりすぎてしまい足が冷える。

 押し入れから薄い布団を出した。ちょうど好い加減になり、ウトウトしだした9時半頃。

 選挙の声がマイクに乗って響いた。

「清き一票を宜しくお願いします」

 その声で完全に目を覚ました。文句を言いたいのだがそんな勇気もなく、誰か一人文句を言えば続けて発するのにと思いつつ、演説を見続ける。

 熱く語るオッサンと目が合い、何を勘違いされたのか手を振られてしまった。

 何故か自分も振りかえしてしまい、

「ありがとうございます」とお礼まで言われてしまった。

 恥ずかしさと空しさで部屋に戻る。眠りのピークを越えてしまったせいか、テンションがやけに高い。

 けれどすることがなく、部屋の中をウロウロとさ迷った揚げ句、ゲームをすることにした。

 何種類もあるソフトを並べて思った。

 ロールプレイング系とホラー系の二種類しかない。

 考えた結果、ロールプレイングのゲームをすることにした。

 きっとホラー系の場合、怖くなるとゲームの電源を切ってしまうのが分かっていたから。

 布団を頭から被り、テレビと向き合った。

 他人が見たら不気味な引きこもりと思うだろう。

 半目でテレビを見つめ、口がほげーっと開きっぱなしで喉がカラカラ。

 そんなこんなで12時過ぎ。

 12時になったからといって正確にお腹は空かない。口の中が淋しいだけで、冷蔵庫を漁る。

 飲み物もお茶しかなく、お菓子も何も無い。

 面倒臭いけれど生きるため、コンビニに走ることにした。

 コンビニに走るにしても色々準備をしなければならない。

 まずはシャワーを浴びる。顔を洗い、歯を磨き、頭を洗う。そしてぼーっとする。

 前からこのぼーっとする時間が要らない気がしていた。そんなことを、ぼーっとする時間に考える。

 そして服を着替えて、また少しぼーっとする。 それから家を出る。

 家から歩いて2、3分で着く距離にあるコンビニ。

 暑い。

 家を出たばかりなのに、もう帰りたい。

 暑すぎる。

 そして暑い。

 とにかく暑い。

 蝉の鳴き声も気になる。

 外に出るとなにもかもが気になる。

 何故夏はこれほど暑いのか、蝉の寿命は後何日か、人の視線、ぼーっとする時間など。

 それもコンビニに着いてしまえば気にならない。

 涼しい。

 エアコンが電気を消費して働いた結果が、コンビニ中に幸福をもたらしていた。

 汗が冷えるのがわかる。

 背中にかいた汗が渇いていくのがわかる。

 いつの間にか1時半になっていた。

 携帯にメールが届かなければ、もっと時間を消費していただろう。

 早く家に帰らないと。

 コンビニに来て、ついつい読んでしまった本。

 いわゆる立ち読みに時間を裂いてしまった。

 別に急ぐわけではないのだけど、さすがにお腹減ってきて苦しいです。

 カゴを手に取り、飲み物を両手に持ち悩む姿は、オバサンが野菜を買うときに似ている。

 コーヒー牛乳、レモンティー、キャラメルポップコーン、ポテトチップス、チョコレート、クリームパスタ、フライドチキン、杏仁豆腐、りんごヨーグルト。

「お願いします」

 そして店を出る。

 ビニール袋に詰め込まれたものを見て、自分がそれらを食べてるのを思い浮かべて、ついついニヤリ。

 暑い。

 暑いけどもう少し。

 家に着くと、軽く眩暈がした。年だな…。

 まだ二十代だけど…。

 テーブルを開き、パスタを食べる。

 自分の思っていた味と違う。

 ほうれん草だけのパスタかと思いきや、生臭いサーモンが入ってた。

 微妙だ。

 レモンティーで流し込む。テレビを付けて、見ることもなく。本を開き、食べカスを本に挟む。

 むしゃ、にちゃ、ねちゃ、くちゃ、ごきゅ、ごきゅゅ、3時のおやつの時間に残っているのは、ポテトチップスとコーヒー牛乳だけになった。

 満腹感は充分にある。

 けれども、勿体ないお金の使い方した気分。

 腹いっぱいでごろ寝していると、だんだん瞼が重くなってきた。

 失敗した。

 暗い部屋、デジタル時計は正直者だった。

 表示された時間に飛び上がる。

 寝てしまった。

 いや、寝過ぎてしまった。

 只今の時刻、夜中の2時を過ぎたところ。

 今日は仕事なのに。

 そして僕は今日も白んでいく空を見上げていた。

 ポテトチップスとコーヒー牛乳を頂きながら。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ